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42.王族クノハ 7

「そこから先にあの二人がごちゃごちゃと私の頭の中で言いたい放置です。でも、フィオナは今必死なのです。この国の将来がヤバいから。私が言うのも何ですが、次世代の若い旧帝国皇族家系五星が先生の孫王女たった一人なんて絶望的に近いです。今、フィオナとエリザベートが必死で先生の孫を鍛えてますが、放っていたら、私の叔父皇帝のところの皇子に負けますよ、先生の孫。魔力量は彼女が少し上ですが、彼女には技術力がありませんので。」


「そうですね。クレアレイアの記憶を取り戻した今、かなり絶望的に思っていますわ。今後の我が国の将来を。」


「先生がフィオナの娘のクレアレイアならばフィオナの気持ちがお分かりかと思います。フィオナは、旧帝国の滅びの原因となったエリザベートのために帝国の将来を守りたかった。セフィーアの時代の帝国は、今では考えられないくらい皇族の魔力が少なかった。半分以下。旧マ・アール五星よりもちょっと上くらいです。直系のセフィーア、セシルはまだマシでしたが、フィオナと問題を起こしたガルクーダなんて底辺でした。ガルクーダが帝位を継いでいたら、まぁ、まず間違いなく帝国は滅びていました。先生はガルクーダの魔力量がどのくらいだったのかご存知ですか?」


「いいえ。ですが、新帝国の皇族の『幹』が欠損していたことは知っています。セフィーア陛下とセシル様の『幹』はエリザベスお祖母様が治したらしいのですが、遺伝子に異常が起きているので子孫には欠損したままで受け継がれてしまうと。


あの頃、帝国の若年旧帝国皇族家系五星は、セシル様とイッチバーン公爵家嫡男アットボンの二人だけでした。


クレアの従兄アットボンの母親は皇族出身の旧帝国皇族家系五星女性で、アットボンいとこ兄上はその欠損したままの旧帝国皇族家系。クレアは、10歳になったばかりの子供でしたがその頃のクレアの魔力よりも少なかったですわ。」


「ガルクーダは、そのアットボンよりも下でした。フィオナがセシルを妃にして、娘エリザベートを皇帝にしたのも新帝国の旧皇族家系五星の魔力減少に引き摺られてこの国の旧帝国皇族家系五星までが減少してしまうからです。ご存知とは思いますが。」


「はい。だから、異母妹エリザベートは一人っ子でした。セシル様は、万が一にもご自身の欠損した『幹』を受け継ぐ『皇子』が生まれてはいけないと、フェリオ父上との子供は異母妹エリザベート一人だけと決めていたと聞いています。

アットボンいとこ兄上も子供は一人だけでした。セシル様もアットボンいとこ兄上も欠損した『幹』の旧帝国皇族家系五星を自分たちで終わりにするため、とおっしゃって。」


「エリザベートの記憶のあるフィオナは、エリザベートの祖国のために帝国再建に協力した。強い帝国を創ることに。セシルもアットボンも欠損した『幹』は自分達の世代で終わらせ、フィオナから正しい『幹』を受け継いだ娘エリザベートを皇帝にした。そして、今の帝国は世界一強い国になりました。


ところが、今度は、フィオナの祖国が危ない状態です。次世代が先生の孫王女たった一人。しかも、彼女はフィオナのように突出した五星ではありません。平均的旧帝国皇族家系五星よりも少し強い程度です。

帝国としては、チャンス到来ですよ。先生の孫王女がいなくなれば、我が帝国の家系五星がこの国から消えることになりますから。

欲張りなフィオナは、自分の国もエリザベートの祖国も両方守りたかったのに自分の国の首を絞めることをしてしまったのです。だから今必死なのです。自分の蒔いた種のせいで自国の将来の危機を招いてしまったのですから。」


「それは、フィオナ父母上だけの責任ではありませんわ。私も、ランセル国王陛下の異母妹王女の降嫁に反対するべきでした。息子、娘、孫のことに後ろめたさがあり、ランセル国王陛下に意見することが出来ずにいましたので。」


「違いますよ。エリザベートの記憶から、フィオナが帝国を見捨てることが出来なかったのが原因です。当時のフィオナの力があれば、帝国の皇家を滅ぼして、帝国を自国に変えてしまうべきだったのです。フィオナにそんなこと出来るわけないですけれどね。


しかし、ランセル国王陛下はいけませんね。あの男に任せていたら、本気でダメですよ。既に手遅れに近いですけれど。セフィーアとガルクーダの父親のシッダールダもダメ皇帝でしたが、セフィーアは、皇太子になって半年くらいで父親を実質失脚させました。先生の息子が国王になった方がいいのではないのですか?子供の戯れ言ですが。」


「息子が国王になったとしても次世代は同じですわ。問題は次世代ですから。

…子供?

殿下とお話ししていたら、殿下を初等学校一年生の子供だとは思えませんわ。フェリオ父上が客観的にお話しになられているような冷めた大人のようですわ。」


「熱くなることなんてありませんから。逆に、大人のエリザベートとフィオナの方が必死で冷静になれないのですよ。なんとかしたい。なんとかしなければ、と。子供の私にはそんな情熱がないのです。


そう言えば、エリザベートが私にバカな提案をしましたよ。私に死んだ振りをして、先生の息子の隠し子王子になれってね。バカかと思いましたよ。何で私が王子にならないといけないのかってね。王子ならば、本体が私だとはバレないかららしいですが。私の体をフィオナに任せたらいいって。めちゃくちゃ言いますよ。あの二人。必死なのは分かりますけど。」


「殿下は、フィオナ父母上のように男児の姿に体を変えられるのですか?」


「フィオナに教えてもらって練習しましたが出来ませんでした。エリザベートもです。体を異性にする魔法はエリザベートも出来ませんでした。幻影魔法よりも難しいと。エリザベートは、フィオナの時も、フェリオの幻影を作ることが難しかったらしいです。なので、フェリオはいつもフィオナの担当でした。」


「そうですか。殿下がフェリオ父上なのでしたら、もしかして、父上のように男性の姿になって、異母妹エリザベートの時のように子孫を遺せないかと少し期待していたのです。当たり前といえばそうですわよね。エリザベスお祖母様ならば、もしかしたら…と思いましたが、やはり誰もそんなこと出来るはずがありませんね。」


「私もエリザベートも出来ませんが、フィオナは違いますよ。フィオナは父親に呪詛をかけられたままみたいです。死んだくせに。」


「へっ?」


「先生は、フィオナが子供の頃、フェリオ王子だったことを知ってますよね?フィオナは父親の呪詛を打ち破る魔力を得るまで王子の姿で生活していました。まさか自分が本当は王女だとは知らないで。」


「はい。知っています。」


「私は、まだ子供魔力しかありません。先生の若い頃や、先生の息子、ランセル国王陛下、フィオナの父親よりも下です。フィオナに体を任せるとフィオナは何もしてないのに私の魔力がフィオナの父親以下しかないせいで私は女児の『レアラ』ではなく男児の『アラン』になってしまいました。」


「…どういうことですか?」


「フィオナは父親の呪詛を解呪していないのです。つまり、フィオナの魂は呪われたまま。フィオナの魂が私の体を支配すると子供魔力しかない私の体は男児になってしまうのです。男児に姿を変える練習はしましたが男児の『証』なんて要らないです。私は女児なのに。」


「つまり、殿下の体をフィオナ父母上が支配すれば、殿下は男の子なのですか?」


「そうです。フィオナが子供の頃と同じです。私がフィオナの父親の魔力を越えるまではそうなります。」


「将来は?殿下が成人年齢になれば、殿下はフェリオ父上のように男性として子孫を遺せるのですか?」


「分かりません。ですが、フィオナが私の体を支配するならば可能性はあります。フィオナ限定ですよ。私とエリザベートは呪詛なんてかけられていませんので不可能です。練習して姿を男性に変えれるようになったとしても見せかけだけです。」


「フェリオ父上に代わってもらってもいいですか?」


「いいですよ。私の魔力もそろそろ限界です。あの二人は容赦なく私の魔力を勝手に使いますから。」


希望が見えてきた。次世代、我が王国の旧帝国皇族家系五星があの子で最後にならないことの。必ず次々世代に旧帝国皇族家系五星を繋ぐことが出来る希望が。

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