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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第3話「出て行け!西岡十太郎!!」
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カラトン神殿




ジョーは、十太郎を連れ、タナスルを出立した。


一行は早速、略奪行を始める。

食人族の集落を襲いつつ、洞窟や岩陰で砂嵐を避けながら移動した。


「またこれぇぇぇ?」


十太郎は、走りながら泣き言を言う。

鋼の棍棒メイスで食人族の頭を吹き飛ばした。


この略奪行は、本当にキツイ。


「仕方ないじゃん。

 こうしないと水の補給は、できないんだもん。」


月愛ルナがいった。

大盾ホプロンサリッサを背負った《ホプリタイ》なのに十太郎より走るのが速い。


ここタナスル周辺の水場は、すべて食人種グールが抑えている。

川、池、泉、どこも彼らの集落が囲いこんでいた。

だから奴らの集落を襲うのが一番、手っ取り早く安全な水源を探す方法だ。


安全というのは、飲んでも平気な水という意味で、だ。


「着いたよ。」


先頭の天村あまむらが背を低くする。

他の皆も一斉に岩陰に隠れた。

十太郎は、5人の乳尻を盗み見て赤くなっている。


「う……。」


ここで十太郎にジョーが説明を始めた。


「ここは、カラトン神殿。

 食人種たちが喰屍鬼グールの神バステトを祀る場所だ。」


そういってジョーが顎先で岩陰から覗くように示した。

ゆっくりと十太郎が顔を出す。


そこは、これまでと一変して壮麗な神殿が築かれていた。

あのゴリラの親戚みたいな食人種の不出来な集落と似ても似つかない。


巨大なライオンの石像には、大きな宝石がうずめられている。

黄金の飾りを着けた列柱と噴水、プールもある。

何よりあちこちに猫をモチーフとした飾りが着けられている。


「………説明が要る?」


ジョーが十太郎の顔を見ていった。

十太郎は、黙って小さく何度も頷く。


「多くの冒険者がこの《スケロスのいど》に来て2ヶ月経つ。

 外では、2ヶ月でもここじゃ、もう半年以上、経ってる。」


この異世界に入るのは、1日1回。

だがこっちでは、1週間前後を過ごす。

元の世界では、これが一瞬の出来事になる。


4月ごろに初めて異世界に迷い込んで、もう6月…。

この2ヶ月で半年、冒険者をやっている計算だ。


「あちこちの目ぼしい財宝は、持ち去られた後だ。

 ………でも、きっとここは、手付かずだ。」


ジョーは、期待を込めた目で神殿を見つめている。

確かに、ここには、何かありそうだ。


「う~ん…。

 かなり危なそうだけど。」


「十太郎。

 冒険するためにこっちに来てるんじゃない。

 冒険しないでどーするんだって。」


ジョーは、そう言ってカウボーイハットを被り直した。


「そういや。

 ジョーは今、なんて職業クラス?」


十太郎がジョーに訊いた。

そういえば、さっき聞いてなかった。


「《ガンナー》。

 お陰で剣が使えなくなったんだけどね。」


そう答えたジョーの腰には、拳銃しか下がっていない。

背中には、ライフル銃がかかっていた。


「さあ、行くよ。

 お宝が待ってるからね…!」


ジョーを先頭に6人は、カラトン神殿に踏み込んだ。


「×××××××ー!」


食人族の兵士が十太郎たちを見つけて襲い掛かって来る。

逆にバステトの信者たちが神殿の奥に逃げ込む。


「×××××ォォォ!!」

「××××××ッ!!」

「×××××××××ー!!」


まるで猿みたいな走り方だ。

壁や柱を伝って十太郎たちの前から消えた。


神殿に住む食人種は、かなり人間に近づいている。

不格好な前傾姿勢が幾分かマシになっていた。


「××××!」


ほぼ直立二足歩行になった食人種が黄金のケペシュで襲ってくる。

その青白い身体に黄金と宝石をあらん限り着けていた。


「いいぞッ!

 お宝の匂いしかしないぜ!!」


ジョーが銃で食人種たちを次々に射殺していく。


「げう!?」


《ゾンビ》のルンルは、頭や手足が斬りつけられても再生する。

その代わり回復魔法は、逆に《ゾンビ》の身体を破壊してしまう。

十太郎としては、回復しなくて済むので楽だった。


「うう…!

 やったなー!!」


ルンルは、口から毒を吐いて反撃し、爪や牙で逆に食人種を食い殺した。


「うし…!

 うっし…!!」


《ホプリタイ》の月愛は、大盾で敵を防ぎ、槍で突き殺していく。

この単調な戦闘が嫌いという高校生も多く人気がない。

しかし逆にこれが好きという連中もいた。


「えやああ!!

 でやあああ!!」


《ソードマン》は、特に戦闘好きが多い。

天村も例に漏れず、そういう感じのする女子だ。


「あははは!

 宝箱見っけぇー!!」


《ナイト》の綺羅羅キララは、ジョーと同じで宝が目当てらしい。

一目散で目に入った宝箱に突進した。


もちろんこれが目的でクランは、活動している。

しかし戦闘中でも金貨や財宝を掻き集めるのは、ちょっと困った。


「おわ…!

 うわああ…!!」


四方からやってくる敵に十太郎は、てんてこ舞いだ。

やはり岩戸クランの方が動きが良かった。


(うう…。

 前のクランが良かったなんて…。

 ……考えてたくないけど………。)


そんな風に十太郎が考えているとジョーたちの姿がない。


「あれ?」


十太郎が辺りを見渡す。

すると奥の部屋にジョーたちが集まっていた。


「なに、何かあった?」


「お前は、ここに置いて行く。」


ジョーがそう言って十太郎を睨んだ。


「次々と女に手を出しやがって!

 ……一度、痛い目を見るんだなッ!!」


ジョーたちは、パラシュートを取り出した。

そして神殿の窓から飛び出し、崖の向こうに向かって飛んでいった。


「え…?」


一人残された十太郎は、頭が真っ白になった。

すると同時に十太郎の口から夜桜が飛び出す。


星閃せいせんッ!」


夜桜の指先から光線が飛び出した。

ルンル、月愛のパラシュートがバランスを崩して落下していく。

残る三人のパラシュートにも狙いを着けている。


「やめて、夜桜ァ!!!」


十太郎が夜桜の腰に飛びついた。

驚いた夜桜の攻撃は、狙いを外し、神殿の屋根や柱を吹き飛ばす。

ガラガラと石材が崩れ、危うく二人とも生き埋めになる寸前だった。


「お願い!!

 ジョーを攻撃するのは、止めて!!」


「あの女、舐めやがって…!」


夜桜も神殿の崩落を考えて攻撃を止めた。

もちろん彼女にすれば他に攻撃の手段など幾らでもある。


だが仮にも十太郎の願いだ。


「どうする?」


「どうするって?」


十太郎が鸚鵡返しに訊いた。

夜桜は、呆れたように答える。


「私にお願いした以上、ここからは、お前一人で脱出しろ。

 もし失敗したら、あの女には、たっぷりとお礼をしてやる。」


そう言って夜桜は、十太郎の身体の中に戻った。

神殿の松明が作る影は、一つになり、十太郎ひとりが残された。


「………。」




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