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83.二年生学年末休み SIDE:リマリーエ 1

三学期末の学年末休み、私はサザリーナンダ公爵領に行くことになった。今回は移動なしの全部遊び。お父様からクノハ王義母殿下が転移魔法で連れて行ってくださると聞いている。


「さぁ、行くわよ~。南国バカンスに~。」


フィアレアラ様はそう言って、クノハ先生、クララ王女様、私の三人に多種多重結界を一気に張った。そして目指すサザリーナンダ公爵領、マナリーにあるうちの別荘に一瞬で移動した。


「…凄い。マジ一瞬でうちの別荘の前…。ってか、フィアレアラ様の結界と転移魔法で移動だったんだ…。クノハ先生だと思ってましたわ。」


クノハ先生は、都合上私のお父様にはクノハ先生ということになっただけで移動は全部フィアレアラ様だとおっしゃった。フィアレアラ様の魔力は普通ではないからと。確かに普通ではないとは思うが、どう普通ではないのか、だからどうなのかという違いが私には分からない。立ち話では説明出来ないとおっしゃっていたが、それはその通りと思い、まずは別荘の中にご案内した。


クノハ先生のお話を詳しく聞きたかったが、その前にフィアレアラ様と釣りに行く。のんびりと餌釣り中にフィアレアラ様から第二王子ハウル殿下の話を聞く。クノハ王義母殿下が私に魔法指導をしてくれる理由を。


五星第二王子ハウル・マ・アール殿下。六歳。母親は、分家サザリーナンダ出身の第二王妃タミル・マ・アール陛下。第一王子ソウル殿下は四星。王位を継ぐのは王家直系五星ハウル第二王子殿下だとの理由で後見人は母親の実家分家サザリーナンダではなく本家サザリーナンダになった。つまり、私のお父様がハウル第二王子殿下の後見人となったのだ。


ハウル第二王子殿下が生まれた時、私のお父様はお祖父様の爵位を継いだばかりだった。跡継ぎとなる男児が欲しかったお父様は娘の私達よりもハウル第二王子殿下を可愛がった。

おそらくお父様はそんなことはない娘を可愛いがっていると言うだろうが、幼い私はそう思っていた。お父様は、食事の時などにいつも第二王子殿下のお話をなさっていたから。

寝返りが打てるようになった、ハイハイが出来るようになった、離乳食をたくさん食べた、一歩歩いた、二歩歩いた。

まだ三歳だった私が、『自分の父親が自分達ではなく他人をひいきするイヤな思い出』として覚えているくらいウザいほど話していた。


ハウル殿下が一歳になった頃だった。ランセル国王陛下の異母妹レティーア王女殿下の降嫁の話が出た。お父様は一番に賛成したらしい。王家にはハウル殿下がいらっしゃるから降嫁に問題ないと。

四歳だった私は、『まただ。またお父様は第二王子殿下ばかり可愛がる』と思ったことを覚えている。


ハウル殿下の三歳のお誕生日パーティーに行った時のことだった。お誕生日パーティーには毎年家族揃って出席していて、出席者の中で一番最初にお祝いのご挨拶をするのがいつものことだった。

その年も私達が挨拶に行くと、ハウル殿下は、無邪気に私のお父様に抱きつき、抱っこされた。その後、四歳年上のカナリーエお異母姉様もハウル殿下を抱っこしていた。そして、ハウル殿下は当たり前のように私のところにも抱きついてきた。と、その時、あれ?っと思った。ハウル殿下は王家王族五星なのに感じる魔力量が少ないと。もちろん、その時に参考にしたのは、四歳年上のカナリーエお異母姉様と二歳年上のクララ王女殿下だ。クララ王女殿下の魔力量は私には分からないほど多く感じた。この多さこそがクララ王女殿下が王家王族五星である証だと思っていた。四歳年上の異母姉よりも全然多いと。

なのに、ハウル第二王子殿下は少ない。私の半分もない。クララ王女殿下と同じ王家王族五星ならば、私よりも三歳年下であってもハウル殿下の方が多いはず、少ないなんておかしいと思った。そして帰宅した後そのことをお父様に言ったら、、、叱られた。


幼い私は、またお父様はハウル第二王子殿下ばかりひいきすると思った。本当のことを言って叱られるなんて納得いかなかった。そして、次に会った時にハウル殿下の魔力量を今度はちゃんと確かめた。その上でお父様にやはり少ないことに間違いない、ハウル第二王子殿下の魔力量は、私の半分もないと言ったら、、、今度はめちゃくちゃ叱られた。


お父様もハウル第二王子殿下も嫌いだ。王子だからって弱いくせに強いと褒められるハウル第二王子殿下も褒めるお父様もバカだと。そして本当のことを言って叱られるくらいならばもう気にしない。無視してやろうと決めた。


その後、第二皇子ハウル殿下の魔力量は少ないのではないかと度々ウワサになっていた。私はやっぱり私の感じた通りなのに、何故お父様は認めないのか不思議だった。家系によって魔力量が違うのは当たり前で、それは恥ずかしいことではないとお父様は言っていたくせに。


私は、私よりも魔力量の少ない五星であるハウル第二王子殿下は、『ナンダン王族家系五星』でないかと思っていた。何故ならば、お父様が言っていたからだ。『我が一族から旧マ・アール家系五星よりも魔力量の少ない五星が生まれたら、それは失われた我が一族の本当の家系五星であるナンダン王族家系五星の先祖返りかもしれない。古に失われた我がサザリーナンダの家系五星がもう二度と失われることがないように大切にしないといけない。』と。


国王ランセル陛下の母親は私のお祖父様の異母妹だ。つまり、本家サザリーナンダ出身。第二王子ハウル殿下の母親は分家サザリーナンダ出身。ならば、私よりも弱い魔力の五星であるハウル第二王子殿下は先祖返りの『ナンダン王族家系五星』なのではないかと考えるべきなのに、国王陛下もお父様もそれを認めないなんて、間違っていると思った。お父様は、『ナンダン王族家系五星』のことをあれだけ私に諭しておいて、何故第二王子ハウル殿下を王家王族家系五星と偽るのか理解出来なかった。

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