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陶芸部の日常  作者: もち
三大義務
31/33

〈14〉



「戦闘部隊は一番隊から十番隊までかつてはあったんだがな、今は一から六番までだ。各部隊の特徴を言ってくからよーく頭に詰めてけよ」


「は、はい!」


そうは言ったものの自信がなかった僕は、病室に備え付けてあったメモ帳とペンを手にとる。


外出禁止令の出ている玄龍さんは、これも仕事のうちだと言い、僕に主に外の世界について教えてくれることになった。


その際フードさんは学園都市に帰ることになった。どうやら彼女が呼ばれたのは真野の安否確認だけだったようで、学園の治安維持のためにも、黒腕章の者が理由もなしに場を離れることはよく思われないらしい。

尤も、やむを得ない理由なしに内部の者が外に出るのは禁止されているのだが…。



「玄龍さん。僕は、戻らなくてもいいのですか…?」


「あ?俺が良いって言やー良いんだよ。気にすんな」


ボリボリと頭をかきながら答える玄龍さんは、何やら訳あり顔だ。


僕は日本人らしく空気を読んで、居住まいを正したあと話しの先を促す。



「隊の説明からだったな。まず一番隊。基準値以上の力を有するものが属している。これが戦闘の主戦力になる。カミを前にしても恐れずに接近戦に持ち込めるような奴らが集まる隊だ。」


僕の頭に先日の戦闘の映像が過る。同時に目の前の男への畏怖の感情がうっすらと起こった。



「二番隊は後方支援だ。弓や銃器なんかを扱う部隊で、状況に応じて武器調達に走り回ったりしてるな。三番隊は別名偵察部隊。逃げ足の早い奴らで、普段は見回りや、異変を感じた際の、その名の通り偵察に向かう隊。そのサポートをするのが四番隊。別名先遣隊。三番隊の見回りに同行し、敵との接触を一番に引き受ける。腕の立つものも多いが、一番命の危険がある隊でもある。五番隊は工作隊だ。敵に応じてトラップを仕掛けたり、有効な攻撃方法を見つけ出すスペシャリスト。六番隊は、まあ、簡単に言やあ新人だな。卒業生や特化した力のないものは大体ここだ。無難に立ちまわる奴らだ。」



ふむふむ、頷きながら手元にメモしていく。僕が入るのならば六番隊だろうな。



「次に、その他の必須部隊だ。救護部隊はその名の通り、救護活動が主だが、中には一番隊でもなんらおかしくない奴もいるからな。歯向かわないように。」



どこか遠い目をした玄龍さんは、手元の水を飲み干した。


「情報部隊は通信機器を扱ったり、戦況の確認なんかを引き受けてくれてる。転移部隊はその名のとおりだな。この二つの隊は一人の隊長が兼任して率いてくれている。」



「そ、そんなことが可能なんですか!」



「ほら、お前もこっち来るときに声だけ聞いただろう、ウーフってやつなんだが。」


「あ、あの方が…」



あののんびりした声を思い出す。失礼だが、そんな有能な印象は受けなかったのだが。人は声によらないんだな。



「最後に司令部。大まかな活動指針を示し、全部隊を纏め、的確に指示を出す能力を求められる。現司令官はギルバートと言う名の男だ。その他副司令官、参謀、財務、など各種担当の仕事をこなしてる。…とまあ、こんなもんだな。」



「ありがとうございます。これって、教育の一環で習うものなんですか?」



「いや…。本来なら、端から頭に入ってるもんなんだ。まあ、お前は特別製なんだろうな。」


苦笑いを浮かべる玄龍さん。僕にはまだまだ知らないことがたくさんあるようだ。


ふと、窓から外を覗くと、気分が重くなるような分厚い雲が目に入った。

そういえば、この間は暗い色の霧が出ていた。


そんな僕の視線に気づいたのか、玄龍さんは口を開いた。



「きったねえだろ。俺達は生まれてこの方、青い空なんて拝んだことねえんだ。外に一つだけある教会の、天井一面に貼られた青空の写真が唯一の俺らの空だ。」



「そんな…」



思わず、後の言葉を継げなかった。

最近見た荒廃した近未来を描いた映画だって、晴れた日には主人公たちは青空を見上げ元気をもらっていた。それに、



「僕達の食べているものは、太陽なしに育つんですか?それに、日がささないのに過ごしやすい温度だ。これはいったい…?」



「詳しいことはもうあまり残されていないが、先人たちの科学戦争によって、青い空は失われ、幸か不幸か、その発達した技術によって人が生きていけるぎりぎりの世界は残った…つうのが今の定説だな。」


一瞬僕の方を見て逡巡した後、彼は続ける。


「下に研究棟があったろ。そこで遺伝子操作された食物や家畜が、またもや先人の技術によって繁殖されているんだ。俺達が食べてるのはそれだ。ま、外では出来る限り人の手のみで作る努力はしてるがな。」



僕は、次々と知らされる世界の常識に、ぽかんと口を開けるしかできない。


そんな僕の顔を見てマヌケ面だな、とひとしきり笑った玄龍さんは、すくっと立ち上がると僕に笑いかけた。



「お前にはまだ話したいことがあるんだ。飯でも食いながら話そうぜ」



そんな誘いに乗って、僕は病院の食堂へと歩みを進めた。



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