87.フィアレアラの三年生一学期 1
「えっ?フィアレアラ様って第一、第二選択授業は両方体育なのですか?」
今日から三年生の新学期。朝の登校の時に友人達に驚かれる。
「私、帝国の皇族皇女だから、第一選択授業で貴族教育なんて取るわけないし、第二選択授業も魔法授業を選択したら五星は毎日自習学習って聞いたわ。二年生の時の第一選択授業で魔法授業を選択したら最悪に暇だったし。ならば、体育の方がいいと思ったのよ。」
初等学校三年生は、授業の半分が選択授業になる。朝は、自分のクラスに登校する。一時間目は、自分の教室でクラスメートと通常の授業を受けるが、二時間目は、第一選択授業の移動教室で、三、四時間目は第二選択授業でまた移動教室になる。そしてお昼ご飯と昼休みの後、午後からの五、六時間目は再び自分の教室でクラスメートと通常授業だ。
第一選択授業、第二選択授業共に勉強、魔法系を選ぶか体育を選ぶかだ。
「それはそうですが、私達の学年には五星がお二人いらっしゃいますから、第二選択授業は自習学習にならないのではないのですか?」
ソマリリアの質問に友人達はみんなうんうんと同じ反応だ。
「なるらしいのよ。五星はね、他人に魔法を教えることは基本ないのよ。もちろん、他人と一緒に魔法を練習することもないわ。命に関わるからね。別々の教室で四星教師の監視付きで一人だけの自習になるって聞いたわ。ねぇ、リマリーエ。」
「はい。私も使う教室さえも一組と五組で最大に離すと聞きましたわ。」
「えっ?マジですか?ずっと一人ぼっちで自習学習なんて、そんなの最悪ではないですか?」
「でしょ?体育の方が100倍いいわ。」
「私は、魔法の自習学習時間なんて最高だと思っていますわ。私、今、一生懸命魔法の技術を磨いていますから。」
「リマリーエって魔法に関してすっごく真面目よね?クノハ先生と同じね。あの方も子供の頃からずっと魔法ばかりだったって聞いたわ。しかも魔法指導するのも好きなのよ。クララ王女様なんて毎日寝る前に魔力空々にさせられているのよ。お気の毒に。」
「フィアレアラ様は違うのですか?クノハ王義母殿下は、フィアレアラ様の魔法の先生でもあるのではないのですか?」
「私?私とは雑談ばかりよ。最近は(フィオナとエリザベートにクララ王女様の魔法指導を任せて)話すこともあまりないからうたた寝することもあるわ。」
「マジですか?せっかくのクノハ王義母殿下の魔法指導の時間が雑談とうたた寝なのですか?もったいない…。私が代わって欲しいくらいですわ。」
「自主トレしているから十分なのよ。クララ王女様が頑張って練習しているから邪魔しないように大人しくしているのよ。」
「クノハ王義母殿下もフィアレアラ様には特に教えなくても何でも出来るから大丈夫とはおっしゃってましたが、逆に心配になりますわ。本当に何もしてないように思いますから。」
「…。
多少の努力ならばしているけれど…、そうね、私の『褌』は、二本締め込みだから厚いのよ。」
リマリーエにはそう言ったが、なんとなく私ってサボりのダメな奴みたいに感じてしまう。もちろん剣術の稽古や家庭教師の勉強はしているし、魔法だって練習している。とても難しくて半年以上かかったが男児になる練習もして出来るようになったし、今も続けている。だけど、フィオナの記憶のおかげで何をやっても復習程度なのだ。すぐ終わる。剣術もフィオナに任せる時間帯がある。
『何?フィアレアラ。不満なの?超贅沢ね。私達の知識に何の文句があるって言うのよ。』
私の頭の中でフィオナがそう言っている。
『【フィオナの言う通りよ。私達が子供の頃に一生懸命努力した力を何の努力もしないで手に入れることが出来るのだから、素直に喜んで私達感謝すべきだわ。魔力だってあなたが寝ている間に私達が超鍛えてあげているのに。】』
エリザベートもだ。それはそう、それはそうなんだけど…。
『【ああ、分かったわ。フィオナが記憶を解放し過ぎたからね、きっと。何の努力もしなくていいなんて子供のフィアレアラにとってはつまらないのね。努力して出来るようになった喜びをフィオナが奪ったのね。可哀想なフィアレアラ。】』
『私の時にいきなり全部開放したエリザベートに言われたくないわ。』
また私の頭の中であの二人は言い合いを始める。自分の前世と前々世だが、五月蝿い人達だと思う。