9話勇者
早く瀬奈の話書きたい。
僕は入学式2分前、能力を使えば間に合うと思った。
そして、その考えが功を制し無事遅刻せずにすんだわけだ。あまり能力なれしていないので、その考えに至るまでにかなり時間をかけてしまった。
僕は、Sクラスの教室へと、足を運ぶと、
そこには既に僕以外の生徒がいた。
僕が教室に入った時、一人からは手を振られ、一人は本を読むのに夢中であり、
1人からは先ほどの秋良を超えるほどの敵視を送られて、他多数には、ただ誰か来たという感覚で見られた。
この学園は、席が固定ではなく、自由であり
どこにでも座れるが、あいにくと僕が来るのは遅かったので、座れる席は先ほどの敵視を送られた人物の隣しかなかった。
最初は、秋良の隣に座りたがったが男子、女子共に人気が高く既に近くの席は埋まっていた。
「やぁ、久しぶりだね。
まさかお前と同じクラスとは私も運がないようだな。」
この人、いや方はカルミラ様。
僕が実技試験の時に対峙した相手だ。
どうやら試験が終わってから、嫌われてしまったのだろう。
「えぇ、実技試験の時はすみませんでした、カルミア様。身体の方は大丈夫ですか?」
「お前というやつは…!どこまでも私を侮辱する気か!」
カルミア様が僕に向かって大きく叫び、場の注目を一気に浴びた。
そんな時に、
「よぉ〜、お前ら!あとそこの坊主!
今日から俺、ロビンフ•ヨルムンガルド•ワンが
Sクラスの担任になるぜぇ。
よろしくなぁ!」
またあの人かぁ、と僕は驚く。
試験官として会い、銭湯で会い、今、先生として会った。もう運命を感じるレベルであっている。
僕は、この人についてあまり知らないので
何か知っていそうなカルミア様に聞く。
「あの、あの先生ってすごい人なんですか?」
それを聞いたカルミアは激昂していた感情が呆れへと変わり、次期にわかるといったように顎で周囲を見ろと促した。
その直後、周囲がざわめきだし、そして秋良もどうやら驚いている。
「知ってるやつぁ知ってるかもしれんが、
この国のヨルムンガルド騎士団の初代団長だ。
今は違うが、な、ハハハァ!」
え?あのヨルムンガルド騎士団の、しかも初代団長?!
情報量の浅い僕でも騎士団のことはわかる。
なぜなら、ヨルムンガルド騎士団は、この王国の誕生と深く関わっているからだ。
もともと、200年前、今王国が所有するこの土地には
カースレット帝国の土地であった。
しかし、帝国の王、グリフォンが、国民に非常に重い税金を払わせ、王に逆らったら死刑という今では考えられない法を作っていた。
そんな王を神は野放しにするはずもなく、最初はただ監視しているだけだったが死刑者や餓死者が増えたことで、神は勇気ある10人の人間に、強力な能力を与えた。
そして強力な能力を得た10の人間は、ヨルムンガルド騎士団という革命軍を作り、王に反逆した。
そして、10人という少ない人数で10万人いた兵を全て降伏させるか、あるいは蹴散らし無事革命軍は一人の死亡者を出すこともなく王の首をはねたという。
そして王の圧政から解放された国民は彼らを英雄と称え、10の騎士に美しい最高神と名乗る女神から、それぞれ愛称である二つ名をつけてもらい
帝国は滅び、新たにアマテラス王国が誕生した。
10人の騎士の中で一番強いものが王となり、9人は
王を支える貴族となった。
そして、彼らはヨルムンガルド騎士団をこの国の騎士の中でも最優の10人しか入ることの許されない最高機関として、新たに設立された。
その初代ってことはとんでもない人なんじゃ?
そう僕は冷や汗をかき、一つの疑問が生まれた。
なぜ今も200年前の人が生きているのだろうか。
どうやらみんながざわざわしているのはなぜ生きているのかと思ったからであろう。
すると、誰かの声に反応するようにロビンフ先生はニヤリと笑い、
「なぜ200年前のやつが生きているかって?
はっ!それは簡単な話だぜぇ?
俺が持っている、不老不死神之加護という
能力のおかげさぁ!」
「先生、その能力は神と同等レベルじゃあないですか!」
一人の淳くんに似た人が先生にいう。
「おうよ!最初、ヴィーナス様って言う最高神から
能力を授かった時は不死之王だったんだけどな?俺に〝勇者〟っていう二つ名をつけてもらった時に能力が進化したんだよ!」
この先生、ヴィーナス様と会っているんだ!
しかも2回も。
僕は、少し先生に嫉妬しながらも2回会えるかもしれないという期待に胸を躍らせた。
「能力が進化とは、興味深いな。」
僕の隣でカルミアがつぶやく。
「とりあいず、自己紹介は以上にするぜ!
何か聞きたいことがあるなら後で個別に聞いてやるよ!
じゃ、お前ら。今から闘技場に行くから支度しろ!」
そう言われ、僕は、男子更衣室に秋良と行く。
「にしても、〝勇者〟様が先生とか、
この学園レベル高いなぁ、」
「そうだね。」
秋良は、子供の時からヨルムンガルド騎士団に入って
困った人を助けたいといつも言っていた。
そんな秋良が、ヨルムンガルド騎士団の人、しかも
初代団長が先生となって舞い上がるのも納得だ。
そう考えながら、秋良と男子更衣室で着替える。
着替えている途中に、
「春馬くんもSクラスだったのか。
どうやらとんでもない能力を隠していたんだね。」
有賀くんもどうやらというか、やはりSクラスみたいだったようだ。
「僕は運が良かっただけだよ。」
「運だけでSクラスに入れるとか、それもまたとんでもなくすごいことだね。」
そういい、有賀くんの本体とも呼べるいかにも高そうな宝石が付けられている眼鏡を外す。
眼鏡を外した有賀くんは、かけていた時とは雰囲気がまるで違っていた。
真面目そうなのは変わらないが、
話かけにくそうな雰囲気から、余計話かけにくそうな雰囲気へと変わった。
…あれこれってダメじゃん。
そうくだらないことを思っていると、
「なんだ春、知り合いか?」
8つほど割れた腹筋を出しながら秋良はいう。
「うん、試験の時に少し話をした人だよ」
「おう、俺は光千寺秋良。これからよろしくな。」
「ええ、僕は有賀進之介です。」
秋良と有賀くん、きっと仲良くやってくれるだろうとお互いの様子を見て僕は思った。
運動着に着替えた僕達は、闘技場へ向かい合う。
どうやら前回僕が行った闘技場とは違う闘技場のようだ。
前回行った闘技場はドーム型だったが、今日はオムライス型の闘技場のようだ。
「お前らぁ集まったか!
今からこのクラスの中で実力の順位をつけていくぜ!
ライバル意識がクラス内であった方が
更なる高みへのぼれるぜ!」
と、先生が声高らかに言う。
「ちょっとうるさくて耳が痛いな」
秋良が先生に向かって苦情を言う。
すると先生はニヤリと笑い、
「よっし!最初は、俺と光千寺が戦う!
先生も戦いたくてウズウズしてんだ!」
なんか声のトーンが異常に高く、終始うるさい人だなと思っていたが………。
「「この先生、戦闘狂だ…。」」
Sクラスの全ての生徒が、そう確信した。
「ルールは実技試験の時と同じだ!
じゃあお前らは、そこらへんにある観客席に座ってろ!
じゃあ行くぞ光千寺!」
「はい」
そう、秋良が返事をした瞬間、瞬きをしたら瞬間移動だと感じてしまうくらいの恐るべき速度で先生は秋良の懐に入る。だが、〝天才〟と呼ばれる秋良は両手で先生の放った重い拳を受け止める。能力を使わずにだ。このプレーに生徒は、立ち上がって秋良を称賛した。
これには、有賀くんも驚いたみたいで、
「能力を使わず、今のを止めるのか。
さすがだね、秋良くん。」
と興味深げに言う。
そして拳を受け止めたあと、秋良は一つ目の能力を使う。
「いくよ先生?衝撃反転!!」
先生は、わずか少し後ろに衝撃によりこうたいした。
そう、秋良の一つ目の能力は、衝撃調整である。
対象から自分に対して受けた衝撃の強さ弱めたり、相手に反射して返る衝撃を異常に強くしたりする能力だ。
対象というのは、衝撃を自分に与えるもの全てを指す。
今までの秋良の行動は、僕や有賀、他の生徒も能力を使ってないように見えていたようだが、カルミアだけが
秋良のマジックの種を見破る。
なかなか器用なやつだなとカルミアは感心する。
そして笑った。
あの先生に対して、あえて与える衝撃を手加減した。
完全に挑発行為を光千寺とやらはしていると。
「ははぁっ!今のでKOにならないあたり、さすがSクラスの生徒ってことか!
次は少し強めに行くぜぇ!」
そういい、先生は先ほどよりはやい目に追えない速度で秋良の懐に入ろうとしたが、その前に
秋良の二つ目の能力が発動する。
我が呼び声に答えよマグナムート!
その大いなる必殺の魔弾で全ての生命に終焉を与えよ!
終焉!!!
そう秋良がいうと、空高くに術式が構築され100発の魔弾が生成され先生に放たれる。
そして魔弾は百発百中であり、放たれたが最後。
…だが、先生は、その攻撃にあえて受けるかのように両手を高らかにひろげ、あえなく全ての魔弾に身体中を突き通された。
秋良が先生に勝った…!
この光景に、全ての生徒が秋良に対して歓声を上げ喜ぶ。
先生の穴だらけの残酷な身体に衝撃を受けるよりも、
みんなは、アキラの高らかに右手をあげ勝利の拳を上げるのに興奮していた。
そしてみんなは忘れていた。
先生は、不死であると言うことを。
「いやぁー、お帰り俺!
今の魔弾はいい味したぜぇ!
それじゃあ延長戦と行こうか!ハハハぁ!」
みんなは驚く。だが、秋良は驚かない。
「さすがは初代団長ですね!」
そう言う秋良は僕から見ると、とても楽しそうだった。
俺にはもう一つ、誰にも知られていない能力を持っている!ヴィーナス様を除いて。
それは、ヴィーナス様に会う以前に生まれた時から持っていた吸収という能力だ。
吸収は、相手から受けた攻撃に込められた、聖力や、魔力、体力を吸い尽くし、自分の力の糧にすることだ。
この能力と不死の相性がとても良く、俺と戦った敵達によく言われたのが〝化物〟(ばけもの)だ。
倒されれば倒されるほど強くなって蘇る。
そんな相手と戦うなんてどんな気分なんだろうな、ハハハ!
先生が先ほどの攻撃とは比べ物にならない
一撃を送ろうとした時、
ープンプルプンプルプンプルププププーンー
先生は、秋良に当てようとしたを地面に向かって打った。
その威力は凄まじく、かなり大きなクレーターができたようだ。
「引き分けだなぁ!楽しかったぜ光千寺!
また今度戦おうぜ!」
「「戦闘狂、こわ…」」
みんながそう思うのであった。
「次は…有賀とカルミア!出てこい!
カルミア様を侮辱していると一定数不満に思ったのだろう。
口がぷんぷんしているぞ?
僕は、どちらに軍配が上がるのか楽しみだった。
そして秋良が僕がいる観戦席まで戻ってきた。
「はぁー!楽しかった!」
秋良は伸びをしながらいう。
「秋良はあの二人、どっちが勝つと思う?」
そう僕が聞くと、秋良が少し考えるように、
「うーん、カルミアじゃないのか?」
様をつけろ様を!と言った視線を3個くらい感じる。
カルミア様は2つ、有賀くんは1つ。
シンプルに考えたら、カルミア様の方が有利だ。
だが、頭は有賀くんの方が回るので、どちらが勝つのか予想ができない。
この試合は面白くなりそうだ。
「お久しぶりですカルミア様、」
「久しぶりね、進之介。あなたもこの学園に来ると聞いた時は結構嬉しかったわ。
今日は手加減なしで戦いましょう。」
「望むところです。」
彼ー有賀進之介は、貴族である。
200年前、10人のうちの一人、
〝創造王〟と呼ばれた騎士の血筋をひく者である。
能力は、かの騎士の能力を引き継いでいる。
対するはカルミア。
200年前、10人のうちの一人、
〝理想王〟と呼ばれた男の騎士の血筋と、
〝灼熱王〟と呼ばれた女の騎士の血筋をひく者である。
能力は、かの女の騎士の能力を引き継いでいる。
そんな二人が今ここで熱い戦いを繰り広げる。
ロビンフは、彼らが200年前の仲間の子孫なのは
知っていたので、どこか懐かしむような、
嬉しいような感覚だ。
ー200年前のあいつらはもういないー
やはりその現実は変わらない。
不死であるがためのロビンフが持つ苦しみであった。
愛した人さえ俺を置いていなくなった。
でも、俺には、今生まれ、育つ子供たちを
正しい方向に導く使命をヴィーナス様から受けたのかもしれない。
そんなことを考え出したのが100年前か。
だが、今この瞬間、〝あいつら〟はいる。
そう錯覚せざるをえない。
いや、錯覚させてもらおう!
そして、戦いのコングが鳴った。




