第86話 宝物庫
2階に踏み込むとそこは宝物庫だった。
台座がいくつもあり、宝物が載っている。
台座には説明書きのプレートがある。
やけに親切だな。
ひとつ見てみた。
ええと、賭博神の聖杯。
聖杯に入れてサイコロを振ると好きな目が出せるらしい。
賭博神が戯れに作って、軍神に勝負を挑んだが。
サイコロを振った後に地震が起こってサイコロの目が変わって敗れた。
賭博神の聖杯は軍神の持ち物になったようだ。
気に入った武人に授けたとある。
別に要らないな。
しかし、なぜに宝物庫。
「見て見て、綺麗な宝石」
7色に輝いて光を放つ、不思議な色をした宝石だ。
神々しいというより他はない。
売ったら高そうだな。
小前田が宝石に手を触れようとした時、待ったが掛かる。
「それ、呪いが掛かっている」
和銅さんが忠告したが、時既に遅し。
「寒気がして死にそう。やだ、指先から紫に……」
小前田は宝石に手を触れて呻いていた。
しょうがない奴だな。
他にも何人かのクラスメイトが宝物に触っていた。
「『女神の涙』だ、飲め」
「やだ、元に戻らない」
『女神の涙』を飲ますが一向に症状は改善しない。
「私、死ぬの」
「待ってろ俺が助けてやる」
やり直し前の回ではさんざん世話になったからな。
命を一回救ったぐらいでは、足りないぐらいだ。
こんな時こそ俺の出番だ。
辺りを見回して、説明書きを斜め読みする。
しめた。
呪いを解くには。
これだな『浄化の杖』の偽物。
治癒神が地上に降りた時に足を置いた所に木が生えた。
そして、その木から作ったと説明書きにはある。
杖は純白の木で出来ていて、神々しい光を纏っていた。
俺は説明書きを触り『浄化の杖』に手を置いて。
「カタログスペック100%」
一瞬悪寒がして指が紫に染まる。
呪いぐらいなんだ。
前回の苦しさを思えばどうってことはない。
そして、杖は神々しい光を放ち、指先の紫は消えた。
「今治してやるからな」
肘まで紫色に染まった小前田に杖を押し当てる。
光が小前田を包み、紫は綺麗になくなった。
そして、クラスメイト達も治療。
「良美はどじっ子ね。手に入れるアイテムはまずは鑑定よ。使ったら忍者にクラスチェンジする恐ろしいアイテムだってあるんだから」
御花畑が小前田に言った。
「未依子ちゃん言わないで」
「そうだぞ。怪しい所にきたら疑ってかからないと。今回は治療できる物が近くにあったから良かったけど。こんな幸運あるもんじゃない」
「私、あの宝石持って帰りたい」
「こりない奴だな」
「だって幸せを呼ぶ宝石だよ。運勢向上だよ」
「いい所に目をつけたわね。運のパラメーターは上がらないゲームも多いわ。レアアイテムね」
「しょうがないな。待ってろ」
辺りを見回し、よくこんなキラキラのお宝を集めたなと思った。
レプリカを作るのだって大変だろう。
ふと幻影じゃないだろうなと思い立った。
『真実印』を組むと、小前田が触った宝石は、どす黒いオーラが立ち上る石ころに姿を変える。
そういう仕組みか。
それでもカタログスペック100%の前では役に立たないんだけど。
いや本物の宝物になってもらおう。
偽の宝物の数々を見て思った。
これはお宝の山だな。
よし、魔王との戦いに向けてパワーアップしよう。
手始めに呪いを消すか。
偽の宝物を『浄化の杖』で叩いて回る。
そして、説明書きに手を置いてカタログスペック100%をしまくった。
「宝石を本物にしてくれたのね。これで私もシンデレラよ」
小前田は呪われる事になった幸せを呼ぶ宝石を手に入れご満悦だ。
苦労した甲斐があったよ。
「私はその腕輪が良いわ」
腕輪は鈍い色の銀で出来ていて、ルーンと思わしき物が刻まれている。
「えっと、『弟子の腕輪』か。なんか地味な名前だな」
「説明書きには魔法神に弟子入りした大魔導師が授かったと書いてあるわよ」
「まあ良いだろ」
御花畑もウキウキと魔法の制御が上がる腕輪を手に取った。
ちゃっかりしている。
まあ前回に苦労したからな。
このぐらいのご褒美はあっても良いだろう。
武器の大半はクラスメイトに配り、余りは根こそぎアイテム鞄に。
そして上の階に俺達は進んだ。




