15 予想外の出来事
凱旋中だったランヴァルドは、高揚した民衆の笑顔を見て、たまにはこういうのも悪くないと思い始めていた。
「アルミロ、今日はどうなるかと思っていたが無事に終えられそうだな。」
アルミロは彼の成長ぶりに驚いて頷いた。
「ええ。陛下も満足そうでなによりです。」
ふと、思い出したようにアルミロが貴族席のほうを見た。
「そういえば陛下、今日はエヴァン様のご令嬢がいらっしゃってますかね?」
「イザベラ・スチュアートのことか?どうだろうな。…以前意地悪なことを言って気を悪くさせたから、パレードは見てないんじゃないか?」
「侯爵様の報告では、楽しみにしている、とありましたが。」
ランヴァルドは貴族席を見たが、そもそも若い人があまり座っておらず彼女がいないことはすぐわかる。
「だから、あれはあのオジサンのリップサービスに決まってるだろ。」
「茶会でルシア嬢と、とありましたが。」
「じゃあ、また体調を崩したんじゃないか?きっと、いや、本当にそうかもしれないな…」
そんなやりとりをして馬車が坂道を登ろうとした時、アルミロのもとへ護衛騎士が報告をしに来た。
「凱旋中失礼します。後方を警護していたものが、怪しい男を見たそうなので念のため報告に参りました。」
アルミロはどうせたいしたことではないだろう、とは思いつつも念のため聞いた。
「それで、どんな奴だ?」
「それが、どこかのご令嬢をトイレ付近で攫い、海辺で消えたらしいです。彼によるとその後はご令嬢同士でやりとりしていたので、配置に戻るためその場を離れたそうですが…。」
ランヴァルドは妙な違和感がし、会話に突然口を挟んだ。
「そのご令嬢同士は知り合いか?」
「いえ、そこまでは聞いておりません。」
「陛下、どうかなさいましたか?」
「アルミロ、先日のコマス家関連の名簿を今持ってるか?」
「はあ?持ってるわけないでしょう。…町の人々が陛下のご様子を見てますよ。」
「今はそんなのどうでもいい!もしかしたら…。」
そこまで言いかけてから、彼が民衆のほうを振り向くと、わっと歓声が上がる。しかしランヴァルドの目にその姿は映っていなかった。
彼には、民の中を必死にかき分けながら誰かを探している、ルシア・コマスの姿が、遠くにはっきりと見えた。
「すまない、アルミロ。後は頼んだ!おい、報告してきたお前、至急城に戻りコマス領での反乱に関わった貴族名簿を持ってこい!」
「はい!」
「はい?陛下、どちらへ!?」
ランヴァルドは困り果てているアルミロを置いて、広場の先にある海岸へと向かった。




