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次の村へ

青天幕を出ると、礼拝堂では既に解体作業が始められていた。賑かな声が飛び交い、次々と天幕が畳まれていく。


「今日中に村を出るつもりなのかしら……。」


この様子なら隊長は今頃、村長と話をしているか、班長クラスと道程の確認をしているか、はたまた部隊長クラスと最終確認をしているか辺りだろう。


「よう!エイル!元気になったか~?」


呑気な声に呼ばれて振り返ると、真っ黒な青年がひらひらと手を振っていた。


後ろに黄色い瞳の少年も連れている。


「お陰さまで。リンクス。」


にっこり微笑むとリンクスは眉間にシワを寄せて顔を覗き込んできた。


「嘘は良くないぞ~。元気って顔色じゃねぇからな。あんま、疲れ取れてないようなら、救護班のとこ行けよ~。」


「本当に、それほどじゃないのよ?」


そっと手を伸ばしてやんわりと押し返す。


確かに多少まだダルさはあるが、ケガや病気という訳ではないのだ。彼らの手をわずらわせるのも気が引ける。


目をそらすように顔を背けると、彼はやれやれと肩を竦めた。


「そうかよ。まぁ、救護班のとこ行きにくかったら、緑天幕今回も出すみたいだからさ、適当なとこ探して休めよ~。」


面倒見のよさは、きっと、彼の育ての親に似たのだろう。


「ふふふ。優しいのね。」


彼の成長に思わず笑みが漏れる。


「今回の功労者様だからね~。労らないと。あ、そうそう、隊長が探してたぜ~。」


ふと、思い出したようにトパーズの瞳がこちらに向いた。


「えぇ、そうなの。ドクターからも聞いたんだけどね、どこにいらっしゃるか御存知かしら?」


「あ~、隊長なぁ~。なんか、村長と話したあと、こっち戻ってきたところまでは知ってんだけど……そのあと、どこ行ったかな~。」


ちょっと待ってろよ。と言うとリンクスは、天幕の骨組を器用に上り、てっぺんで辺りを見回した。


「う~ん、ざっとみた感じ礼拝堂(このへん)にはいなさそうだけど……。あ~、あれそうかな……?」


リンクスに言われた通り、礼拝堂から出て広場へ出ると、石段の所に座って地図を眺める白い外套姿の男がすぐに見つかった。


「エイル参上致しました。」


外套姿の男の前にまわり、膝をついて挨拶をすると、彼はお待ちしていましたよと笑った。


「大変でしたね。体調はいかがですか?」


「お陰さまで。」


「そうですか。それは何よりです。」


カパーは穏やかに微笑むとそれ以上は何も言わなかった。


「御用があると伺ったのですが。」


「えぇ。ですが、こんなところで話すのも何ですから。移動しましょうか」


「何故、貴方は、私の天幕に来るのです?」


眉間にシワを寄せて仁王立ちしている部屋の主に、カパーはヘラっと笑ってみせた。


「私の天幕は、人を呼べる空間ではないので。」


物が多いながらもきちっと整頓された部屋で、家主は深くため息をつく。色素の薄い柔らかな長い髪が揺れる。


「今回も緑天幕を出すのでしょう?そちらでやられてはいかがですか?」


「メルキュールさんもご存知でしょう。礼拝堂ではスペースに限りがありますからね。まだ出してはいないんですよ。」


「だからと言って……。はぁ。もう、結構です。私もやることがありますから、今は不問といたしましょう。そちらのソファーでしたらご自由にどうぞ。」


彼は、藤色のたれ目を伏せて諦めたように言った。


「ありがとうございます。」


「貴方の為ではありませんから」


そういうとメルキュールは奥へ引っ込んでいった。


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