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異世界召喚された直後に求婚されました  作者: 時継
第二部

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暗殺計画2

首尾よく自分と護衛兵を殺したらどうするつもりだったのだろうか。

護衛兵に王子殺しの罪をかぶせる形で体裁を整えるつもりだったのだとしたら、そのあと刺客はこの場所に居てはならないはずだ。


入り口を爆破して崩落させるまで刺客が潜み、さらには自分たちを始末した後に逃げるための横穴があることに、水晶の光で気づいた。

さらに掘り進めるための準備段階だったのか、もともとある自然の横穴なのか、自分には区別がつかなかったが、ここから逃げるつもりだったのなら、外へと繋がっているはずだ。


もし万が一、暗殺に失敗したら…?

いくらあの刺客が自分を殺すことに自信満々だったのだとしても、思いもよらぬトラブルが起きて失敗した場合のことも想定していたはずだ。

だとすると、さらに別の誰かが暗殺が成功したか確認にくることになっているのかもしれない。


体が自由に動きさえすれば、のこのこ様子を見にやってきた悪者を捕まえることもできるのだが、毒による痺れが広がって全く動けなくなるかもしれない。

そこへやって来られたら、今度こそあっけなく殺されてしまうだろう。

だったら、鉢合わせる前に早くここを立ち去らないといけない。


予備用ランタンのほのかな灯りを頼りに、おそらく自然の横穴だと思われる道を奥へ奥へと進んでいくと、前方から男二人と思われる話し声と足音が聞こえてきた。

まっすぐな一本道ではないため、こちらにはまだ気づいていないようだ。

慌ててランタンを消し、運よく見つけたくぼみへと身を隠した。


男たちのヒソヒソ声が次第に近づいてくる。

「おい、あの殺し屋、ちゃんと王子を仕留めただろうな?返り討ちにあって王子が待ち構えていたらどうすんだよ」

「大丈夫だろ、殺し屋のウルフっていやあ、業界では今一番きてるヤツらしいじゃねえか。オレたちは、王子の死亡を確認して、護衛の兵士か執事も一緒に死んでたらそいつが王子を殺したって思わせるような状況を作ってずらかればいいだけよ」


息をひそめて男たちが通り過ぎるのを待った。

そしてほどなくして、今度は男たちが戻ってきた。


もうヒソヒソ声ではなく焦ったような大声と足音で

「こいつ、首切られてもう死んでるじゃねえか!」

「話が違う。もう一人倒れていたのは王子じゃなくて兵士だろう?王子はどこ行きやがった?」

「そんなこたどうでもいい、早く逃げようや」

大騒ぎでわき目も降らず逃げて行った。


声と足音が聞こえなくなり、自分も男たちが逃げた方向へ行けば外に出られるはずだと確信して向かおうとしたところで、足が思うように動かずにその場へ崩れ落ちた。


毒がすでにエリオットの全身にまで回っていたのだった――。




********


鉱山で採掘作業に従事する鉱員はかなりハードな肉体労働だ。

自ら進んで就く者が少ないため、この仕事を囚人の労役にしている国もあるという。


大昔は魔石の宝庫として神の山のように崇められていたというこの水晶鉱山は、2か月前に本格稼働を再開するまでは、年に一度、新人騎士たちの研修を兼ねて採掘作業をさせ、壊れたり劣化して使えなくなった魔石の補充をするためだけに細々と使われていた。


転機が訪れたのは、海神が予言した救世主が登場し、第三王子とともにこの国へやってきたからだ。

その救世主が魔力の高い魔女であったこと、国王陛下が魔法擁護派であったとこにより、この300年間、魔法の一切が禁忌であったはずのローリンエッジ王国は再び魔法国家の方向に舵を変えつつある。


もちろん、それに対する反発も強いが、救世主である魔女がもたらす多くの祝福は長年この国に蔓延していた低迷、停滞していた陰鬱な雰囲気を吹き飛ばす爽快さと、たしかな効果があり、一般庶民から貴族に至るまで、第三王子と魔女の人気は青天井の急上昇といった勢いだ。


魔石がもっと必要になったので水晶鉱山の再稼働を、という議題が王宮の議会で持ち上がった時も一部の反対派の根回しに応じる者は皆無で、あっさりと可決された。

「この状況こそが危ういのだ」と魔法反対派は真っ赤な顔で悔しそうに主張し続けていたのだが…。


水晶鉱山の鉱員を募集したところ、賃金の相場よりも少し上乗せした条件だったことや、国境に近いことで隣国のルデルリー王国からも、夏の農作業が始まるまでの出稼ぎという形で応募があり、予想を上回る人数を確保できたらしい。


それでも再稼働からの1か月、採掘量は予想を大幅に下回る量にとどまり、王宮内では皆首をかしげていたのだが、新坑道を掘り進めているうちに見事鉱脈を発見し、そこからは採掘量がぐんぐん伸びてきた。


再稼働当初より、第三王子は重労働への労いとして鉱員たちへの定期的な差し入れを続けている。

国内屈指といわれてるフェルナンド公爵領で醸造された葡萄酒と、ヨナハン伯爵領で試作されている「エダマメ」という作物。

これが鉱員たちの間ではとても好評となっている。


これは余談だが、鉄のフライパンに塩を振ったさやのままのエダマメを入れて豪快に炒め、いい焦げ目がついたところで火からおろして蓋をしてしばらく蒸らせば完成、という、のちに王都の酒場で定番のおつまみとなる「焼きエダマメ」は、この水晶鉱山の鉱員が考案したものだ。



――ここまでが、鉱山視察前にセバスチャンが知っていた水晶鉱山に関する情報だった。


この日、初めて付き添いと事務補助として現場に来てみて、鉱員ひとりひとりに労働実態の聞き取り調査を行ったところ、第三王子に対する彼らの評価の高さには安堵したものの、腑に落ちない点がいくつかあった。


「残業手当がきちんと支払われていない気がする」

「稼働再開当初から水晶はたくさん採れている」

「倉庫の奥に、作業道具の箱に隠されるように水晶がたくさん保管されているのを見たことがある」


……何やら不正のニオイがプンプンしますね。

エリオットから少し離れて鉱員たちの話を聞くにつけ、不穏な印象が募ってきた。


メモをとり、たった今話を聞いた鉱員に礼を言って立ち上がり顔を上げると、エリオットはずいぶんと離れた位置にいた。

すぐ隣に護衛の兵士がいることを確認して少し安堵したものの、その後ろに立つ大臣と現場監督は不自然なほどにエリオットから距離をおいている。


違和感を感じながら眺めていたとき、爆発音が鳴ったと思ったら前方の坑道の天井が崩れ落ちた。

咄嗟に腕で顔をかばって、その衝撃と砂ぼこりをやりすごす。

視界が開けた後、もう一度前方を見るとエリオットの姿は見えなかった。


「おぼっちゃま!」

慌てて崩落現場に駆け寄ると、妙に冷静な大臣と現場監督がいた。


「おおなんと、崩落とは」

「これは一大事ですな」

「天井にヒビでも入っていたのかもしれません」

「それはいけませんな。殿下が心配です」


棒読みのようなやり取りが、自分たちがこの崩落を引き起こした首謀者であると饒舌に語っている。


「事故ではございませんよね?崩落の前に爆発音が聞こえたと思いますが?」

気色ばんでセバスチャンが抗議すると、

「使用人の分際で、ずいぶんと無礼な態度ですなあ」

と大臣がセバスチャンに向き直り、フンッと鼻を鳴らした。


「エリアス殿下は使用人の教育がなってらっしゃらないと見える。……不敬であるぞ!」


大臣のその言葉に反応して護衛兵が剣に手をかけた――。




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