表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

第五話 深夜のタクシー

終電を逃した糸岡が乗ったタクシーは……

 取引先と思いがけず話がはずんでしまい、糸岡が勘定を済ませて外に出た時には、もうとっくに終電を過ぎていた。夫人が車で迎えに来るという相手と別れ、糸岡はタクシーを探すため、ふらふらと道沿いに歩き始めた。

 タクシーというのは、用のない時にはやたらと目につくのに、いざ探すとなると、どうしてこうも見つからないのだろうと、糸岡は酔いの回った頭で考えた。もっと大きな通りに出た方がいいのかもしれない。

 だが、ようやく屋根に表示灯をけた車が角を曲がって来た。糸岡が手をげると、今流行りのハイブリットらしく、ほとんど音もなくスーッとまり、ドアが開いた。後部座席に座りながら行く先を告げると、相手は無言でうなずいた。今時こういう無愛想ぶあいそうな運転手は珍しい。

 最近は、みんな愛想が良くなった。そのかわり、転職組なのか道にれていないことが多く、乗るといきなり、ナビを使っていいか聞かれたりする。カーナビがいくら進歩したとはいえ、昔の運転手ならみんな知っていた『一般人の知らない裏道』や『ここぞという時の抜け道』などが搭載とうさいされているはずもない。

 時には、しゃべることがサービスの一環であるかのように、乗ってから降りるまで話し続けられることもある。糸岡のような普通のサラリーマンがタクシーに乗るのは、よほど疲れている時か、今のように酔って朦朧もうろうとしている時ぐらいで、ペラペラ話したくなるような気分の時ではない。

 もっとも、静かなのはありがたいのだが、あまりに無言だとちょっと不安になる。昔よく聞かされたタクシーの怪談話のいくつかが、糸岡の頭をよぎった。

 チラッとルームミラー越しに運転手の顔を見たが、別にノッペラボウでも一つ目小僧でもない、普通の顔である。車もちゃんといつものルートを通っており、墓地やお寺に向かっている様子はない。

 無口なことといい、カーナビを使わないことといい、この道ウン十年とかのベテラン運転手だからこそであろう。糸岡は少し安心し、いつの間にかウトウトしていた。

 どれくらい眠ったのだろうか。糸岡がハッとして目を覚ますと車は停まっており、周囲に街の明かりもなく、真っ暗だ。しかも、運転手はこちらをジッと見つめていた。

 糸岡が恐怖の叫びを上げる寸前、運転手がボソリとこう言った。

「すみません。道に迷いました。カーナビが故障中なもので」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ