76.サザリーナンダ公爵領 3
フルーツ園からすぐ近くの牧場に移動する。今日のお昼ご飯は、牧場でバーベキューだ。自分たちで用意された食材を焼く。結構楽しいので私は、バーベキューが好きだ。大人のクノハ先生には最高級の古酒を用意してある。子供の私には分からないが、オーナーが特別なお酒だと言っていた。
フレ:「ノーストキタで見た牛とは種類が違うのね?」
クハ:「あっちは主に乳牛よ。サザリーナンダは肉牛で。」
フレ:「知りませんでした。サザリーナンダは(フィオナの記憶にあまりないから)分かりません。(エリアノーラ、レノファ、シャルロットに)任せていました。(嫡男も)旧・マアール五星だったので。」
リマ:「…何のことですか?」
フレ:「昔の復習?リマリーエは、サザリーナンダの旧マ・アール五星の祖が誰なのか知ってる?」
リマ:「知りませんわ。ですが、旧マ・アール家系は、元々東の公爵家イーデアルの家系五星だったことは知ってますわ。サザリーナンダの本当の家系五星は、ナンダン王族家系五星で、古に失われてしまったと。」
クハ:「そうよ。リマリーエ。ならば、ナンダン王族家系五星がどのくらいの強さの五星なのかは聞いているかしら?」
リマ:「はい。ワントゥン公爵家系五星よりも下ですわ。各公爵家系五星の強さは、旧マ・アール王族家系>ワントゥン公爵家系>ナンダン王族家系>ターナル王族家系>トーキタ王族家系の順だと聞いています。
我がサザリーナンダは、今、旧マ・アール王族家系五星ですが、一族に旧マ・アールよりも下、トーキタよりも上の五星が生まれてきたら、その五星は、サザリーナンダの本当の家系五星であるナンダン王族家系の先祖返りの可能性が高いらしいです。先祖返りはめったにないことですから、旧マ・アールよりも弱いからといって蔑ろにしてはいけない。古に失われた我がサザリーナンダの家系五星がもう二度と失われることがないように大切にしないといけないと聞いています。」
クハ:「まぁ。偉いわね。リマリーエ。私もその通りと思うわ。国家はね、強い五星だけがいればいいのではないわ。各公爵家系五星がいないと結局国が維持出来なくなるのよ。家系五星を一つ失うと国家として重大な損失よ。そして失われた家系五星の復活は、将来における大きな財産になるわ。」
リマ:「はい。」
クハ:「リマリーエは、一族で一番強い五星が爵位を継ぐことは分かるわよね?ならば、例えばよ、今、あなたに異母姉がいるけれど、将来、異母姉に先祖返りのナンダン王族家系五星の子供が、あなたに旧マ・アール五星の子供が授かったとするわね。一族で一番強い五星は、あなたの子供の旧マ・アールよ。今の法では、あなたの子供が爵位を継ぐ。だけど、サザリーナンダの本当の家系五星であるナンダン王族家系五星が爵位を継ぐことも正しい。
あなたは、異母姉の子供であるナンダン王族家系五星と自分の子供の旧マ・アール五星のどちらが爵位を継ぐべきだと考える?」
リマ:「難しい問題ですから、断言は出来ません。ですが、旧マ・アールは、東の家系五星です。年齢や性別が合うならば、旧マ・アールは東に帰り、南はナンダン王族家系五星が爵位を継ぐべきだと考えます。いきなり、は、難しいと思いますが、そのうちそうなることが正しい気がします。」
クハ:「最高よ。リマリーエ。気に入ったわ。うちの子にならない?私があなたを立派な五星に育ててあげるわ。あなたはいずれ我が国を支える五星になるのよ。
…あれ?
ちょっと待って。
ならば、もしかして王族五星のうちの子になるよりもサザリーナンダ公爵の方がいいのかしら?
…そうね。
よく考えたら、サザリーナンダ公爵の方がいい気がしてきたわ。
そうだわ、そうしましょう。
あなたは異母姉に勝ってサザリーナンダ公爵になるのよ。魔力量は下の子供は不利だけどそんなの関係ないわ。実力勝負よ。私があなたを異母姉に負けない五星に育ててあげるわ。やるわよ、リマリーエ。私に全部任せなさい。」
フレ:「お待ちください。クノハ先生。リマリーエが困っているではありませんか。リマリーエの異母姉は四歳も年上なのです。よほどの差がない限り異母姉が嫡子ですから。」
クハ:「今からその余程の差をつけたらいいのよ。ねぇ、リマリーエ。少し考えてみてくれないかしら?あなたの父親には私から言っておくわ。嫡子を決めるのを待って欲しいと。
…いえ、待って。
やっぱり止めたわ。嫡子の話はなしよ。私、もっといいことを思い付いたわ。
リマリーエ、あなた、私の父上の…、間違えたわ。フィアレアラ皇女様の恋人になるなんてどうかしら?
将来、父上の…、じゃなくて、フィアレアラ皇女様の子供を一、二人生むことをオススメするわ。」
リマ:「へっ?」
フレ:「お止めください。クノハ先生。めちゃくちゃなことを言わないでください。フェリオに叱ってもらいますよ。
ごめんね、リマリーエ。クノハ先生はすぐそんなことばかりを言うのよ。本気にしなくていいからね。不可能だから。」
クハ:「…。父上に説教されるのは遠慮いたしますわ。ごめんなさいね。リマリーエ。全部なしでお願いするわ。」
リマ:「はい。わかってますわ。」
クハ:「はぁ~。残念ね~。名案なのに。失敗してばかりだわ。父上をその気にさせるのは難しいわ。」