88.フィアレアラの三年生一学期 2
私の頭の中で私の前世と前々世が言い合いを始める。いつものことだからだいたい無視する。
『【ああ、私、いいこと考えたわ。】』
エリザベートのいいことはあまり信用出来ない。
『【…いいことなのに、失礼な子孫ね、フィアレアラ。名案よ。とっても素晴らしい名案が思い付いたのよ。私達の代わりにあなたがクララに魔法指導するなんてどうかしら?】』
えっ?私?まだ子どもの私が誰かに魔法指導するなんて考えたこともない。
『【そうよ。クララは今魔法の技術を上げているところだから私とフィオナが特別に魔法指導しなくても大丈夫なのよ。だったら、あなたが自分の技術を磨きながらクララに魔法指導すればいいのよ。あなたの魔力の節約にもなるし。まっ、節約する必要もないけれどね、暇潰しにクレアと無駄話するよりもいいと思わない?】』
悪くはないけれど、何をどう指導すればいいのか分からない。
『クレアと一緒にクララの魔法指導するのがいいかもね。クレアは子供の魔法指導に慣れているから上手いわよ。アリアの娘のティーラと孫のアクアリアの魔法の先生していたのよ。ああ、後、カエサルにも教えていたわよ。今世もレティーア王女の魔法の先生だったらしいし。』
カエサル…。エリザベート皇帝陛下の皇子で第51代皇帝陛下だ。私の宮家の祖はカエサル皇帝陛下の第三皇子だ。
「クノハ先生の補助したらいいってこと?」
『そうよ。普通の五星にどう指導したらいいのか学ぶのは必要よ。私達はね、相手の魔力量が分かるから、つい相手にとって最適な魔力量での指導をしてしまうのよ。でもね、普通の五星はそんなことが出来ないからそれを次の世代に伝えるのが難しいのよ。アリアがそうだったわ。アリアは自分は何でも出来るけれどそれを異母妹達に教えるのが難しいって言っていたわ。クレアはね、自分で努力して技術を磨いた子だったから、子供の魔法指導が凄く上手だったのよ。』
おお、なるほど…。フィオナやエリザベートの指導では当のその本人は大丈夫だけど、次世代の指導が難しくなってしまうのか。
『そういうことよ。だからね、子供の魔法指導ならば、アリアよりもクレアの方が上手だったのよ。まぁ、でも、アリアはまだマシよ。下手だったのは、エリザベートよ。エリザベートはアリアに言われたことをそのまま丸覚えして自分で工夫することをしなかったから、カエサルへの魔法指導は壊滅的に下手くそだったわ。しかも時間に追われる超忙しい皇帝だったからね、幼いカエサルが出来ないとイライラしてね、怒ってばかりいたわ。「何故出来ない、すぐに出来るようになれ、私は忙しいのよ。」って怒鳴るから、カエサルは母親が怖くて泣いてばかりいたわ。クレアはそんなカエサルが可哀想でね、帝国に遊びに行った時にはカエサルに魔法指導していたわ。クレアの息子のクラウドとカエサルは本当のきょうだいみたいに仲がよかったし。帝国のサーンバンメ公爵家に嫁いだ私の第三王女のカレンレイアにも息子が一人いてね、カレンの息子のレイガドルと、クラウド、カエサルは三人仲良く遊んでいたわ。』
へー。帝国と王国がとても仲良くしていた時代ね。きょうだい、いとこ、親戚ならばそうよね。今と全く違うわ。
『【フィオナの孫の「レアラ」の時代まではとても仲良くしていたのだけどね、レリーリアラちゃんが亡くなって、気落ちしたフィオナは帝国に行かなくなったのよ。レリーリアラちゃんが亡くなったその日にね、フィオナは帝国にいたから。もし自分が帝国に行ってなかったら、レリーリアラちゃんは亡くならずに済んだかもしれないって自分を責めてね。その辺りから親戚関係も薄くなっていったのよ。以前のフィオナならば、みんなを連れて王国、帝国間を一瞬で移動出来たけれど、それがなくなったから。】』
『帝国に全く行かなかったわけではないわ。セシルのところには行っていたわ。』
『【そうね。セシルのところ限定、いつもの曜日のいつもの時間限定でね。妃にした義務のように。セシルはいつも切ない顔をしていたわ。フィオナはエリザベート達に会うことがなかったから。】』
『…。』
『【帝国と王国の両方を守るのが欲張りなのよ。でもね、少なくともフィオナが現役の頃は大丈夫だったわ。後は、子孫達次第。人間誰でも年を取るからいつまでも現役で自分の思い通りにはならない。未来を子孫に任せてね、老人は引退するしかないのよ。】』
『引退なんてしないわ。私は私の思い通りにする。私は私の大切なものを守り未来を創る女なのよ。年を取って死んでもまた生まれ変わってね。』
ふふっ。強いフィオナの信念が伝わってくる。物心ついた時から唯一の王孫として王国を守ることを当たり前に思って努力した子ども時代。超真面目な優等生王孫王子フェリオ・マ・アールだった頃、誰にも負けたくない、常に自分が一番であり続けると、努力し、完璧を目指していた。
私とは全然違う。目立たないように生きてきた。努力しないように言われていた。フィオナはそんな私に自分の記憶を解放して自分が死んだ後の子孫さえも自分の思い通りにしようとする。自分の信念を貫き通すために。
「そうね。私、フィオナだったわ。簡単に何でも出来るって思っていたけれど、自分でも努力しないとね。クララ王女様の魔法指導もやってみるわ。自分の思い通りにするためには記憶だけに頼ってはいけないから。」
私も私の思い通りにする。来年、帝国に戻った時のために。叔父上様皇帝陛下にはもう負けない。自分よりも下の五星の命令なんて聞くつもりはない。




