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外伝 神竜教徒の一日 中編【ベリア市民安全の会 会員 ジェイド・ドローレスの場合】

「そしてその朝、私はラゴゥの背中に跨り大砂漠を越えて、この町へと戻ってきていました。”海王の城”によって降り注いだ雨の多くが砂の奥深くへと染み込んでいくところで、その光景を目の当たりにしながらも、その時の私はまだ知りもしなかったのです。六年に一度、恵みをもたらすその雨雲は、実はシヴァナ様がお連れ下さっていたのだと・・・・・。」


 導師マハム・ヴァリアーラの説法を聞くにつれ、信者達の目が輝いてくる。

 自分達は今、楽園へと近づきつつあるのだと。その喜びを噛み締めながら耳を傾けている。

 たとえ今、この場で言っていることの意味が良く分からなくても良い。

 常に導師さまが仰るように、信仰を深めればおのずと知れてくるハズだからだ。

 だから今は、聞くだけでも良い。

 聞いているだけで、自分は今、人生最高の福徳を積んでいるのだから。


 そうして、導師マハムによる説法が終了した後、今度は信者達による近況報告が行われる。

 神竜教徒であることにより現状自分が如何に幸福か、を語り伝えるのである。

 あるいは、誰か知人への布教に尽くして成功させました、とかそんなことでもいい。

 とにかく、”神竜教徒であること”に関係した色々な報告ごとがここで行われるワケである。

 その日最初に報告に立った女性は、ごく一般的な市民のひとりであったが、サンディゴナ国内を行き来するとある輸送業者に勤める夫が先日から社内のより重要な役割を任されるようになった、つまりは昇進したという話をした。

 おぉー、とたちまち拍手喝采になる。

「竜のご加護があったお陰です」。そう言って女性は笑顔で頭を下げ、その場に座る。そう・・・・・・・・彼らにとってはソレが重要なのだ。


 また、次に立ち上がった別の女性は、既に結婚もしていて一児の母であったが、まだ四歳にも満たない息子が教えていないにも拘らず、自分や夫の真似をして祈りの言葉を唱え竜像に手を合わせるようになったと、喜色満面といった顔で報告した。

 そしてその報告には、先程よりも若干強めの拍手が贈られた。

 拍手する信者達が、口々に惜しげの無い賞賛の言葉をかける。

 竜像の前に座っていた導師マハムも、その子供は将来有望であると告げた。

 教祖からも褒め称えられ、その女性は実に嬉しそうな表情で、周囲に礼をしながら座った。

 ところがその次の報告はというと、彼らには少々面白くないものであった。

 報告者は、その時間帯の参加者としては少数であった男性信者の一人であった。


「グラインのことなのですが、彼が最近どうも・・・・・・・。」


 信者達の表情が一転して、険しくなる。

 彼の報告によると、ある一人の男性信者がここ数ヶ月、布教活動へ参加するよう誘ってみても応じず、さらにはこの集会へもあまり参加しなくなったのだという。

 彼が尋ねていってみても、素っ気ない返事しか返ってこないそうだ。

 このまま活動をやめてしまうのではないか、と報告をした男性は心配そうに言う。

 その場に集まった信者たちがザワザワヒソヒソと勝手な呟き合いはじめる中、導師マハムが、良くとおるその声で再び言葉を発した。


「シヴァナの教えを離れてはいけない。」


 偉大なる竜王に導かれてのみ、人は海の彼方の楽園へと辿り着くことができる。

 その道を知っているのはオーディヴァングだけであり、それを唯一知る我々は世界の真理に従っているのだ、と。

 故にその教えを離れて真の幸福を得られる道理などある筈も無く、またソレを邪魔しようとする悪魔の手先も決して許してはならないのだ、と。

 導師マハムによる力説を受けた信者達の目は、文字通り輝いていた。

 ”恍惚としている”という表現も当てはまるかも知れない。

 ある意味物凄く純粋な目。小さな子供のように一転の曇りも無い無垢な目。

 そこにおそらく、『疑い』の二文字は無い。



* * * * * *



 竜王が再臨される三年後を目標に全員一丸となっていこう、という御金言を結びとし、とりあえずその日の集会は終了した。

 まぁ実際のところ、結びは毎回同じような言葉なのだが。

 信者達が満足でさえあれば問題も無いのだろう。

 説法が終わり、集まっていた小部屋を出て、寺院の正面玄関へと廊下を歩く信者達。

 彼らは進みながら口々に、その日の喜びを語り合っている。

 ある者は相変わらず素晴らしいお言葉だった、とか、またある者は実に心が洗われるようだった、とか。

 しかし果たして、この中の何人が本当に内容を理解できているのだろうか。

 客観的には確かめようも無かった。正しく神のみぞ知る、と言ったところである。


 玄関口で靴を履く信者達の中に、商人のジェイド・ドローレスもいた。

 彼は一足先に靴を履き終え、一緒に来た友人達を待ちながら、すぐ後ろにいた顔見知りのローラ・ラングバルトに話しかけていた。


「いやぁ・・・・・・・今日の御説法も実に素晴らしかったですなぁ。」

「ホントに・・・・・。ここに来ると、日頃の悩みが馬鹿らしくなってしまいますわ。」

「私も、いつもいつも、心が洗われるようです。また一歩楽園に近づいた気がします。」

「あらぁ、でもドローレスさんは心配ないんじゃ御座いません?」

「いえいえ、そんな・・・・・・・・・・・。」

「ドローレスさんは誰より竜の魂を実践していらっしゃるから・・・・。是非私も、竜の子の一人として見習わせていただきませんと。」

「いえいえ、そんな・・・・・・当然のことをしているだけですよ。」

「またまた、ご謙遜なさって・・・・・・・・・。」


 『竜の魂の実践』。それはすなわち、シヴァナの教えに従って生きることである。

 ジェイド・ドローレスは人一倍、信仰心の厚い人物として知られていた。

 つまりローラが言ったように、日頃から竜の魂を実践して生きている。

 またひと口に『竜の魂の実践』と言っても色々ある。

 たとえば日常生活で、とことん神竜教の教義に忠実に生活することも。

 このヴァンガディロ大寺院で開かれる集会に毎日参加することも。

 信仰を自分だけのものとせず、友人知人に真理を説き布教活動をすることも。

 またあるいは、教団にとっての邪魔者を排除することも。



* * * * * *



 ジェイド・ドローレスにはベリアの商人という顔のほかに、もうひとつ別の顔があった。

 『ベリア市民安全の会』の会員である。

 これは市民有志によって結成された、文字通りベリア市内の安全と秩序を守るための自治組織で、市民の中でも特に小さな子供を持つ母親などが参加している。

 この組織は二週に一度ほど集会を開いてはその時の議題を話し合い、また日常生活の合間を縫っては市街の防犯パトロールなどをも自主的に行っている。

 そうすることで市内の安全性を極力保ち、キレイな町づくりをしようとしている。

 現にこの組織が結成されてから十数年、市内での軽犯罪、及び暴力事件などはかつてよりも減少の傾向にあった。

 なにせ”子供たちのため”なのだから、会員達、特に母親らが努力を惜しむことは無かった。


 その日の午後も、会議が開かれていた。

 何名かの代表者によって行われるこの会議で、今現在市内で対処すべき問題を審議し、そこから市民にどういったことを呼びかけるか、などを決定していくわけである。

 その日の参加者は全部で11名。内、男8名、女3名。

 その中にもちろん、ジェイドも含まれている。

 どうやら今まで話し合っていた議題についての処置が決定したらしく、長方形のテーブルの、一番奥の席に座っていた議長の男性が議決終了を確認する。


「・・・・・・ぇー、では三番港で先日起きた火災の現場については倒壊の危険ありということで、近隣住民、及び保護者等の指導により子供を立ち入らせないようにする、ということで決定でよろしいですね?」

「結構です。」

「もちろん、異論ありませんわ。」


 と、こんな具合で各々が了承の意を示し、ひとつの議題は終了する。

 ジェイドも軽く返事をして頷いている。

 そして会議は、その日最後の議題へと移ろうとしていた。

 それは一週間前に港近くの宿場街で起こった乱闘騒ぎについてであった。

 白昼堂々、市街地のど真ん中で男数名が暴力沙汰を起こし、その結果、事件を引き起こしたとされる二名のチンピラ男が逮捕されたのである。

 ところが調べてみると、どうやら乱闘はその二人が酔っ払ってケンカした、とかではなく、彼らが近所の民宿から連れ出した一人の男に叩きのめされた、ということらしかった。


 そこで今度はその男が誰なのか、ということを地元の保安署員が聞き込みで調べてみるのだが、ソレが何故か一向に判明しない。

 保安官が目撃者に聞き込みをすると、ある者は太った中年の男だと言い、またある者はメガネをかけた中肉中背のひげ面男だと言う。

 現場には多数の野次馬がいたため誰かが目撃しているはずなのだが、何故だか証言が人によってまちまちで一貫した人物像が浮かんでこない。

 まるで、意図的に隠そうとしているかのようでもあった。

 一方、その男によって叩きのめされ、揃って小一時間気絶したままだったチンピラ二名は、目が覚めて保安署で事情聴取を受けた際、まったく同じ男の名前を口にしたのだった。


「レベリウスという男に決まっている!」


 ジェイドは身を乗り出して主張した。

 アレストス・レベリウス。数年前からベリア近郊で活動し始めた謎の猟竜師で、たった一人で20ミルト近い土竜を何匹を仕留めるなど、その素晴らしい戦歴は名前とともに多くの市民に知られている。近年まれに見る手練であったが、乱闘事件の前後から行方が分からなくなっていたのだ。

 逮捕された二名の証言や、事件の前後で行方不明になっている事実を踏まえれば、確かに彼が乱闘騒ぎのもう一人の関係者と考えざるを得なかった。

 また何より、逮捕されたチンピラたちが乱闘前に訪れていた民宿というのが、アレストス・レベリウスが普段利用しているとされる店だったのである。


「しかしねぇ、ジェイド・・・・・・」


 ちょっと年配の男性会員が、彼の二つ左の席から困ったような表情で発言する。


「乱闘騒ぎを起こしたのが彼だとは、目撃者の誰からも聞かれないんだよ。」

「既に逮捕された二人が、ハッキリ証言してるじゃないか!」

「彼らの発言はどうもねぇ・・・・・・・・。大体その二人、話を聞いたが、押し入った民宿で他の客に絡んだり、経営者の老人に暴行したりしたそうじゃないか。レベリウスじゃなくたって、ちょっと力のある人間ならそんな連中を放っておけないと思うがね。」

「暴力沙汰を容認するというワケですか。」


 男性会員に、ジェイドが食ってかかる。


「我々の活動目的は市民の安全を第一に考えることですぞ・・・・それをなんです? 町の治安を脅かすような人間に、同情の余地があるというんですか、え?」

「・・・・・・・・・何を言ってるんですか、ジェイドさん。”大事なのは寛容と認め合い”って、いつも言ってるのはあなたじゃないですか。」


 別の会員からの指摘に、ジェイドはムッとした顔で反論する。


「今回の場合はワケが違うでしょう・・・・・・・・・・・・・・白昼堂々ですぞ? これを容認すれば我々の活動は有名無実になるが、それでよろしいので?」

「そんなことを言えば、昔からそうですぞ?」


 また別の会員が発言する。


「確かにまっ昼間、公衆の面前で乱闘を演じたことは問題でしょう・・・・・・・だが宿場街での乱闘そのものなら、昔から数え切れないぐらい起こっとります。それを、レベリウス氏が当事者かもしれないというだけでここまで大事にしたがるというのは、失礼ながら、ジェイド氏の真意が図りかねますな。」


 そう言われてしまって、流石のジェイドもちょっと黙り込んだ。

 その会員が更に追い討ちをかける。


「少々私見を交えることをお許し願いたいが、日頃のジェイド氏の発言には、正直なところ主体性が見られぬように思われます。宗教から得た哲学を行動規範にすること自体は別に悪いとも思いませんが、ソレが特定個人の排斥に結びつくならば、我々としても苦言を呈さねばなりませんな。私個人としても、オーディヴァングを仕留めようなどという目的が正気の沙汰とは思えませんが、だからといって彼の起こした問題のみ大げさに取り扱う必要もないハズ。我々は神竜教ではないのですから、たとえ彼の行動がその教義に抵触しているのだとしても、彼のときだけ名指しで非難する必要性は、少なくとも我々には無い、と私は考えますな。」


 そこまで言い切ると、彼は静かにジェイドを見た。ジェイドは明らかに旗色が悪くなっている。

 彼は歯を食いしばりながら、なんとか言葉を搾り出そうとした。


「が・・・・・・害悪なんだ、あの男は町にとっての危険に違いないんだ!」

「・・・・・・・・町にとっての?”神竜教にとっての”の間違いじゃないんですか?」

「な・・・・・・・・・」


 その言葉を聞いた途端、ジェイドはガタッと音を立てて立ち上がった。

 彼は、自分の真向かいに座っていた会員に指を突きつけワナワナと叫んだ。


「さ・・・・・・・差別だ! それは神竜教徒への・・・・・・・・・・・!」


 指差された会員がキョトンとし、それから自分の真隣に座っていた別の会員と思わず目を見合わせた。

 そのとき、まだ立ったまま震えていたジェイドから一番離れたところに座っていた中年の女性会員が、ひとり立ち上がって口を開いた。


「ちょっと皆様にお聞きしたいのですけど、例のヴォーンツの件はご存知ですか?」

「・・・・・・ヴォーンツ?レベリウス氏が同伴してた、あの青い大型動物ですか。」

「そのヴォーンツが例の事件があったその日、町中に侵入してきたというのは、皆様お聞き及びのことだと思いますが・・・・・・・・。」


 その場にいた全員が、あ、という表情になる。

 そう・・・・・・・・・・・彼らはその理由を知る由もなかったが、あの日、主人・アレストスの危機を察した雄ヴォーンツ・ディアゴは、預けられていた郊外の牧場から抜け出し、ベリア市内のアレストスの下へと向かっていったのである。

 幸いきちんと躾けられていたため、町の設備に被害をもたらすことは無かったのだが。

 アレストスの飼育するヴォーンツが町に入り込んだ、というソレは、確かに紛れも無い事実であった。


「あんな大型動物を町中に入れたらどのような被害が予想されるか、みなさまお分かりですよね? これまでは郊外の牧場に預けているということで、あえて問題視することはありませんでしたが・・・・。」

「しかし、一戸の家屋にも公共設備にも、被害は出ていない・・・・・・・・・・・」

「結果論に過ぎません。」


 その会員のおば様は、有無を言わせぬ口調だった。

 擁護論を展開しようとした年配会員が、そのことで口を閉ざす。

 確かに、結果的にはどこにも被害を与えなかったとはいえ、もしかすると被害が出ていたかもしれないというのも、可能性の上では否定できない。

 だがそれでも、また別の会員が別の反論を試みようとする。


「だが、今まではちゃんと管理されていたんだろう? たまたま一度、町に入ってきたぐらいで・・・・・・。」

「その”一度”が問題なのです。ああいった大型動物を飼育する以上、管理の不行き届きはほんの僅かでも看過されるべきではないのです。ではもしアレが市民の誰かに怪我をさせたりなどしたら、責任を誰がお取りになるのです?今まで管理されていたかどうかは問題ではありません・・・・・今管理されているかどうかが問題なのです。」


 そう言われてしまって、その会員も押し黙る。

 いつの間にかジェイドが持ち出した”レベリウス排斥論争”は、まったく別の観点から旗色を逆転させつつあった。


「よろしいですか、皆さん。」


 女性会員が続ける。


「我々の行動目的は、あくまでも”市内の秩序と安全を守る”ことです・・・・・・・。ですからその妨げとなり得るのであれば、たとえその人物に同情しがちな過去があったのだとしても、決してその行動は特別視されるべきではないのです。もし、その人物の排除が町の安全に繋がるというのであれば、迷わず実行しようではありませんか。提案者の思想が何であるとか、そんなことは問題ではないのです。今問題なのは、その人物が町を危険に晒しているという、ただその一点のみです。」


 その女性はそこまで言って、ぐるりと周囲を見渡した。

 この上ないほどの正論であった。誰も反論できる者はいなかった。



* * * * * *



 ”今後、市内中心部から半径5キロミルト以内へ所有するヴォーンツを侵入させていないと証明できない限り、猟竜師アレストス・レベリウスからの土竜の引き取りは全て拒否するよう、市内各所の問屋に通達する。”


 それが、その日の会議で決定されたことだった。

 どうやって証明すればいいのかは全く不明だが、とにかく証明しろということらしい。

 少々無茶な要求とも言えるが、決定してしまった以上はどうしようもない。


 ちなみにこの呼びかけに、法的拘束力は一切無い。

 そもそも『ベリア市民安全の会』は市民有志によるボランティア団体のようなものであるため、当然ながらそんな拘束力を発揮できる権限は有していないのだ。

 にも拘らず、彼らの方針を無視することは難しかった。

 何故ならば彼らがあくまでも”市民の安全のため”に活動している団体であるため、また実際に活動を行う一般会員の多くが子を持つ母親らであったため、自分達の方針が町や子供にとっての最善策なのだと思い込んだ彼らによって、”非協力的市民”に対する水面下の『不買運動』などが行われる場合があったのだ。

 現に『安全の会』が示した安全基準に従わなかったがために、突然客足が途絶え、その結果廃業に追い込まれた商店も少なからず存在した。


 現在ではこういった過剰な行動が認知されるようになり、彼らの行動を”思い上がり”、”自己陶酔の偽善行為”として批判する市民も少なからず現れていた。

 だがそれでも、彼らが”抗議行動”を自重するようなことは決してなかった。

 何故ならば、そういった”抗議活動”の一切は会議に参加する代表者たちが直接的に指示しているわけでもなく、それを”子供のため”と思い込んだ母親会員たちが、会長らの判断も仰がずに勝手に実行していることだったからだ。

 いやそれどころか、自重するよう会長自身から苦言を呈されてもなお継続してさえいたのだ。

 彼らの存在は、ベリア市内における事実上の権力と化していたのである。

 行政は何らかの策を講じようとしているものの、なまじっか実績がある上に、下手に介入すると感情論で逆バッシングされかねないため、難航している。



* * * * * *



「パトアさん、ご助力を感謝します。」


 ジェイドは会議が終わった後、集会所の隅で自分の窮地を救ってくれた中年の女性に深々と頭を下げ、礼を言っていた。

 それに対しその女性の方は、なんでもないといった風な顔をしている。


「いえいえ・・・・・・・・・・私も以前から、レベリウス氏への処置は少々甘いと思っていましたの。いくら同情を呼びやすい過去があるからといって・・・・。この辺で一度身の程を知ってもらう必要がおありですのよ、あの方には。」

「いずれ貴方に、竜のご加護が訪れることでしょう。」

「あらあら・・・・・・・・・では、期待して待っていますわ。」


 パトアと呼ばれた女会員は、そう言ってジェイドに微笑みかけるとその場を去っていった。

 ジェイドは内心ほくそ笑んでいた。

 竜の敵め、思い知ったか。シヴァナ様に背くからこうなるのだ!・・・・・と。

 そしてパトアという味方を与えてくれた竜王へと感謝の念をささげた。

 窮地に応援を得られたこの事こそ、正に竜のご加護だと。

 その日の晩はいつもよりも長くお祈りを捧げようと、ジェイドは堅く心に誓った。

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