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55.公爵令嬢リマリーエ 1

第一王子殿下のエスコートでパーティー会場に入ってきた帝国からの留学生フィアレアラ・マティス皇女殿下。

わざわざ留学なんてしなくていいのに。何のためにうちの王国にきたのだろうか?あの皇女。気に入らない。


私の名前は、リマリーエ・マ・サザリーナンダ。八歳。MR五星。あの留学生皇女殿下とは同い年だ。


歓迎パーティーが始まってすぐ家族揃ってあの皇女に挨拶に行く。

本当は、挨拶なんてしたくないが、仕方ない。彼女と私は同い年だ。新学期になれば、いやでも毎日彼女と顔を合わせないといけない。挨拶を交わし、魔力勝負を挑む。最初から彼女の歓迎パーティーでやってやろうと思っていた。理由?彼女が気に入らないからに決まっている。彼女が我が王国に来たせいで私が一番でなくなってしまう。私の学年に『皇女』なんて要らない。


周りの大人は失礼だからと止めろと言っているが、強くは言っていない。なんとなく、やれやれ、みたいな雰囲気だ。よし、やってやる。己の魔力には自信がある。あの皇女に恥かかせてやるわ。


最初から全力であの皇女を潰しにかかる。なのに、彼女は平気だ。悔しい。全然敵わない。挑発までされた。


「あなたは五星の勝負を分かってないのですか?己の力の分からない五星が一番愚かだと。降参することは恥ではありません。再起不能にさせられるまで降参しない方が恥なのですよ。」


「煩い。」


周りの大人が私を止めはじめた。降参しろと。分かっている。私の負けだ。だけど自信満々で勝負を挑んだ手前、退くに退けない。


「ごめんなさいね。五星の勝負だから再起不能にさせてもいいのだけど、同い年のご令嬢にそんなことをしたくないから、気絶してもらうわね。お休みなさい。」


一瞬で気絶させられてしまったようだ。そして、あの皇女の回復魔法で目を覚ました。私は、彼女に横抱きにされていた。


『何この回復魔法。ポカポカ温かくて、安心出来て心地いい。めちゃくちゃ気持ちいい。幸せ~。』


私は、彼女の魔力に酔ってしまった。こんなに膨大で極上の魔力なんて初めてだ。凄い。凄くいい。もっともっと彼女の魔力を感じていたくて、彼女をぼ~っと見てしまう。


私の視線に気付いた彼女は、慌てて私を下ろした。そしてみんなに聞こえないように私の耳元で囁いた。『ごめんなさい。抱っこなんて恥ずかしいわよね。私が悪かったわ。こんな私だけど仲良くして欲しいわ。私達同い年だし。』


どくん。


そう囁かれて心臓が跳ねた。


どくん、どくん。


何故か彼女にドキドキしてしまう。顔も真っ赤になり、熱い。


「帝国の皇族皇女殿下だけあってとても強い魔力でした。私の負けです。ごめんなさい。」


私は彼女にそれだけ言って赤い顔のまま走って逃げた。その後も時々彼女に見つめられる。止めて。私を見ないで。ドキドキするから。赤くなる顔を見られたくなくて、そっぽを向く。


もしかして、私、彼女を好きになった?

いやいや、そんなはずは…、そんなはずは…。

ない、はず?


でも…。


本当に?

本当に好きになってない?


大丈夫か、私?

相手は、私と同い年の帝国の皇女なのよ?

『皇女』よ?

『女児』なのよ?

そんなこと…、ありえない…。


だが、少なくとも、私は、もう彼女を気に入らないなんて思っていないことは確かだった。



…………………


あの歓迎パーティーから約二週間経った。今日はクララ王女殿下のお誕生日パーティーだ。私とフィアレアラ皇女殿下との魔力勝負は、みんな知っている。私は、フィアレアラ皇女殿下に自信満々で挑んで、完敗したのだ。


…嫌だな。


パーティーに行きたくない。私はどんな顔をして来ている他の令嬢達に会えばいいのだろうか?フィアレアラ皇女殿下とも。殿下は、私に何か言ってくるのだろうか?


行きたくないけれど、行かなければ。明後日から新学期で、学校が始まれば、どうせみんなと会うことになる。同い年のフィアレアラ皇女殿下とも。ならば、むしろ今日のパーティーを欠席する方が新学期を迎え辛い。


お誕生パーティーが始まってすぐ、クララ王女殿下はパーティーにきていた私と同い年の令嬢を二人フィアレアラ皇女殿下に紹介している。

リップル伯爵家の四星令嬢ソマリリア、ジューンドート子爵家の三星令嬢ナノハだ。

私は最初遠巻きにそれを見ていた。


フィアレアラ皇女殿下は、その二人の令嬢に友人になって欲しいと言っていた。そして、学校を案内して欲しいと頼んでいた。


えっ?私は?私だってフィアレアラ皇女殿下と同い年なのに。私だってフィアレアラ皇女殿下と友人になりたい。同い年の令嬢達に取り残されてしまうなんて嫌だ。私は、堪らずその会話の中に強引に入っていった。


「フィアレアラ皇女殿下。私、殿下と同い年ですから、初等学校のご案内ならば、私にお任せしていただいてもかまいませんわよ。」


「えっ?」


フィアレアラ皇女殿下は驚いている。そして、誰も私がそんなことをいうなんて思わなかったらしく、クララ王女殿下も、令嬢達もみんなびっくりして私を注目している。


「ですから、私がご案内致します。」


恥ずかしくて顔が赤くなる。まだみんな何も言わないで固まっている。


「何か問題でもありますか?留学中の皇女殿下のご案内ならば、我が国の公爵家の者がして当たり前ですから。」


注目されて恥ずかしい。顔はますます赤くなる。うつ向き気味にチラチラフィアレアラ皇女殿下を見る。


「よろしくお願いいたします。リマリーエ様。」


「リマリーエですわ。『様』は要りません。フィアレアラ皇女殿下。」


「私も『皇女殿下』は要りません。この国では、初等学校の児童は皆平等だと聞きました。なので私も、私を特別扱いしないで欲しいとお願いしたのです。」


「ならば、学校ではそうさせていただきますわ。ですが、ここは王宮ですから『フィアレアラ皇女殿下』とお呼び致しますわ。」


それから私はパーティーの間中、フィアレアラ皇女殿下の近くにいて、いろいろ話した。去年のクラスのことや先生方のこと、学校行事等を。私は、新学期が始まる前に彼女の友人になることが出来た。

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