次の村へ
「たしか……この辺りに……。ふふふ、ありました!」
カパーは、勝手知ったる様子で近くの棚を漁り、カラフルなフルーツと半透明な液体の入った瓶を引っ張りだした。
瓶の中の液体をグラスに1/3ほど注ぐと、別の棚から取り出した液体と混ぜ合わせ少女に渡した。
「メルキュールさんのとっておきです。ナイショですよ?」
そういって、口許に人差し指を立て、ぱちんと首をかしげた仕草をする。赤い耳飾りが揺れる、彼なりのウィンクだ。
パチパチと音のするグラスからは甘く華やかな香りがしていた。
「聞こえていますよ」
遠くから、静かな、しかし、響く声が聞こえてきた。
カパーは聞こえなかったかのように、ニコニコと少女に着席を促す。
「昨夜の件ですが……残念ながら、貴女からカムペが溢れだすところを村人に見られてしまいました。」
「申し訳ありません……。」
「貴女を責めたいわけではないのです。ですが、村人の疑惑をそのままに、村を発つこともできません。」
「はい……。」
「ですから、貴女に一芝居打っていただきたいのです。」
「お芝居ですか?」
「えぇ。これが何だかわかりますか?」
カパーは、外套の懐から小瓶を取り出すと、少女の前に置いた。
少女は一度グラスを置き、机から小瓶を取り上げる。
しげしげと眺めてみても、少女には透明な液体にしか見えなかった。
「魔具……なのでしょう……。ですが、どのような効果があるものかまでは……」
「そうですか。その方が都合がいいかもしれません。こちらを用いて祭事をおこないます。貴女はこちらをルウォに畑に撒かせるだけでいい。」
「畑に撒くだけでいいのですか?」
「浄化の儀式と同じように、魔力と貴女についているユニコーンの加護も可視化させて薬と一緒に畑に充満させて下さい。」
「わかりました……。その……、その薬を撒けば、村人からの疑惑は晴れるのですか……?」
「えぇ。ワタクシ達が利をもたらす者だとわかってくださるでしょう。」
カパーは、にっこりと笑ったが、彼から出る『もや』は濃くなるばかりだ。
信じても……いいのだろうか。
メルキュールのとっておきは、とても甘く優しい味がした。
少女は、家主に礼を伝え、天幕を後にした。
儀式はこの後すぐにでも行われるらしい。ルウォを『聖獣』らしく見えるよう飾りたて、自らも『聖女』らしく着飾った。
ルウォにこれから行うことを説明し、小瓶を見せると、激しく嘶き始めた。前肢を何度も地面に打ち付ける。威嚇行動だ。
やはり、この小瓶の中身はよくないものなんじゃないだろうか……。
「ルウォ……。お願い。私は隊長を信じたいの……。」
私に別の可能性を見せてくれた彼を。
新しい道を選ばせてくれた彼を。




