〈2〉
支度をしてくると言って部屋に戻った真野を待つこと10数分、お待たせ、と彼女は戻ってきた。
「あれ…?」
真野は、黒いセーラー服を着て、長い三つ編みを左右に垂らし、赤茶色の四角いフレームの眼鏡をかけていた。
「ほら、自覚を持てって言われたから、変装してみた」
尋ねると、中等部の頃の制服らしい。因みに今真野は16歳。一番合格難易度の高い明陽高校の1年生。フードさんは有名女子中の2年で14歳。ジャージさんは真野さんと同じ高校の3年生だそう。
「休日は、闘技場とその周辺地域以外の戦闘は禁止されてるから、今日はのんびりできるよ」
それはよかった。一安心だ。というか休日さえも戦っている人達がいるとは、恐ろしい。
「あれ、休日も制服なの?」
「ああ、基本的に家の外は学園で認められている服装の着用が義務付けられてるんだけど…」
うーむと唸る真野。
「さとしのそれ、部活の服装って言い張れなくもないし、何枚か作っとく?」
「お願いしますうう!」
さとしの自宅のタンスの中には所狭しと作務衣が並んでいる。部屋着用やお出かけ用など用途に応じて使い分けていたのだが、一応これは部屋着用。外に来て歩くのは少し気恥ずかしい。
「じゃあ、役所の後は洋服屋さんだね〜」
のんびりとした調子でそう言うと、真野は機嫌よく歩き出した。
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煉瓦造りの大きな建物の前に辿り着いた。
真ん中に円形の屋根の建物、その周りを囲むように別の棟がある様だ。
「はい。ここが役所。各種手続きや相談が受けられるから、困ったときはここに来るといいよ」
そう言い、真野はずかずかと進む。
窓口につくと何やら話し、また廊下を進んでいく。少し歩くと立ち止まり、さとしを振り返った。頭上を見上げると『住民課』とのプレートが。
どうやら目的地のようだ。
「とりあえず、私に話を合わせとけばいいから」
「ん、それってどういう…」
にこりと笑い、真野は区切られたブースの一つに向かう。さとしはやや緊張しながら、それに続いた。