第八十八話 旅行計画
「さて今日も優斗くんとお風呂ですね」
「まあそうだな」
もはや恒例となっているお風呂だ。
「今日はお詫びの意味を含めて、しっかりと私の体を洗ってくださいね」
「ああ」
そして俺は莉奈の背中を流す。いつもよりも丁寧に。
「ああ、いい感じです」
莉奈は上機嫌で言った。気持ちいいのだろう。
「じゃあ、また体もちゃんと洗ってください」
「相変わらず変態だな」
「え? 何か言いました?」
「いえ、何でもないです」
とはいえ、前回のお風呂でまた耐性でも付いたのだろうか、結構ましになっている。莉奈の体を洗う事、これ自体はまだ大変だが、それでも、恥ずかし!! と思うだけで済んでいるというのは……。
本当に、お風呂に入るたびに、女の体を触ることに耐性ができている。
そして体を洗い終わった後、お風呂に使った。
「はあ、気持ちいいです!!!」
そう言って莉奈が俺に抱き着いた。お風呂に入って早速かよ。
「何で抱き着くんだよ」
「だってー。ひさびさのゆうとくんですもの。裏切られたとはいえ、優斗くんが好きですから!!!」
「あれは本当にごめんな」
「えへへ、気持ちいいです」
莉奈お前胸当たってるぞとは言わなかった。もう莉奈の胸が当たっても平気になっているようだ。そして、俺もを莉奈を抱きしめ、背中をよしよしする。
「優斗くん。いろいろ言いましたけど。大好きです」
「俺もだ。もう、お前を悲しませない。……さっき、莉奈に嫌いですって言われた時、死にそうなほど悲しかった。ああ、莉奈に見捨てられるのはこんなにもつらいことなんだなって。だからさ、もう西園寺綾について知るのはやめる」
「それがいいです!」
そう言って莉奈がさらに強く抱きしめる。
少し時間が経った後、
「さて、優斗くん。これからの話をしましょう」
そう言ってきた。おそらく夏休みの話だろう。
「おう」
「今度なんですけど、今週の日曜日に行きたいところがあるので、その時はお願いします」
「どこに行きたいんだ?」
「内緒です!!!」
「え? 内緒?」
内緒はなんとなく怖い。なんか怪しいところに連れていかれるんだろうか。
「サプライズが大事なんです。こういうのは。まあ、優斗くんのせいで台無しになりかけてましたけどね」
「……それは悪かったって」
反省してます。
「それと、その先ですね。夏休みを有効に使いたいです。さて、旅行行きませんか?」
「旅行? いいな」
「もちろん二人きりです。二人きりっていうところが大事なんですよね」
「まあそりゃあそうだな。考えるだけでかわいそうだ。寛人には悪いが、邪魔になりかねないからな」
「というか、大貫さんが気まずいだけだと思います」
「ふん、まあな」
俺たちのイチャイチャを延々と見せられ、気まずい思いをする寛人。考えるだけでかわいそうだ。
「それでどこに行くかっていう話ですけど、そこがまだ決めかねてて」
「学生の旅行だからあまり遠くじゃない方がいいよな」
いくら莉奈の家がお金持ちとはいえ。
「まあ私が出せるお金にも限度がありますしね、でも海外とかもいってみたいですよね」
「海外!? どこに?」
「イギリスフランスオーストリアドイツスペインとか?」
「全部ヨーロッパじゃねえか。お前英語とか喋れたっけ」
「喋れませんよ。もちろん通訳は優斗くんです!」
「俺も、外国人としゃべれないんだよ」
それに英語ならまだしも、フランス語とか喋れるわけがない。
「まあ、それは置いといて、どこに行きましょうか?」
「そうだな。ベタと言えば、京都沖縄北海道あたりか。でも、全部遠いしなあ」
「まそうですね。まあそれはおいおい話すとして、今日もお風呂でしかできないことしますか」
「またエロい話とか?」
「え? 求めてます? だったら全然してもいいですけど」
「いや、別にしてほしいわけではないが……」
「何ですかそれは。ハグしますよ!!」
「だから何なんだよ」
それにさっきハグしてたし、思い切り。
「……私としては、段々とイチャイチャを増やしたいわけですよ」
「増やしたい?」
「そうです。だって、前と同じじゃ集まらないじゃないですか」
「つまらなくはねえだろ。お風呂なんてのんびりを楽しむものなんだから」
「いえ、私は優斗くんとイチャイチャしたいんです。だから……今日は覚悟しておいてくださいね。それに優斗くん、今日は私に頭が上がらないと思いますし」
「え、ちょ。なんだよ」
だが、莉奈は俺の制止なんて聞いていないような感じで、俺に抱き着いてくる。
いや、それだけならいい。さっきよりも激しく抱き着いてくる。より、エロい感じに。俺でも何を言っているのかわからないが、とにかくそう言う感じなのだ。
俺も嫌という訳ではない。ただ、さっきケンカしたばかりなのだ。とにかく気まずい。その思いで莉奈をはねのけた。
「何をするんですか?」
「ちょっと気まずい」
「え?」
「さっきケンカしたところだから」
「……それだったら早く仲直りした方がいいじゃないですか。優斗くん、おとなしく私に抱っこされてください」
「わかったよ。でも、普通のハグにしてくれ。そう、胸をこすりつけられるとなんとなくこっちとしても気まずい」
そう、断っておく。莉奈の胸は大きいという訳ではないが、やはり女子の胸。俺には刺激が強い。さっきは何ともない風を装っていたが、無理だこれは。
「分かりました。なら、えい!」
そう言って、莉奈が俺の足を蹴ってきた。
「別のアプローチです!」
莉奈が悪戯な笑みを浮かべている。
「ほら、女子の足ですよ」
「何だよお前は、なんでお前は毎回お風呂の時に調子に乗るんだよ」
「お風呂だから、若干そうなるんですよ」
そう言って、莉奈は俺の足を莉奈の足でからみ取った。
「お前さあ」
「ふふふ」
莉奈は反省などしていないようだった。まあ、莉奈が楽しいのならいいけど。
「さて。なら、洗濯機しませんか」
「ああ。あれか」
ここで言う洗濯機とは、二人でふろの中をぐるぐると回って、人工的に渦を作り出すという遊びだ。莉奈の家のお風呂は俺の家のお風呂よりもでかい。結構楽しく行えそうだ。
「じゃあ、行きますよ」
「ああ」
と俺たちはぐるぐるとお風呂の中を回る。
「優斗くん、楽しいですね」
「ああ」
そしてお風呂の水が飛んでいくのを見守る。
楽しい。そう心の底から思った。




