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第〇話 この世界に祈りを
神が嫌いだった。絶対的な力を持っているくせに誰のことも救わないから。
人間が嫌いだった。貪欲で無知で非力だから。
自分のことも嫌いだった。
神の産物のようなこの世界のことが好きだったのは、それがあまりにも美しかったからだと思う。
母が死んだ日に泣きながら見た夕焼けも、己の宿命を知った夜に浮かんでいた月も。
いつか貰った宝物も、仲間の笑い声も。
憎いほどに愛おしかった。世界を愛するほどに、神を呪った。
誰のことも救わないのなら、せめて誰のことも傷つけないでください。
幸せなんて与えなくても自分で勝手に掴み取るから、どうか奪わないでください。
いつも祈りを捧げている少女を思い出す。敬虔な女神の信徒。あの子の非力さもずっと嫌いだった。
でも、あの子は誰よりも優しくて真っ直ぐで、美しかった。
さようなら。自分は世界中から存分に嫌われていなくなるとしよう。
そして、祈ろう。
残酷な神にではなく、愛するこの世界に。




