ヒロイン登場!?
フカフカであったかい。こんなに安心して寝たのは異世界に来て初なのではないのだろうか。
昨日、しっかりと洗濯したので服も清潔で気持ちいい。異臭もしないしね。
「おはよー」
「おにぃさん、おはようございます~」
ミルーは起きてて朝食の準備してくれてる。寝すぎたわ。
「ごめん、寝坊した。なんか手伝うことある?」
「もう少しで朝食の準備できますから、顔を洗ってまっててください~」
ミルーさんしっかりものだから、俺の大人の威厳がなくなってる気がするわ。しっかりしないと。
顔を洗って気合を入れる。
「ミルー、この犬のこと知ってる?」
「この魔の森には、金色の神獣フェンリルがいるって聞いたことあります。もしかしたら…」
金 色 の 神 獣 フ ェ ン リ ル
いや柴犬やんけ、フェンリルって狼とかじゃないのかよ。
「あっでもでも、フェンリルに出会ったら魔の森の外に出してもらえるって言い伝えがあります」
「悪い奴には見えないもんなー、俺達も外に連れてってもらえるのかなー?」
「わんっ!」
連れってくれるってことかな?わからん、犬だしね。
朝食を終えて出発の準備を終えたら、フェンリル(笑)が棒を手に持ったミルーを背に乗せて立ち上がった。
え?俺は?
頭から咥えられた。
すんごい勢いで走ってるのはわかる。あと息くさい。
綺麗にした服がもうベトベトやんけ。
「―――」
あれ、なんか悲鳴みたいなの聞こえなかった?
吐き出される俺。ミルーを乗せて走り去る犬。大勢に囲まれる俺。どうなってるのこれ。
俺がベトベトになってるってのはわかる、いやそんなことはどうでもいいんだが。
お、お、落ち着いて冷静に状況を確認するんだ。
前方に刃物や杖を向けてくる強面のオジサマ達、その数20人くらいだろうか?
後方には馬車があって、その馬車を守るように、冒険者風の女性やローブ着た少女が武器をこちらに向けている。
10人ぐらい血流しながら倒れてるけど死んでるんじゃないだろうか?
そして何故か手元にある棒。なるほどわからん。逃げてもいいだろうか?
「貴様は盗賊の仲間か!」
「いいえ違いますっ!サー」
女冒険者の人めっちゃ怖いんだけど。思わずサーつけっちゃったよサー。
まぁ今ので大体状況判断できたな。前にいる強面のオジサン達が盗賊で後ろの馬車が襲われているか。
そしてテンプレ通り協力して、カッコよく盗賊達を退治するのだろう。
呪いの棒には(人は殺さず無力化してくれ)と頼んでおいた。
そして、俺は両方から襲われた。