9.前世の私と前々世の私 3
『ん?フィアレアラ?どうしたの?』
「別に死んだ人間が口出しすることではないかと思ったのよ。何世代も経っているのに。」
『まぁ、確かにその通りなんだけど、それだけではないから。』
「何?」
『あなたの存在よ。フィアレアラ。』
「私?」
『あなた、自分の魔力、どう思っているの?』
「普通よりも多い自信ならばあるけど、どうなのか分からない、かな?私、父親の魔力しか知らないから。」
『あなた、それがどういうことか、分かる?』
「まぁ、普通に我が帝国の皇家の五星の魔力よりも多くなりそうだけど、私は、皇族で皇家の直系ではないし、男性でもないから六大公爵家のどこかに嫁ぐのかなぁ?それとも皇家に戻されるのかなぁ?って思ってるわ。叔父皇帝のところには、五星の皇子と皇女がいるし、皇族ならばうちの他にもあるから。」
『あなたの父親はね、あなたのその魔力が誰にもバレないように必死にあなたを守っているのよ。』
「どういうこと?」
『あなたの前世が私で前々世はエリザベートよ。九歳までの記憶しか開放してないけれど、どう思った?』
「二人ともヤバい幼少時代だと思ったわ。」
『エリザベートも私もそしてあなたも、MRの違う異性の双子。父親は皇帝、国王、あなたは皇族男性ね、この世界で一番強い魔力を持つ旧帝国皇族家系五星よ。そして、母親は四星の中でも強い魔力量を持つ女性。四星の双子兄は死産、母親も出産後に死亡。私達三人の共通点よ。
150年前の私の時代に、双子研究をしていた教授が発表しているわ。双子は通常よりも強い魔力を持って生まれてくることを。異性ならばさらに強く。但し、MRの違う双子は生まれてくることがないに等しいからもし授かったら諦めて母親の命を優先すべきだと。』
「知っているわ。私も双子だから。」
『続きがあるのよ。MRの違う双子の魔力は通常のMRと異なるのよ。ほとんど生まれてこれないし、授かったら、母親の命優先だから知られてないし、知られないように隠しているけれどね。人の倫理に関することだから。』
「なんとなく思い当たる。私、父親に魔法を教えてもらわなくてもたいてい思った通りの魔法が使えるから。」
『私達の九歳までの記憶からもっと色々な魔法が使えるようになったはずよ。フィアレアラ。そして、その魔力量は、将来、私やエリザベートと同じくらいになる。努力次第だけど。エリザベートなんて毎日魔力が空々になるまで魔法の勉強をしていたし、私は父親の呪詛のせいで毎日強制的に魔力を使わされていたからかなり多かったけど、あなた、ほとんど何の努力もしてないわ。このままじゃあ私達みたいになれないわよ。』
「…。」
別に困らないし。そんなに多くなくても十分だし。
『傍系皇族皇女に生まれてきた弊害かしら?フィアレアラ。五星のクセに自分が一番になろうとしないなんて。それとも父親に可愛いがられてもう満足なのかしら?
でもね、フィアレアラ、父親があなたを必死でそうやってあなたを隠しているのは、あなたを無事に育てるためよ。皇族の子が皇家の直系よりも強い魔力を持っていたらどうなるか帝国の体質ならば想像つかない?』
「…。」
付く。私は生まれてすぐ、もしくは幼少期に消されていた可能性がある。そして、そうならなかったのは、母親が皇帝の養女の第一皇女だったから。母親が『レアラ』だったから。私が女児だったから。私が生きられるかどうかの未熟児だったから。
そして、何よりも、父親が私を外に出さずに皇族離れ宮に閉じ込めていたから。父が母をとても大切に愛していたことは皆が知っている。そして私のことも溺愛した。母の忘れ形見だからと勉強も魔法も剣術や皇族女性としてのマナーでさえも全て父親に教わった。離れ宮で一緒に暮らす父方の祖父母と父以外の人間を私の父親は私達の離れ宮に入れることはなかった。
フィオナに言われてはじめて気付いた。父は、私にベタベタちゅうちゅうと溺愛することで回りから私を守っていたことを。私の魔力が誰にも分からないように。私が自分で自分を守れるだけの強い魔力を持つまで。
『あなたのその魔力、利用される可能性があるわ。皇帝の妃にして、この世界を支配しようとしそうね。帝国ならば。私の子孫だけど、体質はなかなか変わらないわ。』
「フィオナの子孫って?」
『そのうち記憶を開放するけれど、第50代皇帝エリザベート・F・ヤ・マティスは私の娘よ。先祖返りってなっているけれど、私の娘だから強い魔力を持って生まれてきたのよ。本当は先祖返りなんかではないわ。』
「まさか…?そんなことって?」
『第50代皇帝エリザベートよりも前、第49代セシル以前の皇族の魔力量って知ってる?』
「うん。第50代皇帝エリザベート陛下よりも前の世代の皇族は現在の皇族の魔力の半分くらいしかなく滅亡寸前だったと習った。」
『何故帝国の皇族の魔力が何故そこまで少なかったのかも教えてあげるわ。記憶を開放した方が早いかしら?そうね、そうするわ。私が帝国に留学した頃の記憶の一部ね。いきなり私に全ての記憶を開放したエリザベートの記憶の一部はカットよ。他にもあなたに今必要ない記憶もカットして。私が中等学校一年生だった頃、11歳の誕生日を過ぎた頃くらいまでの記憶の一部よ。どうかしら?』
フィオナの記憶が頭の中に入ってくる。王太孫となったこと、国外外交代表となったこと、留学をしようと思ったこと、留学をしてからのこと、帝国歴史にでてくる女性皇帝、セフィーア、セシル、エリザベートの一番最初セフィーアが皇帝となるまでの記憶と『帝王結界』。