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異世界召喚された直後に求婚されました  作者: 時継
第二部

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二大派閥

小休止を挟んで魔石への魔力注入を再開した。

確かに休憩前よりもフルチャージが速い。

結果、前回よりも多い数の魔石を、前回よりも短時間で注入を完了させることができた。


魔石の注入を急いでいたのは、海の向こうの国から国王陛下のもとへ嫁いでくるお姫様を迎えに行く国賓用の船を、漁船とは別に出航させなければならないという理由があった。

これまでの魔石注入のペースだと、今年はもう漁船の出航は見合わせることになる見込みだったようだけど、わたしの有り余る魔力のおかげで漁船も一緒に出航できそうだとのこと。

えっへん、頑張りました。


ちなみに、前回この魔石部屋でランドールに石を手渡していた、リーダー格と思われるよく日焼けしたおじさん ――彼が漁船の船長さんで、これまで魔石の管理をしつつ漁船にも乗っていたらしい。

でも、船長と言えば昨日の晩餐会で使われた猛毒のフグをミランダに提供したのが、まさに彼だったのだ。


そしてその船長さんはいま、牢屋に入れられている。

本人は「フグには毒があるから皮と内臓は使わないほうがいいと伝えた」と主張しているようだけど、ミランダとその料理人は「聞いてない。知らなかった」の一点張り。

こういった場合は、立場が弱い者が罪をかぶる形になってしまうのが世の常なわけで、船長さんが処分されることで幕引きとなりそうだ。


もちろん納得いかない気持ちでいるけれど、その一方で、毒婦と名高いミランダに毒持ちのフグを、そうと知りながらホイホイ渡すだなんてどういうつもりだったの?とも思う。

一体、誰が味方で誰が敵なのか…。



オルゴくんをはじめ、魔法職のみなさんに「また差し入れ持ってきますね」と挨拶を済ませて退室した。


エリオットは廊下を歩いている間も終始わたしが倒れるんじゃないかと気を揉んで顔を覗き込んできたり、手を握ったり、過保護ぶりが半端ない。

「その様子では心配で仕事にならんだろう」というランドールの配慮?で、今日はこのままエリオットも帰宅を許された。


「今夜はせいぜいエリアスにかわいがってもらえ」

と意味ありげな視線をランドールに向けられて、この人なにか勘違いしてないか?とは思ったけれど、エリオットと一緒に、しかも手をつないで帰宅できるのは素直に嬉しかった。



帰宅後、夕食までの時間にエリオットから王宮の人間関係、派閥争いについて改めて聞いた。

魔石の部屋へ向かう途中の廊下で、ランドールに「詳しいことはエリアスに聞け」って言われたやつね。


エリオットは5年間この国を離れていて、帰国して40日ほどだから勘違いしている部分もあるかもしれないと前置きしつつ、知っていることをかいつまんで教えてくれた。


「国王陛下と王弟殿下は、かつて王位継承権一位、二位を争った間柄で、兄弟でありながら若いころから仲が悪いんだ。いまこの国は、大きく分けると国王派と王弟派の二大派閥があって、国王陛下は革新的、王弟殿下は保守的で、お互いが何かと対立している」

エリオットの寝室で二人きり、それでもエリオットは声を潜めて話す。


ふむふむ、仲のいいランドールとエリオットとは大違いね。

セバスチャンが言っていた「政治的な思惑に巻き込まれないようにするためにフィリス様をないがしろにできない」という理由もうっすら見えてくる。

王弟陛下の娘であるフィリスを邪険に扱うと、それが政治的な火種に発展しかねないということだろう。


フィリスはそれに乗っかる形で、エリオットが自分のことを無碍に拒絶できないと知っていてベタベタしているのね。腹立つわ。


「そこにミランダ妃がどう関わってくるの?彼女は国王陛下の奥様なんだから、当然国王派なんでしょう?それなのに、わたしたちに毒を盛るってどういうこと?」


「彼女は、王弟殿下と通じているという噂があるんだ」

エリオットが言いにくそうに目を伏せながら教えてくれた。


ああ、やっぱりそういうことか。

「でもそれって…つまり陛下を裏切っているんでしょう?重罪じゃないの?」


「そこが彼女の上手いところでね。証拠はまず残さない。不貞を詰問されても動じないし認めない。あの目にいっぱい涙をためて無実を主張するらしい。ミランダ妃の母国との関係もあって、言い逃れできないほどの証拠とか悪いことをしている現場を押さえて断罪するしかないんだよ」


ミランダが王弟殿下側の人間であることはほぼ確定。

フィリスだってそうだとすると、フィリスは晩餐会の料理に毒が混入されることを知っていた?


なるほど、あの子は多分、大好きなエリオットを守るためにあの場にいたのね。

ミランダとサットンが退席している間に出る料理が毒入りであることも、そのフグの毒は時間差で症状が出るから、事前の毒見にひっかからない可能性が高いってことも、フィリスは知っていたのかもしれない。


食事前にわたしとエリオットがギクシャクするようなことをして、わたしが拗ねて孤立する。

サットンが退室したらあとはもう、食べるしかない。

自ずと、毒入りの料理を最初に口にするのがわたしになる。

わたしが食べたら、そこで何か…トラブルを起こすか、何か理由をつけて自分たちは毒料理をスルーすればいいわけだ。


でもフグの毒は時間差がある。

出された料理に手を付けないままどう回避するつもりだったんだろう?


ああ、あのときここまでわかっていれば、わざとあのフグの煮込み料理に手を付けずにフィリスに先に食べるよう促して、どんな反応をするか見たかった!

焦りすぎて失敗したわ。


不本意だけれど、フィリスがそばにいるうちはエリオットは安全てわけよね。

だったらそのまま泳がせておいてエリオットのボディーガードになっていただこうじゃないの。

その間にわたしは、救世主の祝福を、魔女の魔力を惜しみなく国内隅々に振りまきながら派手に目立って、それを良しとしない悪者たちをあぶりだしてやるわ。


わたしたちの板挟みになるエリオットにとってはビミョーかもしれないけど、エリオットの身の安全が保障されているなら安心だもの。


「モテる男はツライわね」

にっこり笑って言うと、エリオットはポカーンとしてしばし沈黙した後

「………え、いまの話からどうしてそうなった?」

と、訳が分からない様子でつぶやいていた。




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