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3.クラスメートを手助けしましょう

早くも日間ローファンタジーランキング17位!

ありがとうございます!

 さてさて………決意を新たにしたのは良いのですが、何をするべきでしょうか。

 食品に関しては、今はまだ問題ないでしょう。今持ってる缶詰等で三日分はありますし、無くなればスーパーマーケットにでも向かえば良いのです。

 この危機的状況で、危険を冒して食料を買いに行こうとする人など少数派の筈ですから、数日は焦る必要がありません。

 まあ最も、本当に食べる物が無くなった時は、お金も払わず順番も守らずの争奪戦になると思いますが、その時はその時です。対処法はいくらでもあります。


 では、あのモンスター達の戦闘力の調査と、このような事態になった原因の究明、ひいては情報収集でしょうか。しかし、基本的には一般的な女子高生と変わらない私が、このような国家、もしくは世界規模の天変地異をどうこう出来るとも思えません。

 モンスターに関しても、焦って私では到底勝てないような存在に出会ってしまえば、その時点で私はあの世行きでしょう。


「となると………一度、実家に戻るべきでしょうか?」


 こうなった今、この事態が解決するか、文明が滅ぶか、人間あるいは全生物が絶滅するかの三択でしょう。

 しかし私とて、このような若々しい時に三途の川を渡るなど真っ平御免なので、やはり安全を確保したいところです。

 あのマンションも悪くは無いのですが、やはり逃げ場が無いという点を踏まえると不安が残ります。

 その点、私の実家は、恐らく世界でも十指に入る安全なところですので、まさにうってつけです。

 難点を一つ挙げるならば、ここから車を用いても四時間以上かかってしまうことでしょうか。


「戻る方法がありませんね。となるとやはり、この付近で安全な場所を探して、情報を………」


「キャアアアアア!!」


 思案に耽っていると、遠くから声が聞こえてきました。

 声というか、悲鳴ですね。女性、それもかなり若い。私と同い年くらいの少女の声です。


 ふむ、取り敢えず行ってみましょう。



 ※※※



 声のした方向に走ると、私と同じ高校の制服を着た少女が倒れていました。状況からして、何かに躓いて転んだのでしょう。

 そして彼女のすぐ近くには、先程、私が仕留めた、ゴブリンが五匹ほどいて、彼女を囲んでいました。


「た、たす………たすけ………」

「ギイイイイ!」

「グギャギャギャ!」


 彼女を助けるメリットは正直薄いですが………私は善人では無いとはいえ、目の前に助けを求める人がいて、助ける力もあるのに無視するほど、人でなしでもないつもりです。

 ここはやはり助けましょう。


「グギャアアアア!」

「千影流〝流体術〟『崩落滝(ほうらくだき)』」


 完全に私のことなど見えていなかったゴブリンを、かかと落としに近い技で潰します。


「グゲェッ!?」

「ギイイイイ!」


 すると、私を驚異と認識したのか、四匹同時に襲いかかってきましたが、


「流体」


 私はあえて全て受けました。威力を確かめたかったからです。

 ………ふむ、やはり痛くも痒くもない。まあ、普通の人ならば何度も叩きつければ殴り殺せるかもしれません。

 ですが、『軟体と脱力』を基礎とし極意とする流体術の使い手である私には、一切通用しません。全て自分の体で受け流しました。


「千影流『破田水車(はでんすいしゃ)』」


 ですので、もう用がなくなったゴブリンの頭を、まとめて吹き飛ばします。

 四匹同時でも余裕のようですね。他のモンスターも、この程度の強さだと嬉しいのですが………。


「あ、あの………」


 おっと、そういえば私は人を救っていたのでしたね。

 忘れていました。


「お怪我はありませんか?」

「は、はい………えっと、千影さん、だよね?」


 私のことを知っているのでしょうか。

 ………おや、この人よく見たら。


「同じクラスの島村さんではありませんか。いつも体育委員の仕事、お疲れ様です」

「あ、ど、どうもありがとう………じゃなくて!えっと……助けてくれてありがとう、千影さん。危うく殺されちゃうところだったよ」

「いえ、私が勝手にやったことですから。時に、何故外に?このような危険な事態になっている時に出歩くなど、感心しませんが」

「出歩いてた千影さんが言う!?………あー、いや。実はさ、うち、もう………ご飯が無くて………」


 なるほど。

 しかし、それでも疑問は残ります。


「そういうことでしたか。しかし、ならば尚更、何故貴方が?普通はご両親が共に行くものではないのですか?」

「あー………その、ね。うち、お父さんがいなくてさ。ずっとお母さんと小さい弟と一緒に暮らしてるんだけど………お母さん、体が弱くて………」


 それは大変。

 しかし、恐らく今頃は、スーパーやコンビニの状態は二つの可能性しかないでしょう。


 既に人間が争いあっているか、モンスターがウヨウヨしているか。


 彼女のような非力な方では、どちらに転んでも食料の入手は不可能と思われます。それどころか、もしも後者だった場合、彼女が食料になりかねません。

 助けておいてここで放り出すというのも気が引けますし、ここは、


「そういうことであれば、私も同行しましょう。二人いた方が、生存率も持てる食品の量も増えるでしょう」

「えっ、いいの!?………でも、悪いよ。千影さんにそこまで………」

「構いませんよ、私も特に目的はなかったですし、どの道、数日後には持っている分が尽きます。今のうちに補充しておいても損はありません」

「そ、そう?………なら、お願い、しちゃおっかな」


 彼女を最後まで助けることにしました。



 ※※※



「ねえ、千影さんって、やっぱり何か格闘技習ってるの?」


 近くのコンビニエンスストアに向かう道中、島村さんがそのようなことを聞いてきました。


「習っている、と申しますか………家がそういう家系でして。幼い頃から、姉や弟と共に仕込まれました」

「へー、どうりで強いと思ったよ。小さいのに凄いなあ」


 身長の件については、これからの成長に期待しているので言わないで欲しいのですが。

 実家を出る際に、弟から「姉ちゃんはロリコン集めそうな体と顔してるんだから、頼むから気をつけてくれ」と念を押されたのは記憶に新しいですね。あの子は元気でしょうか。


「あっ、見えてきたよ!」

「そうですね………待ってください、何やら様子がおかしいです」

「え?………なんだろう、あれ」


 確かに、青い看板に牛乳瓶が描かれているコンビニに辿り着きました。

 しかし、その入口で、なにやら揉め事が起こっているようです。

 近づいて耳を澄ませてみると、


「頼むよ!もう少しでいいんだ、もう少し飯を分けてくれるだけで………」

「うっせえ、ここはもう俺達のもんなんだよ!パンをくれてやっただけありがたいと思え、分かったらさっさと別のところに行くんだな!」

「人の心はないの!?」

「はあ?おたくら、こんな状況でまだ人の心云々言ってんのか?馬鹿じゃねーのか、もう終わっちまったんだよそんなのは!見ろ、怪物共がウヨウヨしてるぜ………これからはな、あれをなんとかするのが、生きる条件ってやつになるんだよ!そもそも、対価も無しに要求してきてるクセに、偉そうなこと言ってんじゃねえぞ!」


 そんな声が聞こえてきました。

 どうやら、数人の男性が、コンビニを占拠しているようですね。

 ふむ、これは………。


「な、なんて人達なのっ!?自分達さえ良ければ………」

「そうでしょうか?言い方は粗暴ですし、少々言い過ぎな気もしますが、発言自体はそれなりに間違っていないと思いますよ」

「えっ!?………あ、ちょ、千影さん?」

もう一話、18時に投稿します。

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