8話桜、またサク桜。
もうそろそろ桜も綺麗に咲く季節になりますよね。
僕たちが、それぞれの家に着いたのは、夜の7時ごろだった。
今日は楽しかったな。
そう僕は、貧民街にある自分の家で鍵を開けている時に思った。
みんなと、願うならば一緒のクラスになりたい。
そう考えながらリビングに足を入れると、
ぐぅー、はぁー、ぐぅー、はぁー、
おじさんは、テレビをつけっぱなしにして
仰向けにお腹をむしゃむしゃと手でかきながら寝ていた。
まったく、おじさんは。
飲んだ缶もお皿も片付けてないじゃんか…。
7時に寝ているということは、また昼から酒を飲んでいたのだろう。
僕は、おじさんの後片付けをしつつ、テレビをきって、
おじさんのお腹が冷えないように毛布をかぶせた。
自室に戻って、自分の財布の残高を確認する。
はぁーっとため息をつく。
朝は1万円あったのに、今では1700円か…。
ん?なんでこんなところ1000円入ってるんだろう?
僕は、少し考えたがラッキーということで躊躇なく残高に加算する。
2700円もあれば、あと3日新聞配達する必要はないだろう。
なんせ、あと3日で新しい学園生活が始まるのだから。
僕の入学する学園は、学費は全て無料で、全寮制であり、学園側が生徒に毎月一定額を支給し生徒はその金を頼りに生活していく仕組みだ。
また、外部からのつながりは全てたたれている。
例えでいうと、この国が戦争におちいっても、
この学園は、神の意思によって生徒を育成する機関なので、学園の敷地内には、あらゆる攻撃を防ぐ結界が張られる。そして、学園内部に関係者以外はいかなるものも入ることができない結界も張られている。
また、通信系や連絡系の能力を持つ生徒が学園の外に連絡しようとしても通信妨害という結界が常備張られているので妨害されるという仕組みになっている。
噂では学園内で毎年死亡者が出るとか…。
僕は、今日着ていた服を丁寧に脱いでたたみ、汚れないよう綺麗な袋の中にしまった。
僕は瀬奈と撮った写真を見て、瀬奈の笑った時の顔や
手を繋いだ時の感触を思い出す。
この心がどきん、どきんと大きくはね、身体が次第に熱くなっていく。
これが、人を好きになるということなのだろうか。
そう僕は、はやる気持ちをなんとか落ち着かせ、
目を閉じた。
それから3日が経ち、
「こけこっこー!春馬起きろー!
今日は、入学式だぞ!」
あれ?僕って家族ににわとりがいたっけ?
そう重い目を手で擦りながら声のした方向に目をやる。
「あぁ、おじさん。おはよう。
うん?まだ6時じゃないか。」
僕は自分の部屋にある時計を見ておじさんにいう。
「バカかお前は!
今は9時だぞ!入学式は9時30分からじゃないのか?」
「え?今9時なの?」
「おん」
「っっっやばいぇ!!!!!!!!」
僕は飛び跳ねるように布団から出て完全に目を覚ます。
今日は7時に起きてゆっくりしたくしていくつもりだったのに!
急げ春馬、走れ春馬!
僕は豪速で身支度をして、昨日準備した荷物を持って
学校に向かう。もちろん朝ごはんを食べている暇などない。
「じゃあいってきます!」
「おう!」
僕は、今までにない速さで学校へと向かう。
あと5分、
運が悪いことに今日は道が人で混んでいて走りづらい。
あと4分、
やばい、このままじゃ遅刻しちゃう。
同刻、9時26分ー
「あれー?春馬いないんだけど。
どこかで見かけたか悟?」
「淳も見てないのか。俺も探しているんだかな。
もう、入学式が始まるっていうのに何しているんだ?」
「俺、トイレに春馬いるかもしれないし、確認してくるわ。」
「それじゃ淳、入学式に遅れて入ることになるぞ?」
「大丈夫だって。2分あればいけるって!
じゃ行ってくるわ!あとそこの席キープよろ!」
はぁーっと悟はため息をつく。
春馬はいったい今どこにいるんだ?
あと2分、
やばいやばいやばいやばい!
このままじゃ間に合わない!何か手はないのか?
僕は走りながら思案する。
…………!あ!
あと1分、
どこにもいないな、春。
秋良は、周囲に目をやるがそれらしき姿が見えない。
まさか、あいつ寝坊してるんじゃ?
いやでも春が遅刻してきた日なんてあんまないしな。
しかも今日に限ってはないだろ。
きっとどこかにいると考え、結論づける秋良であった。
キーン、キーン、キーン。
「これから入学式を行います。
全員着席してください。」
タイムリミットが来た。
全員、実技試験が終わったっきにもらった紙で指定されていた席につきこの学園の学園長の話を聞く。
「桜が満開に咲き、あたりは、人でにぎわうようになりました。
新入生の皆様、入学おめでとうございます。。
試験の結果を見て君達がこれから過ごす、クラスをこちらで決めさせてもらいました。
例年に比べ、君達の点数は平均10点くらい高く、
私もうれしいです。
君達にはとても期待しています。
これからの3年間、大変なことがいっぱいありますが
ぜひ頑張って、そして学園生活を楽しんでください。
以上をもってお祝いの言葉とさせていただきます。」
パチパチパチパチー。
「学園長、ありがとうございました。
皆さんもう一度盛大な拍手を。」
パチパチパチパチパチパチ!
「それでは、この学園について、私の方から少し説明させていただきます。まずーーーー」
瀬奈は春馬をキョロキョロと目で探す。
入学式も終わり、結局春馬を見つけられなかったので瀬奈は落胆する。すると、トントン、と後ろから肩を叩かれたので確認してみるとー
「春馬!いないかと思ってほんとに心配したんだよ?もうっ」
「ごめんごめん、寝坊しちゃって。」
「寝坊って、フフフ。ほんとに春馬はお子様だね。」
「違うから」
「違くないよ」
「違うって」
そう話していると、僕の肩を誰かに叩かれ、
後ろを振り返ると、
「おーい、春、いつのまにか女の子と仲良くなっていたの?」
秋良だった。
「ま、まぁいろいろあってね。
この子は安土瀬奈、優しい人だよ。」
「ふぅ〜ん?」
秋良は瀬奈を品定めするようにみる。
「な、なんですか?」
瀬奈が少し怖がっていう。
「いやぁ、なんでもないよ。
瀬奈って言ったっけ。
春を傷つけるようなことをしたら許さないからな?」
秋良は、真面目な眼差しで瀬奈を見つめる。
「傷つけるわけないじゃないですか!
もう春馬とは、その、友達〝以上〟ですから!」
僕は瀬奈が友達に加え〝以上〟といってもらい、
赤面してしまう。
それを見た秋良は、
「なるほどな、いい友達を持ったな、春。」
「うん、実は、他にも友達ができたんだ。
秋良に紹介したいんだけどー」
「おい!春馬!ギリギリにきやがって!
心配したんだぞ俺たち!」
僕はその声のする方を向くと、
そこには、淳含む4人がいた。
「ごめんごめん。そう秋良!
この人たちだよ新しい友達は」
そう僕は秋良に伝えた時、秋良は露骨に不機嫌な顔になり、
「なぜお前がここにいる?」
「誰のことかな?」
そう悟くんが秋良に向かっていうと、
「お前だよ柚。」
「ええ私?」
柚さんは知らん顔をして秋良を見る。
僕は、なぜ柚さんに秋良が敵意をむきだしにしているのかわからなかった。
「秋良、どうしたの?秋良らしくないよ」
「…まぁいい。あぁすまん春、なんでもないよ。
じゃあ俺はクラス発表見にいくからじゃーな。」
「なんだったんだよあいつ!」
淳くんがあいつといってるのは秋良のことだろう。
「ごめんね、今日秋良不機嫌だったみたい。」
「…ああ、春馬の友達ならいいやつなんだろうが、
あそこまで訳もなく敵意をむき出しにされたら、なぁ?」
「そ、そうだね。僕の方からちゃんと叱っとくよ、ハハハ」
「ガツンとだぞ!」
「う、うん。」
せっかく6人3日ぶりに集まったのに
雰囲気が悪くなってしまった。
でも秋良があれだけ敵意をむき出しにしているところを見たことがなかった。10年くらい一緒にいてだ。
しかも、秋良は僕とクラス発表を一緒に見ようと誘ってくれようとしていたのだろう。
いったい柚さんと何があったのだろうか。
今度聞いてみるか…。
「とりあいずクラス発表みに行こっか」
そう、ギシギシした空気を断ち切ってくれたのは
悟くんだった。
「お、おう…!そうだな!」
「私も早く見たい!」
淳くんと亜美さんの2コンボで場の雰囲気が
一気に明るくなる。
「じゃあ行こっか。」
やっぱ悟くんは頼りになるなと、僕は思った。
掲示板に貼られたクラス発表の紙を見て、僕は嬉しくとも悲しくともなる。
僕の友達のクラスはこんな感じ、
秋良ーSクラス
悟くん、柚さんーAクラス
淳くん、瀬奈ーBクラス
亜美さんーCクラス
AからCは、特に差の出ないように同じぐらいの点数の人が均等にばらけている。
秋良くんがSクラスなのは、さすがとしかいえないだろう。
ついでに、僕と戦ったカルミア様もSクラスだそうだ。
そして僕は自分でもはしゃいでしまったが、Sクラスであった。悲しいのは、友達になったみんなとバラバラになってしまったこと。
そして、瀬奈と違うクラスだったことだ。
クラス発表の紙を見ているであろう、瀬奈の様子を見てみると、とても落胆していて、今にも泣きそうになっていた。他のみんなも同様に肩を落としている。
「みんな、バラバラになっちゃったね…」
「う、うん俺は柚と一緒だったし、淳と瀬奈も一緒だったみたいだけど…春馬と亜美は、」
「うんうん、仕方ないよ!
きっとクラスが違くてもみんなで前みたいに集まったりできるし…。…ぐすん、ぐすん、うえーーーーん」
亜美が堪えれなかった涙を流してしまった。
それも一気に。
僕は、亜美さんを慰めたいと思い、
頭を撫でる。
すると、亜美さんが、僕の肩に涙を擦り付けてきた。
亜美さんのみんなと一緒のクラスが良かったという、
温かい気持ちが涙となって、僕に渡り、伝わる。
それを見ていた、淳くんも泣き出してしまい、それを悟くんが慰め、
瀬奈は、柚さんと二人で抱き合っていた。
場はどうしようもなく、哀愁に包まれてしまった。
「泣いてても仕方ないよね、ごめん春馬くん。
前を向かなくちゃぁね。ぐすん」
「ううん、平気だよ。僕も悲しい。
まだなきたらはないなら、今度は僕のぬれていない右肩に埋まってていいよ。」
そういい、亜美さんの頭を撫でていると、
瀬奈が顔を膨らませて、僕をみる。
怒らせちゃったかな。
でも、今。今だけは、誰よりも悲しんでいる亜美さんを慰めていたい。
数分が経ち、みんなも涙を流しきったのか、
前向きに、スッキリとした気持ちでいた。
「みんなと離れちゃったけど、
俺たちは友達なんだ!心でずっとずっと繋がってる!」
「くすくす、でも、バカのくせに少しはいいこと言うじゃない。私もそう思う。ね、春馬?」
とさきほどまで泣いていた亜美が僕の右腕を掴んで言う。
亜美さん、む、胸が当たってますよ!
…それでも、下心を忘れるくらい、
泣き止んで、明るくなった亜美さんの笑顔は、
桜に劣らないほど美しかった。
「そうだね、僕もそう思う。」
「とりあいず、一回自分のクラスの教室に集まれと先生もいってたし、いこっか?」
「おう!」
ー春は出会いの季節でもあり、別れの季節でもある。
それでも、僕たちはクラスは違えど別れない。
既に心で手を繋ぎあるように繋がっているのだからー
春の爽やかな風に舞う桜のように美しく、
僕たちは出会った。
そして桜が散るように僕達は、これから過ごす教室へと向かった。
桜が散ってもなお木の根は友情という温かい水分を取り込んで、次の桜を咲かせる準備をする。
書いていて少し悲しくなりますが、
大丈夫。
彼らはもう切っても切れない、心で繋がっているのだから。