第十五話 デレた
よろしくお願いします
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変なフラグが建ったけど気にせず行こう。
で、男臭いギルドを出ようとしたら、
「ギャハハハ、オメェみてぇなヒョロイのが冒険者だぁ?」
「舐めてんじゃねぇよ!」
絡まれました。酒臭い二人組に。
…参ったなぁ、目が完全に座っちゃってるよ…。そしてこのテンプレ。もうお腹いっぱいだっちゅーの。
どうしよう…。
めんどくさい、逃げたい、汚い、離れやがれー。
「無視ってんじゃねぇよ!」
「どうすればいいんですか…。」
「お、話の分かる兄ちゃんじゃねーか、金だよ、金。」
おい、冒険者。
それ、カツアゲと変わんねーじゃねーか。
盗賊だろ、堂々とした盗賊。
…仕方ない。
どさりと麻袋を冒険者の手に置く。
「どうぞ。」
「え、おお、これって…!」
「だ、大銀貨がこんなに…っ!」
「…もう、いいですか?」
「あ、あぁ!うっへぇ、ラッキー!借金返せるぜ!サンキューあんちゃん!」
「いえ、では失礼します。」
喜びに浸る冒険者を避けギルドから出る。
にしても、借金かーどこで借りてるか知らないけどすぐバレんだろーな。
あのおっちゃん達は節穴だったけど金を扱う人の目はごまかせないだろーからな。
はい、そうです。
あの冒険者に渡したのは偽札?偽硬貨です!
え?犯罪だって?使ってないから許せ。
ここ日本じゃないし、おふざけだったんだよ。
こーゆー展開あるかもなーと思って作っておいたんだ。
全てお金で解決☆
俺はチートな異世界主人公じゃないからな!
暴力とか無理!自分で使ってないからいいんだよ!
盗賊から金貰った後、石で大銀貨の形を模して、上から銀を砕いてスプレーで吹き付けた。
銀はシルバータートルっていう魔物の甲羅から、スプレーは自作。
上手く行き過ぎて作りまくったんだ。
凝り性なんだよ、俺。
重さ調節してーギンヤにデザイン掘ってもらってーってやったからいい出来栄えだ。一瞬見ただけじゃ分からん。
どんまい冒険者。犯罪者呼ばわりされるかもしんないけど、カツアゲした相手が悪かったんだよ。
罪悪感感じないのかって?
ねぇよ、んなもん。
俺、虐められたら5.5倍にして返す男だからな。
高校の時殴ってきた不良の頭にウサミミカチューシャつけたり、背中に押忍っ!オライケてるヤンキーっス!って書いた紙貼ったりしたんだぞ?
それ以来、学校で大きな顔しなくなった…スッキリ。
もちろん犯人は分からず迷宮入りだ。
嫌がらせのためだけに影を薄くする努力したぐらいだからな。
俺の座右の銘〈嫌がらせには手を抜かない!時間と手間をかける!〉である。
懐かしいなー。会社に入ってからそういうことやってなかっ…そういえば、上司のカツラ飛ばしたりしたか。やってたわ。
こっちは材料が揃うし、時間あるしで、色々やっちゃうんだよなー。自重しよ。…多分、するよ、うん。
さーて、さっさと逃げて宿探しますか。
本当は受付嬢さんに聞くつもりだったんだけど居なくなっちゃったしなー。
せっかくだし、色々観光しながら探すか。
ギルドの外を出て大通りを真っ直ぐ進む。
大通りの先にはデカイ中世ヨーロッパ風の屋敷。
ここの領主の貴族、確か、オークコン伯爵だったかな?が住んでるんだと。
…この名前を聞いた時、豚好きなん?とか思ってしまったのは仕方ないだろう。
屋根が金色で門には女性の像。
趣味悪いなー。
もう少し奥に進んでみるか。
大通りから枝分かれしている道に入ると、えーと夜の街なのか、どの店もまだ開いてなかった。
逃げよ。こーゆー店は大抵ボッタクリなのだ。
溺れたら最後死ぬまで這い上がってこれない恐ろしい場所だ。
…俺の友人がキャバクラにどハマりして借金してしまったぐらいだからな。くわばらくわばら。
また別の道に入ると商店街に出た。
大通りの周りは屋台が多かったからな。
こっちは八百屋とか本屋、種々多様な店がある。
ここだったら宿屋あるだろうな。
もしかしたら皆こっちにいるかも。
「お、そこの兄ちゃん!何探してんだい?」
「こんにちは。宿屋を探しているんですけど…いいとこ知ってます?」
「それだったらここもうちょい進んだ先に夜の小鳥亭っつう宿屋があるよ!あたしのいとこがやってんだ!あたしの名前、リーリアからの紹介だって言やぁサービスしてくれるよ〜。」
「ありがとうございます。行ってみますね。
では、そのオレンジ一袋ください。」
「毎度!大銅貨三枚だよ!」
三枚を支払い、商品を受け取る。
なかなか気前のいい人だった。
オレンジ、えーとみかんゲット!
甘いといいなーあーでも酸っぱいような気がする。
次に目についたのが本屋。
紙が貴重なのかどれも高い。
最低でも大銀貨五枚。ひえー高い。
…紙か…造形で作れないかな…今度試して、上手くいったら売ろう。
本屋にあったのは、魔導書、歴史書、魔物の種類が書いてあるもの、神話、などなど。
結構充実してるけど小説とかないのかね。
あ、冒険譚!なになに…勇者マサキの冒険…マサキ?
日本人じゃないか?正樹、みたいな。
うわ、気になる。同郷の話ちょー気になる!
げ、金貨一枚!ダメだー高いー。買えねー。…立ち読みダメかな?ダメだよね…。
「なんだ、お主、その本が気になるのか?」
「ええ、まぁ。」
「それは先代勇者様の手記でな…異国の言葉なんで読めんのじゃ。」
「異国の言葉…?」
「そうじゃ。このまんまあっても売れんじゃろうし…大銀貨五枚にしてやろう、どうじゃ?」
「三枚で。」
「…はぁ、分かった、いいじゃろ。持ってけ。」
「ありがとうございます!」
サンキュー爺さん。
半額以下だぜ!
しっかし異国の言葉って日本語だろ?
なんでわざわざ日本語で書いたんだよ…つーか言語翻訳で強制的にこっちの言語にならなかったんかね。
多分異世界人特有の能力だと思うんだけど…。
もしかして日本語のまま!って念じれば発動しないのかな。
とにかくわざと日本語で書いたってことだよな。
こっちに来た日本人の為に。
俺が見つけて良かったんだろうか…。
買うんじゃなかったかもしれない。
読むか。
読んで、今代の勇者様にあったら売ろう。
絶対タダであげない。値段の5.5倍で売る。
なんでさっきから5.5倍なのか。
俺の誕生日だから。子供の日〜。
さてさて、あ、ベンチ発見。
読書ターイム!
『僕の名前は井上正樹。
分かると思うけど日本人だ。
突然、帝国に召喚されて勇者をやることになった。
はぁ、一体僕が何したって言うんだ。
仕事尽くし、妻は離婚を迫ってくるし、髪の毛は風前の灯火だし…はぁ。』
暗いな勇者よ。
お前愚痴るために手記なんて残したんじゃないだろうな?
しかもハゲ予備軍かよ。
『ごめんね、愚痴みたいで。
今回この手記を残したのはこれから魔王討伐に行かないといけないんだ。』
…これ、手記じゃなくて遺書じゃないの…?
『まぁ、遺書みたいなものだと思ってくれるかな。
魔王相手じゃ生きれるか分かんないし。』
合ってたよ。
『正確には魔王討伐に失敗したと見せかけて隠居するんだけどね?表向きには死んだことになるかな?僕もうおじいちゃんだからね〜魔王討伐とか無理無理。』
逃げんのかよ、勇者。それでいいのか、勇者。
ユルいな、おい。
そして帝国、おじいちゃんに魔王討伐行かせるなよ、ご老体は労ってやれや。
成功率低いことに誰か気づかなかったんか。いや、ご老体でもアホみたいに強かったのか。
『前置きはこれぐらいでいいかな?
本題に入ろう。
これを読んだ人に頼みたいことがあって───パタン
閉じた。
厄介ごとの匂いがしたから閉じた。読むのやめた。
だって勇者からの頼み事なんてろくな事がない。
絶対面倒くさい。
この爺さんの適当さから察するに相当面倒なことを遺して逝ってるに違いない。
止めだ止め。
安心しろ、あんたの後継者に届けて(押し付けて)やるから。気が向けば。
俺と同じ人種じゃなければやってくれると思うよ、うん。
はー無駄な買い物した気分。
前々回の戒めどこ行っちゃったんだよ、俺。
宿屋行って予約したら集合場所行こう。
双子に会いたい、癒されたい。
手記のことを頭の片隅に押しやり、宿屋、夜の小鳥亭を探す。
あ、小鳥の看板。
木で出来たドアを開けるとからんからんとベルが鳴り俺の来訪を知らせた。
音を聞きつけて奥から女の人が出てきた。
あ、あの親切なおばちゃんに似てる。こっちの方が若いけど。
「夜の小鳥亭へようこそ〜。」
「えと、リーリアさんからの紹介できたんですけど、一晩四人で泊まりたいんですけど…。」
「あーリーリア姉さんの!サービスするわよ!四人ね、大部屋?それとも個室?」
ん〜どうしよっかな。
コチョウは別々にするべき?いや、でもまだ子供だしな〜。洞窟で一緒に寝てたんだし今更か。
「大部屋で。」
「分かったわ。夕食と明日の朝食込みで一人銀貨五枚のところ、四枚にしてあげるわ!」
「ありがとうございます。えーと全部で大銀貨一枚と銀貨六枚ですね。」
「あら、お兄さん商人?計算できるのね〜。」
「いえ、そんなんじゃないですよ。」
あははははとテキトーに返事をした─────ら、
何かが飛んできた。
バキィ!ドシャァアアン!ゴッ!
宿の壁を突き抜けカウンターに直撃。
カウンターに直撃した何かは男だった。
騎士なのか鎧を着ていたが、その自慢の鎧は左の脇腹が抉れていた。
一応生きてるようでピクピクしている。
宿の壁にはポッカリと大穴が開いていた。
外から飛び込んできたんだよな…?これ。
…どうしよう、嫌な予感がする。
見たくない。確認したくない。…けど、行かないといけない。
そんな衝動に駆られる。
それでも意を決して扉を開けると。
双子とでっぷり太った腹の中年男性の間にいたノワールが、
「うちのガキどもに何してんだ、ゴラァ!!!」
デレた。
最後まで読んで頂きありがとうございます(。 ・ω・)ノ