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9.Lineメッセージ


FROM:田所あかり

TO:塚森レイジ

件名:引っ越しのご挨拶


塚森先生へ。

田所桃の母親、田所あかりでございます。


先日の保護者面談では大変お世話になりました。

……実を言いますと、私は著しく健康とメンタルを害しておりまして当日、塚森先生にどんな受け応えをしたのかほとんど記憶にありません。

恐らく失礼な態度を取ってしまったのではないかと思います。せっかくお時間を取って頂いたのに申し訳ないです。


また、桃の作文の内容につきましてですが、先生の仰る通り、全く異常としか言いようがないです。

今となっては身が震える思いですが、なぜかあの時の私は全くとるに足りないことだと、いえ、それどころか喜ばしいことだとすら思いこんでおりました。

今でも桃の言う「団地のおうさま」とやらは子ども達の想像力が産み出した架空の存在(イマジナリィーフレンドというのでしょうか?)であるとは思うのですが、いつの間にか私もその影響を受けたらしく、すっかり「おうさま」の存在を信じ込み、当たり前のように受け入れていました。

こうしてお手紙を書かせて頂いている今でも自分の身に起きたこととは到底思えないのですが……。


そして先日、先生もご存知のように毒ガス騒ぎが起きたのですが、避難所で桃の寝顔をみているうちに私はようやく正気に戻った、というわけでございます。

大変お恥ずかしい話だと思います。


つきまして私達親子は急ではありますが、この■■団地を引っ越すことに決めました。

桃はしばらくの間休養させ、他の小学校に転校させることになるかと思います。


……大人の都合でこんな人外魔境に連れ込んでしまい、辛く心細い想いを娘にさせてしまったのは私の母親としての至らなさだと痛感しております。

せめて引っ越し先では桃が心穏やかに過ごせるよう母親としての務めにまい進してゆきたい所存です。


先生にもこの度は大変なご心配をかけてしまったことを重ねてお詫び申し上げます。


FROM: 塚森レイジ

TO: 田所あかり

件名: Re: 引っ越しのご挨拶


田所あかり様

ご丁寧なご連絡をいただき、ありがとうございます。

先日の面談につきましては、どうかお気になさらないでください。

あの日の田所さんは、心身ともに追い詰められていたのだと思います。


むしろ、あの状況で桃ちゃんのことを思い続けておられたことに、私は深く胸を打たれました。

作文の件も、今は冷静に受け止めておられるとのことで安心いたしました。


桃ちゃんが抱えていたストレスは、決してお母さまの責任ではありません。

あの団地の環境が、お二人の大きな負担になっていたのでしょう。

避難所で桃ちゃんの寝顔を見て正気に戻られたというお話……

その光景を思い浮かべると、私まで胸が熱くなります。


私にも娘がおりますので、

“子どもが安心して眠っている姿が、どれほど親を救うか”

その気持ちが痛いほど分かります。


今回の引っ越しのご決断は、桃ちゃんにとって最善の選択だと思います。

新しい環境で、桃ちゃんがゆっくりと心を休められることを願っております。


どうか田所さんご自身も、無理をなさらずに。


今回の件で、私のほうこそ力不足を感じておりますが、

お二人が前へ進めるのであれば、それだけで十分です。


また何かございましたら、遠慮なくご連絡ください。

お二人のこれからが穏やかでありますよう、心よりお祈り申し上げます。


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