Get physical then the HELL with you!
気が付くと十太郎は、元の教室に戻っていた。
葉月、北村先生も同じだ。
「戻ったの?」
北村先生が周囲を見渡す。
さっきまで荒涼としたシャディザールの平原に居たはずだ。
「とりあえずお疲れ様ですー。」
そう言って葉月は、十太郎の腕に抱き着いた。
十太郎の肩に頬ずりし、北村先生を威圧する。
「ちょっと十太郎を独り占めするの!?」
大人げない北村先生が反対側の腕を取る。
エッチなセーターとタイトスカートで猛アピールする。
「じゅ、じゅ、じゅあっ!
十太郎は、疲れてるんですー。」
葉月も超爆乳を必死に擦り付けてくる。
こんな痴情、学校でやって良いことじゃないよ。
「か、帰らせて貰えるんじゃなかったの?」
困った十太郎がそう言うと両方から口撃される。
「どうせ帰っても何もないじゃない!」
と葉月。
「このまま帰れると思ってるの!?」
と北村先生。
「二人とも今日は、まだ月曜日だよ。」
嫌そうに十太郎が二人を振り解こうとする。
しかし二人とも離れない。
「先生がご飯食べに連れて行ってあげるから!!」
と北村先生。
これは、大人げない。
「アリス先生は、まだ仕事ォ!」
葉月がそう言うと北村先生は、悔しそうに引き下がった。
憎らしそうに十太郎をじっと見つめる。
「あ、あ…あの……。
またどこかで埋め合わせしますので…。」
十太郎は、そう言って諦めて貰おうとするが北村先生は、引き下がらない。
「だめっ!
帰らせない!!」
お勤めを終え、十太郎は、家に帰る。
たっぷりと葉月、北村先生に絞られた。
「うう…。」
(夢のハーレム生活なのに暗いなァ。
もっと嬉しそうにしたらどうだ?)
夜桜が揶揄う。
玄関で靴を脱ぎながら十太郎は、疲れた様子で答えた。
(これから義姉さんと葵にもせがまれるだろ。
…お前も俺を休ませてくれないし…。)
十太郎は、そう言いながら流されて生きている。
翌朝。
家を出ると葉月が待っている。
「おはよー!」
朝から元気だな。
と思っていると別の顔が見えた。
「おはようごぜいまーす。」
鳩巣だ。
こんな時間帯から待ち伏せされるとは。
「流川さん。
また何か新しい情報があった?」
十太郎が訊くと鳩巣は、スマホを取り出す。
「これ、ジョー・マクフェアノールたちの住所です。」
スマホに出ているのは、6人の通っている高校、現住所だ。
ジョーは、神奈川県。
結城は、北海道。
ルンルは、埼玉県
天村は、茨城県。
月愛と綺羅羅は、東京らしい。
通っている高校を十太郎は、見なかった。
「え、ちょっ……どうやって調べたの!?」
十太郎は、驚いて目を丸くする。
そもそもなんでこいつは、向こうの情報を知ってるんだ。
「言ったでしょ?
幽撃倶楽部の力は、強大だって。」
続けてまたスマホを操作する。
三人は、歩きながら話を続けた。
「徳川龍外。
徳川宗家の流れを組む人間です。
三代家光の直系の子孫ですね。」
「家光の?
………八代吉宗が就いた時に江戸宗家は、絶えたんじゃ?」
十太郎は、日本史の知識を引っ張って来る。
紀州藩の吉宗が将軍に就いたのは、江戸将軍家の血が断絶したためだ。
「いえ。
彼女は、歴史から隠された江戸宗家の末裔です。
宝永3年、1706年に京へ移り、間接的に江戸と全国を統治してたようですね。」
鳩巣は、次々に資料や文献の写真をスマホに出してくれる。
だがちょっと鼻で笑ってしまうような珍説が次々に結び付けられていく。
結論として徳川龍外は、世間一般に知られていない徳川の末裔。
しかも幕末から戦後、莫大な財力と影響力を受け継いだ一族だという。
急にユーチャンネルにありがちなフェイクニュースになったな。
と十太郎は、複雑な顔になる。
「………ということなんです!」
鼻を鳴らして興奮気味に語った鳩巣に対し、十太郎は、冷ややかだ。
「凄く嘘っぽいね…。」
「あれれ~?」
他にも真偽不明の話題を一方的に話して鳩巣は、駅前で別れる。
葉月と十太郎は、自分の学校に行った。
2時間目の授業、体育。
「うわあ。
森下先生の水着やべえ!」
「すげえー!」
「超ヤバいって、へへへ…。」
「えッッッぐ!!」
男子生徒たちが騒いでいる。
水泳の授業は、水着観覧会になった。
というのも鬼山がいないからだ。
1日の間、7~8回は、こうして授業を抜ける。
こういう時、あの男は、どこかで女子生徒に手を着けている。
ほとんどの生徒にとって身の毛がよだつ時だ。
友達が、気になる女子が鬼山の手に落ちているかも知れない。
男子たちの注目を集める体育の森下杏奈。
抜群のプロポーションと美貌を誇る女体育教師だ。
しかし彼女も鬼山の女だという噂だ。
そんな話を聞くと水着の森下先生を見ていても鬼山が浮かんで気持ち悪い。
「お前、もっと人生を前向きに楽しめよ?」
夜桜の声がして十太郎は、驚いた。
なんと身体の外に出ている。
「よ、夜桜!?」
春風高校指定の水着に着替えた夜桜だ。
身長186cmの長い手足は、凄艶の一言に尽きる。
思わず心臓が高鳴って十太郎は、心を奪われた。
「何だァ、あの色々デカい女子ィーッ!?」
「………3組にあんな女子居たか?」
「4組の女子にレベル高い奴おるで。」
他の皆は、見慣れない女子生徒の出現に首を傾げた。
見覚えがないのは、普段、学校に来てない子なのだと思い込んだ。
それに十太郎と一緒にいるので声をかけづらい。
「き、キレイだね。」
十太郎は、ドキドキしながら話している。
顔が真っ赤だ。
普段は、夜中にしか夜桜を見ない。
真昼に彼女の姿を見るのは、滅多にないことだ。
「はあ?
なんでそんなにビビってんだ。」
夜桜は、褒められたのが嬉しいのか素っ気ない返事だ。
「ところでなんで出て来たの?」
十太郎が訊く。
夜桜は、ニヤリと歯を見せて微笑む。
「たまには、自分の最高の全力を見せないとな。」
そう言って夜桜は、息継ぎなしでクロールを始めた。
50m泳いだところで息継ぎを入れてクロール。
その後も水泳部員たちが青くなる泳ぎぶりを見せた。
「なんだ、あれ…?」
「鬼山じゃねえのか!?」
「鬼山でも森下先生でも無理だろ…。」
3組4組の生徒たちが見守る中、夜桜の泳ぎが続く。
「龍だ………。
このプールには、龍が潜みおるわ…!!」
老師みたいな男子生徒が腕組みして言った。
いつしか生徒たちは、その泳ぎに感動し始めてさえいた。
「すげー!」
「何もんだぁ!?」
「これ、春風が水泳で全国取るぞォ!?」
そんな中、鬼山がプールに入って来た。
今、教師用の更衣室に入って行く。
(鬼山が戻ってくる。)
十太郎が頭の中で念じた。
夜桜は、プールから上がる。
その完璧な肉体美に誰もが圧倒された。
圧巻の光景に誰もが目を奪われる。
しかし夜桜に言わせれば自慢の髪を見せられないのが癪だ。
そのまま夜桜は、プールから走り去った。
フェンスを飛び越え、水着のままどこかに消えた。
「なんだ、あの女子…。」
「誰か知らねえか?」
「なんで誰も知らねえ奴がプールにいるんだよ!!」
昼休み。
十太郎は、校外の公園に向かう。
そこで夜桜と落ち合うことになっていた。
「よお!」
ベンチに座って待つ私服の夜桜が手を振る。
今日もへそ出しの刺激的なアレで十太郎は、嫌な溜め息が出た。
「たまには、運動してストレス発散になったか?」
そう言って弁当を渡すと十太郎も隣に座る。
「本来なら、ああして全校生徒に注目されてたんだろうな。」
「まあ、そういう世界に《転校》しないこともある。」
そう答えた夜桜は、弁当に箸を着けた。
「今の生活は、結構、気に入ってる。
……可愛い男子と24時間一緒にいるし。」
そう言うと十太郎の頬をつねった。
「葉月の前ぐらい。
出て行っても良いんじゃないか?
友達とか欲しいだろ。」
「………。」
夜桜は、少し黙って弁当を食べ続けていた。
しばらくそうして再び口を開く。
「《転校生》は、常に強く孤独であるもの。
世界を渡り歩く《転校生》に友は要らない。」
「なあ。」
「うん?」
「もし《転校》することがあったら。
俺は、お前と一緒にいられるかな?」
十太郎がそう言うと夜桜は、女悪魔の笑いを見せる。
「その時は、文字通り地獄まで一緒だぜ。」




