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百ニャン一首 ―まこと継ぎし猫たち―  作者: くろのぼっち


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第一章 第八話:今日こそ天誅!

「おらおらー!そこー!道を開けろー!ぶち当たっても知らねぇーぞ!!」


「こーらー!待てぇーッ!今日こそは許さないんだからーっ!!」


毎度の閃花のいたずらで怒り心頭の燈は、

今日こそは“許すまじ”と全力で追いかける。

燈を嘲笑いながら、逃げる閃花。

その光景は、もはやほぼ毎朝の恒例行事である。

周りの登校中の生徒は、いつもの出来事に笑顔で声援を送っている。


「おォ、来た来た!」

「あいつらまたやってるよ~」

「はは!捕まんなよ~」ガヤガヤ……


校門をすり抜け、敷地内に入ると、閃花が駆け抜けようとする進路に、

ちょうど新入生らしき二人組”が、

“手を繋ぎながら”ゆっくりと歩いていた。


「おらーっ! どけーっ!!」


二人はその声に反応し、

背の高い方の女子は低い方の女子を庇うように抱きしめ、身を翻す。

閃花は声を張り上げつつギリギリでかわし、

何事もなかったかのように走り去っていった。

呆然としている二人に、後から走ってきた燈が心配しながら駆け寄る。


(あ~多分この子たち、新入生だよね……

怖がらせることして、悪いことしちゃったな~)


「ごめんねー! 大丈夫だった?」


燈は申し訳なさそうに二人の肩に手を当て、

閃花の迷惑行為をわびた。


「こんのーッ!危ないでしょうがーッ!!

絶対にお灸を据えてやるんだからーッ!!」


再び闘志に火がついた燈は、一目散に閃花の後を追い、

校内へ入って行った……。


――結局、閃花を捕まえることはできず、見失ってしまった燈。

朝からフラストレーションを溜め込みながら、

自身の教室へ行き扉を開けると、

同級生たちが次々に燈に朝のあいさつをしてくる。


「おはよ~燈!」

「おはぁ~」

「オハり~」

「……燈?」


燈は、クラスの人気者なので注目度は高い。

ただし、若干“ズレている”ことも……みんな知っている。

教室に入ってきた時点で、何か考え込みながらあいさつの返事がない。

その時点で、多くの友人が“察知”していた……。


燈は自分の座席に腰を下ろし一息つく……。

机の上に両肘を置き、手を組んで、不穏な気配を漂わせた。


(ふぅ……ふッふッふ!東雲閃花!

今頃、逃げ切れたと勝ち誇っているなぁ?

あまい!あまいわぁ!……勝負は一時限終了後の10分休憩。

この燈様が、あんたの行動パターンを知らないとでも思ったか!

あたしのスカートをめくるわ、新入生を危険な目に遭わせるわ……。


ん……でもあの二人……たしか手を繋いでなかったっけ?

何か……ちょっと気になるわね……。まッ、今はいいわ~!)


「今日こそ奴に天誅をッ!!!」


燈は興奮のあまりいきなり立ち上がり、

拳を突き上げながら無意識に叫んでしまい、

一気にクラスメイトから注目を浴びる。


「びっくりしたー!燈?だ、だいじょうぶ?」

「あ~ん、あかりんがご乱心だ~」

「や、やっぱり……」ガヤガヤ……。


燈は我に返り、恥ずかしがりながら静かに着席し、

心配するみんなに、両手を振って大丈夫アピールをする。


「あッ……あははは。な、何でもな~い!」


(あっちゃ~またやっちゃったよ~はずい。

おのれ~あれもこれもそれもどれも~全部、奴のせいだ!許すまじ!)


――「キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン」

一時限目終了のチャイムが鳴る。


「……で~あるからして~、ここの部分は……」


「先生!チャイム鳴ったんでトイレ行ってきま~す!」


燈は、まだ数学の先生が解説している途中だというのに、

いきなり教室から飛び出していった。


「こ!こら~神楽坂ッ~!まだ終わっとらんぞ~!」


周りの生徒は“いつものこと”だといった感じで、呆れている。


「あ~ぁ、いっちゃった~」

「あかりん、大丈夫かな~」

「ま~た余計なおせっかいでも焼いてんのか?」ザワザワ……。


燈は一心不乱に走っていた。

奴がこの時間、必ず向かう“あの場所”へ。


「さぁ~!覚悟しなさいよ~絶対にとっちめてやるんだから~!」


――その頃、閃花は……


「なぁ~おばちゃんよぅ~、まだかよ~休み時間終わっちまうって~」


「まぁ~たく!この子は!新学期そうそうこれかい。

まだ準備中なのわかるだろ?」


「なぁ~そこをなんとかぁ~、俺とあんたの仲だろぉ~」


「なぁ~に年増ぶった言い方してんだい!そういうのは十年早いんだよ!

こちとら新学期初で時間がかかってんだよ。来るなら次の休み時間にしな!」


「なぁなぁ~そういわずにさぁ~……」


「ちょ~ッと待ったぁ~!!」


息を荒げながら、燈が駆けつけた。

やはりここにいたかと、閃花に食ってかかる。


「やぁ~ッぱり“購買部”にいたわねぇ~!!東雲閃花!!

今朝の落とし前!つけてもらうんだからね!」


仁王立ちしながら、閃花を指さす燈。


「げげッ!な、何でわかったんだよ!

――いや待てよ……ってお前……実は自分も腹減って買いに来たんじゃねえのか?」


「んなわけあるかぁ~!!!ぜえぜえ……

ちゃんとあたしと、新入生のあの二人組に謝んなさいよね!」


「たくッ、スカートめくられたぐらい減るもんじゃねぇんだからいいじゃねぇかよ~。

んなもん!男どもからすればご褒美だろ、ご褒美!

それに新入生なんか知らねぇぞ、そんなのいたか?」


燈は今にも口から怒りのマグマが飛び出しそうな感情をぐっとこらえた。


(いけない!このままでは、いつもの奴のペースに飲み込まれるだけ!

何か別のパターンを考えないと!……そうだ!)


「東雲閃花!!!勝負よ!午後の部活オリエンテーションで、かるた勝負よ!

あたしが勝ったら、ちゃんと謝ること。

あんたが勝ったら、一週間分の購買部のメニュー、好きなの買ってあげるわ!

さぁ!どうすんの!まさか……受けないで“逃げる”とか?」


燈は閃花の性格を熟知していた。

勝負好きで、売られた勝負から逃げるという選択はありえない。

すると、今までお茶らけていた閃花の様子が一転、

顔つきが急に変わり、野生本能スキル『売られた勝負は買ってやる』が発動した。


「燈ぃ……その言葉ぁ~、二言はねぇだろうなぁ~?

お前が相手ならなおさらだぁ、手加減なしの、真剣勝負といこうじゃねぇかぁ~!!」


「もちろん!あんた、まだあたしに勝ったこと一度もないんだから、

軽~くひねって、格の違いを思い知らせてあげるんだから!」


予想通り、まんまと引っかかる閃花に対し、追い打ちをかけるべくさらに挑発する燈。

おそらくこの野生児に対し、これだけの啖呵を切れるのは、

学園中、いや、どこを探しても燈以外いないだろう。


「上等だぁーー!!!午後のオリエンテーション!決着つけるとしようぜッ!!!」


「逃げずにちゃんと来なさいよ~目にもの見せてあげるんだから!」


「ガハハハッ!!逃げる?誰に言ってんだぁ?負けても泣くんじゃねぇぞ?」


二人とも捨て台詞を吐き、それぞれの教室に戻って行く。


「……まったく、最近の子たちときたら、荒らすだけ荒らして行っちまったよ」


そうぼやきながら、おばちゃんは開店の準備を再開するのであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次回――「いざ!決戦!」


運命に導かれるがまま、競技かるた部へ――集結します。


毎週、火・金曜日の19時に投稿していきます。

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