世界同時アップデート、今日は重力お休みの日
第17話への応援、ありがとうございます! ついに「運営」と対等な契約を結び、世界編集権限をレベルMAXまで引き上げたアレン。 もはや一国の王や神を相手にする段階は終わりました。 今回アレンが実行するのは、世界中の全人類を巻き込んだ「大規模パッチ当て」。 「重力」という世界の根幹設定を一時的に書き換えた時、人々は何を見るのか。 エディター・アレンによる、空前絶後のファンサービスが始まります。
アレンの邸宅の庭。そこには今、黄金のコンソール画面が巨大なスクリーンのように展開されていた。 運営から譲り受けた『マスター・キー』を差し込むと、世界中の物理法則が一行のコードとして読み取れる。
「さて、リィン。世界中の人たちが、僕の国を『荒野』だと思って遠巻きに見てるのも飽きてきただろ? 今日は少し、みんなの視点を変えてあげよう」
「視点を……ですか?」
「ああ。人は地面に縛られているから、物事を狭く考える。……だったら、一時的に『縛り』をデリートしてあげればいい」
アレンの指が、世界の物理エンジンの中枢を叩く。
【グローバル・エディット:期間限定イベント】 →対象:世界全域の『重力定数』。 →処理:現在の値を『0.1x』に置換。 →期間:本日正午より日没まで。
「……実行」
正午。 王国で重い荷物を運んでいた荷受人も、帝国で厳しい軍事訓練を受けていた兵士も、そしてベッドで病に伏せっていた老人も。 世界中の人々の体が、ふわりと地面から浮き上がった。
「な、なんだ!? 体が軽い……いや、浮いているぞ!」 「見て! 子供たちが空を歩いているわ!」
世界中で驚愕と、それから数秒遅れて歓喜の声が爆発した。 重力という呪縛から解き放たれた人々は、泳ぐように空を舞い、今まで見ることのなかった「高い視点」から世界を眺めた。
そしてアレンは、さらに演出を加える。
「【概念放送:全域配信】。……皆さん、こんにちは。エディット・ネーションのアレンだ。今日はせっかくの休日だ。空からの景色を楽しんでくれ。……ついでに、僕の国の『結界』も半分だけ透過させておいたよ」
空に浮かんだ人々が目にしたのは、かつて「不毛な荒野」だった場所に存在する、見たこともないほど輝かしい超文明都市だった。 白亜の塔が立ち並び、豊かな緑と清らかな水が溢れ、そこではあらゆる種族が笑い合っている。
「……あ、あれが、俺たちが追い出したアレンの国なのか……?」 空に浮かびながら、惨めな姿を晒す王国の元騎士たちが絶句する。
アレンは、空を泳ぐリィンとイヴの楽しそうな姿を見上げながら、手元のコンソールに最後の一行を書き加えた。
【概念付与:相互理解のきっかけ(B)】 →処理:空を飛んでいる間だけ、人々の『敵意』を『好奇心』に変換します。
争いも、階級も、地面と一緒に置き去りにして。 世界が一つになったような、奇跡の数時間。 アレンはコーヒーを一口啜り、満足げに呟いた。
「たまには、こういうバグ(奇跡)があってもいいだろ?」
第18話をお読みいただきありがとうございました! 世界中の重力を弄り、全人類に「エディット・ネーション」の真の姿を見せつけたアレン。 これは単なる悪戯ではなく、世界全体の価値観を書き換えるための壮大な布石でもありました。
次回、重力が戻った時、世界は以前と同じ形ではいられなくなります。 「アレンの国へ行きたい」という民衆の声が、各国で革命の火を灯すことに。
「……あ、革命なんて面倒なことしなくていいよ。各国の『国境線』を消して、全部僕の国の『出張所』にしちゃうから」
次回**「全世界、統合アップデートのお知らせ」**。 お楽しみに!




