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140.この技術が

 両断したノルを一瞥すると、シュリネは兵士達に視線を向けた。

 兵士達は怯えた様子で後退るが、


「おのれ……! よくもノル様を!」


 一人の兵士がそう言って、一歩前に出る。

 すると、触発されたように他の兵士達もシュリネへと迫った。


(……斬るべき相手は斬ったからね)


 シュリネは小さく息を吐き出すと、刃の向きを変える。

 一触即発――戦いが始まろうとした瞬間のことだった。


「ま、待ってください……!」


 その場にいた全員が、声の主を見る――リネイだ。


「リネイ様! ここは危険です! お下がりを――」

「ボ、ボクが……話をしますっ」


 兵士の言葉を詐欺えって、リネイが言い放った。


「しかし……」

「大丈夫、ですから」


 息を切らしていたリネイだが、やがて呼吸を整えると――シュリネの前に出た。

 兵士達は相変わらず武器を構えたままで、シュリネも同様に刀を握ったまま。

 リネイが、シュリネに問いかける。


「……父を襲ったのは、あなた方ですか?」

「違うよ。心当たりはあるけどね」

「それは、どういう……?」


 リネイは警戒している――彼女との付き合いは決して長いわけではない。

 シュリネはたった今、市長代理であるノルを斬った。

 この状況だけを見れば、ゲルドを襲っていないと否定しても信じられるはずもないだろう。

 だが、シュリネは真っすぐリネイを見据えて答える。


「わたしがここに来た理由は一つ――あなたに確認をしに来ただけ」

「確認……?」

「わたし達とここを出るか、ここに残るか」

「!」


 シュリネの言葉を受けて、リネイは驚きに目を見開いた――当然、周囲の兵士達も動揺を隠せない。


「リネイ様を連れて行くと言うのか!」

「我々を前にして堂々と誘拐宣言など……許せん!」

「――黙ってなよ。攫うつもりなら、とっくにあなた達を斬って連れて行ってる」


 シュリネが鋭い視線を向けると、兵士達は押し黙った。

 再度、リネイに問いかける。


「あなたが望んだことだよ。ここから出たいって」

「そ、それは……そう、だけど。父がこうなって、ノルさんは……あなたが殺したんですよね……?」

「うん、わたしが斬った。彼女がわたし達に罪をなすりつけようとしたから」

「! 罪をなすりつける……?」

「どちらを信じるか――それはあなた次第。だけど、あなたはわたし達に『ここを出たい』と願った。そして、わたしのために義手を作ってくれるとも言ってくれた。だから、危険を冒してまで確認に来たんだよ。ただし、もう一つだけ伝えないといけないことがある」

「……?」


 リネイは不安そうな表情を浮かべていた。

 ――いきなりこんな状況に放り込まれては、受け入れろという方が難しいのかもしれない。

 けれど、リネイにとってはここを出るチャンスであり――同時に真実を知らなければならない時なのだ。


「あなたは『魔究同盟』――ノルの技術によってその命を救われている。心当たりはある?」

「! それは……」


 すぐに否定しないということは、リネイも理解していることなのだろう。


『――そんなこと言って、アタシが死んだらどのみちその子の命は長く持たないんだよ? 考えなしに斬るもんじゃないって』

「!」


 どこからともなく聞こえてくる声に、シュリネは驚きに目を見開いた。

 その声は間違いなくノルのものだ――だが、先ほど間違いなく、シュリネは彼女を両断した。

 振り返るとそこに残されたのは下半身だけであり、上半身がない。


「……どこまで人間離れしてるのさ」

『キヒヒッ、この技術がリネイの命を持たせているんだからね』

「い、一体、何の話を……?」

『単純な話さ。リネイ、アンタはここを出たら長くは生きられない――アタシがアンタを生かしてるんだから。このことは、アンタの父親であるゲルドもよく知ってることだよ?』

「――」


 シュリネが伝えようとしたことを、包み隠さずノルは言い切った。

 どこにいるのか――気配はないが、何かしらの魔道具を通じて声だけをこの場に流しているようだ。

 当然、こんなことを聞かされては――ノルも動揺するだろう。


「……隠れてないで出てきなよ。今度は縦に斬ってあげるから」

『聞いてなかったの? アタシがいないとその子は死ぬんだよ? でも、悪くない経験かもしれないね。まあ、そう慌てないでさ――すぐにアンタのところに戻るから』


 その言葉と同時に――都市全体が大きく震動した。

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