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陶芸部の日常  作者: もち
三大義務
28/33

〈11〉


本日二回目の投稿です。



僕の日課に再び素振りと陶芸フォーム練が加わった頃。



ー…真野がいなくなった。



水曜日に学校に行ったきり、フードさんですら顔を見ていないようだ。

今日は金曜日、妹にさえ何も告げずにいなくなるなんて、真野らしくない。



「今日も訓練でるんですか?」

「うん。流石に上位者を見かけたら尻尾巻いて逃げますけどね。」


気にしていない風の世間話を繰り出してはいるが、その瞳は不安そうに揺れている。



「…真野、どこ行ったんだろうね」

「知りませんよそんなの。食べ終わったんならさっさと食器持ってきてください。」


お皿洗い当番のフードさんに促され食器を持ち立ち上がった時、彼女の腕章が騒々しい音を響かせた。



「…ちっ、田中さん。通話ボタン押してください」


洗剤で泡だらけの手を見せそう言う彼女に従い、ボタンを押す。


『ー……お、繋がっ…か?ふー…?』

「どちら様ですか?」


電波が悪いのか途切れ途切れの声が聞こえる。どこかで最近聞いたような声だ。


『ま…が………て、迎えが……う…』


「いや、聞こえないから。ん、…もしもし?」


切れました。そう言うと彼女は不機嫌丸出しで僕を睨んだ。いや、とんだとばっちり…。


「ウーフさんとこに確認しに行きます。良ければついてきてもらえますか?」


「いいですけど。僕、行っても平気なんですか?その、足手まといになるかも」


「…無害そうで雑用をこなせる貴重な人材ですよ」


聞くと、女が上にいることが気に食わない者や、その功績に嫉妬する者、武器を狙う者など、学園都市内にも常に気を配らなければならない相手は多いらしい。…それは、強くなればなる程に。


そんな訳で休みの連絡を入れた僕は、フードさんと共に情報部隊隊長、ウーフさんとやらに会いに行くことになった。




━━━━━━━━━━━━━━━━━




進めば進むほど、奴の気配を色濃く感じる。

それは本当に嫌な気配だ。ねっとりとまとわり付くようなその気持ちの悪い感触に、真野は思わすゾクリと震えた。



なんとなく、これが罠だということは分かっていた。

そもそも腐っても神の類である。一人間にその不調を知らせるようなことはないだろう。

しかし、だ。もし罠ではないのならば、これは絶好の機会である。奴を倒せれば、奴を、倒せれば……。


小さな姿に変えられた友人の姿が頭に浮かぶ。そして彼女と結んだ、ひとつの約束。



「負けられないよね」



口にはいつもの笑みを浮かべ、彼女はふわりと跳ねる。その数瞬後には、彼女がいた場所に無数のムカデが湧きだした。



「きっもちわるいなあ、もう」



魔法のポケットに忍ばせておいた手榴弾を十数個その群れの中に投げると、轟音の後、そこには何もいなくなった。



地に降り立った途端、前方からはごろんごろんと黒い丸い生き物が坂を利用して転がり落ちてくる。


剣を構えたものの、思い直しそれを足蹴にし先へ進む。降りた坂を登れないのか、その生き物…ダンゴムシは潤んだ瞳で見つめてきた。手榴弾を二十は投げておいた。



その後も虫の襲撃は凄まじい。自分の十倍はあるゴキブリを見たときは、鳥肌が立ちすぎて戻らなくなってしまうのではないか、と不安に思ったくらいだ。



そして、いつしか目的地である鬱蒼とした森の中に辿り着いていた。


寄ってきた蜂を両手で捉えると、蚊か何かのようにその息の根を止める。

その作業を繰り返すうちに、悪寒が背を這った。



「やあ、よく来たねえ。遠路はるばるようこそ、僕の城へ」



声の方を見ると、奴はいた。



黄金色の髪に、同色の昆虫のものと同等な、異質な光を放つ瞳。

彼こそが昆虫王子と呼ばれる神だ。


人のように見えるその何も纏わない上半身からは、胸の下の位置から数十本のの昆虫の脚が生え、不気味に蠢いている。


本来人の足があるべき場所にも同様の昆虫の脚が生えているのだが、内の一つはひょろひょろと頼りなく、とても彼の体重を支えられるようには見えない。



「ふふふ、滑稽だろう。僕の脚、こんなになっちゃったよ。うまく治らないんだ。再生しないんだよ。僕、かみさまなのに。ねえ、ねえ、責任とってよ。その為に君を呼んだんだよ。」



にこにこと淀みなく話し続ける昆虫王子に、真野は、冷静に攻撃の機会を狙う。なおも彼は続ける。



「知ってるだろ?僕は美しい僕の姿しか見たくないんだ。その為には、恥を忍んでヒトを食べるしかないんだ。わかってくれるよね?」



慈愛に満ちた表情で微笑む王子に真野は、首を傾げる。



「さっぱりわからないんだけど。私はあんたを倒すよ、絶対」



言い放つ真野に、王子は笑みを濃くする。



「望むところだ。人の子よ。」





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