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34.王族クノハ 4

「殿下は、エリザベス王太后陛下で、フィオナ王女殿下ではないのですか?」


不思議に思います。こんなに膨大な魔力を持つお方ならば、普通は幻影のあのお二人のように堂々としているはずなのに。殿下は、私と同じで直系ではなく傍系の皇族皇女殿下だからなのでしょうか?私も普段から控え目を心掛けています。傍系の王族なんてみんなそんな感じです。


「二人の記憶ならばありますけど、まだ全て解放されてません。先ほどの話は、フィオナとエリザベスの記憶の一部とエリザベスがそう言っていたのです。

私の頭の中であの二人はいつも喧嘩して言い合ってますから。

アリアが優秀だったのは、フィオナの娘だったからではなく、エリザベスの娘のティアララだったからとか。お互いに自分の娘だから優秀だったって言い合いです。どっちもどっちです。

私は、あんなにワガママで自信家で自由奔放で自分勝手で、それから、それから…。

あっ、また、エリザベスが遠慮なく私の魔力使いました。回復魔法ですね。先生の孫、また魔力なくなってエリザベスに強制回復させられましたよ。五回目ですね。可哀想に。」


「…。大丈夫ですわ。あの子も五星ですから。」


「そうですね。二重結界までは出来るようになりました。今、三重目ですね。エリザベスはずっと彼女の『幹』を掴んだままです。めちゃくちゃ痛いはずですよ、先生の孫。可哀想に。」


…。

それほどなのでしょうか?私だって五星です。魔法の技術に関する好奇心くらいはあります。教えてもらえるならば、私にも教えてもらいたい。私は殿下に聞いてみることにした。


「殿下も『幹』を掴むことが出来るのですか?」


「出来ますよ。私は、エリザベスとフィオナですから。但し、万が一のことがあってはいけないので怖いのです。エリザベスとフィオナの知識があるだけで私には経験がありませんから。」


「私の『幹』を掴んでもらってもよろしいでしょうか?『幹』を私もに教えていただきたいのです。」


「いいですよ。但し、私には経験がありませんので、魔力でもいいのであれば。魔力ならば、『幹』を壊すことはありませんから。」


「…はい。」


「なるべく軽くします。手を出して、私に魔力を放出して下さい。」


「…はい。」


「そうそう、そんな感じです。『幹』は、体の中心のこの辺りです。魔力の源が分かりますか?例えば、相手の魔力を拘束するならば、『幹』を拘束すれば一瞬です。ゆっくり拘束するならば全身から『幹』にかけて包み込むように。少しだけ拘束しますね。先ずは全身から、なるべく恐怖感は与えないようにゆっくりゆっくりと先生よりもほんの少しだけ強い魔力で。」


「ああああああっ。じわじわ締め付けられていく感じがします。」


「申し訳ありません。先生の魔力を拘束するなんて。『幹』の手間でストップしますね。」


「はい。はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ。50歳を過ぎた私にはキツかったですわ。」


「回復しますね。先生の魔力も全て。」


「ああっ。凄い回復魔法です。このような極上の質の魔力は初めてです。」


凄い。普通の私の知る魔力と全然違います。とろけるような極上の質。殿下の魔力をずっと感じていたくなってしまいます。


「ありがとうございます。これで魔力も全て回復したと思います。『幹』は分かりましたか?」


「それが…、まだよく分かりません。申し訳ありません。」


「ならば、普通の指導では時間がかかりますので、一気にいきますね。私は、まだ子供魔力しかありませんが、エリザベスでフィオナなので信用して下さい。次は『幹』を拘束します。一瞬です。すぐに回復させますのでご安心さい。いきますね。」


「はい。あっ。うっぐっ。」


…………………


「先生、大丈夫ですか?先生?先生?」


子どもの声?女の子?アクアリア第一王女様かしら?

目を開けると見たことのない初等学校一年生か二年生くらいの女児が私を『先生』と呼び心配そうに呼び掛けている。


「…?誰?誰かしら?」


そうだわ。アクアリア第一王女様のはずがなかった。アクアリア第一王女様は国王陛下になられた成人女性だったわ。子どもではないわ。


「へっ?フィアレアラです。先生?大丈夫ですか?」


「フィアレアラ?ここは?」


あれ?ここは、王宮?よね?『位置』は、間違えていない。この女の子は誰かしら?キョロキョロと回りを見回す。薄い幻影が二体いる。


「あら?幻影フィオナ父母上?幻影エリザベスお祖母様?何してるのかしら?魔法指導?本体はどこ?」


本体の父母上がいなくて幻影二体が別の知らない女の子に魔法を教えているように見える。しかも若い頃の姿の父母上の幻影。…年相応にすればいいのに。…ん?年相応?あれ?父母上は10年以上前に亡くなられたはず?あれ?あれ?


記憶が混乱する。


何かおかしい。父母上は亡くなられたはずなのに、幻影エリザベスお祖母様と幻影父母上がいる。ありえない。何故なのか分からない。


向こう側にいる女の子も誰なのか分からない。10歳前後?初等学校三年生だろうか?そのくらいの年齢に見える。分からない、分からない。


「先生?大丈夫ですか?本体は私です。フィアレアラです。」


私を『先生』と呼ぶこの目の前の女児が一体何を言っているのかも分からない。幻影フィオナ父母上と幻影エリザベスお祖母様の本体が私の目の前にいるこの子どもだと言う。分からない。分からない。


…記憶がおかしい?のだろうか?

記憶、記憶…。

思い出そうとしているのに記憶が混乱する。私?私は、誰だったかしら?私の名前は?


…私の名前は、クレアレイア・レリ・アール。


父親は、ゴ・リキ・マ・アール王国三代前の国王フェリオ・マ・アール。母親は、帝国筆頭イッチバーン公爵家出身の第二妃クラリス・マ・アール。私は、父王の五星第二王女として生まれた。


…そして、私の目の前にいる女児は?幻影フィオナ父母上と幻影エリザベスお祖母様が魔法指導している向こうの女の子は?ゆっくりゆっくり考える。


…ああ、思い出した。


このお方は、留学中の帝国の皇族皇女フィアレアラ・マティス殿下で、向こうにいる女の子は私の孫のクララだった。


ああ、私は…。


今の私は『クレアレイア』ではなかった。何故もっと早く『クレアレイア』だったことを思い出さなかったのだろうか。私には、やらなければいけないことがたくさんあるのに。


私は…、


かつて私が『クレアレイア』と呼ばれていた頃、一生懸命磨いた魔法の技術をあの子に伝えなければならない。大丈夫だ、今の私でも出来るはずだ。全部覚えている。『クレアレイア』だった頃の記憶は、今、全て思い出した。私は、まだまだやれる。まだまだ頑張れる。『クレアレイア』の人生に満足して眠っている場合ではない。


私は…、


『レリ・アール』を名乗る王族五星として、私の子ども達と孫達の将来を、そしてこの国の未来を守らなくてはならない。


……………………



「先生?」


「はい、はい。大丈夫ですわよ。フィアレアラ皇女殿下。ご心配には及びません。殿下のおかげで全部思い出しましたわ。ふふっ。『幹』の指導ならば、昔、子どもの頃に『幹』がなかなか分からなくてフィオナ父母上に聞いたら、いきなり『幹』を拘束されましたわ。ここだってね。」


「先生?」


「『クレアレイア』ですわ。さっきフィオナ父母上がクノハにお話になられていた第二王女『クレアレイア・マ・アール』です。フィアレアラ皇女殿下。

私、幻影のお二人にご挨拶してきますわね。殿下の魔力もそろそろ限界ではないのですか?幻影二体もなんて。」


「…はい。」


「一緒にあのお二人のところに行きましょうか?」


私は、幻影のお二人に私のことを伝えることにした。

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