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寡黙なニコルと人間失格  作者: 或田いち
家出少女の失踪
30/65

探さないでくださいは探してくださいの訳

 

大概、物事の変転などに、前置きはない。


何てことのない朝だった。

いつも通りの朝だった。


―――そう、だからこの日も。




「、」


伊野は、濁った双眸に天井の木目を映し、

ムクリと起き上がる。

次に目にした時計の針は10時過ぎを指していて、あぁ、今日も無駄寝した、と腰を掻く。


その辺になり、寝ぼけた頭でも気付くことがある。

毎日、普段なら朝の9時頃ニコルが起きろといった意味合いで、伊野の頬を2、3叩いてくることがある。

最近になってその傾向は習慣化され、最早9時頃行われる儀式と言っても良かった。



ただ、それが今日はなかったのだ。



ふいに、押し入れに視線を移す。

空いた押し入れに、彼女の姿はなかった。

代わりに、布団を敷くためよけられたテーブルに、一つの紙切れだけ残して、


彼女はいなくなった。



「……マジでか」



人間失格、やや焦る瞬間であったりする。



▼.家出少女の失踪

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



《探さないで下さい》



可愛らしい字で、紙切れにはその一言だけあった。

こういった場合、やはり探すべきなんだろう、普通は、まず。


だが、当の人間失格は



「探さないでって言われたら探さないべきかな」



相も変わらず人間失格


《バカだ、お前は》


そして海外からの弁護士の叱咤


「やっぱり探すべき?」

《バカだ、お前は!!》


想像以上の怒声が受話器から耳を貫き、思わず反射的に顔を突き放してしまった。


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