第81話 王女さらわれる
俺達は街道で昼食を摂る為に一休みしていた。
「このパン美味しいわね」
御花畑がパンを指で千切って食べた。
「スキルを掛けた」
「やっぱりね」
「万能調味料みたい」
小前田が能天気に言う。
カタログスペック100%は回数制限がないようだ。
いくら使っても魔力も気力も減らない。
私利私欲は良くないが、便利に使わないと。
食べ物を美味くする役得ぐらいあっても良いだろう。
食わないと魔王軍と戦えないし。
前方から村人が駆け込んで来るのが見えた。
「大変だ。モンスターに女房と子供が襲われて」
「みんな行くわよ」
桜沢さんが号令を掛け俺達は現場に急行した。
現場に行くと村人の奥さんと思われる人と子供が狼のモンスター達に取り囲まれている。
うん、少しおかしいぞ。
俺達が駆けつける間に怪我ぐらいするだろう。
そして、俺達を案内した村人の態度が豹変した。
「ふははは、まんまと罠に掛かったな」
村人がのっぺらぼうの怪物になった。
この野郎、モンスターが化けてやがった。
俺は一刀の下に斬り捨てた。
「みんな全力でいくわよ」
桜沢さんが命令を下し、クラスメイトは戦闘モードに入る。
近接職が先手とばかりに狼のモンスターに攻撃を加える。
すると、狼のモンスターはするりと避けた。
「援護お願い」
「「「ファイヤーランス」」」
魔法がモンスターに向かって飛んでいくがひらりとかわされる。
おかしい、さっきからモンスターの反撃がない。
「やばい、時間稼ぎをされてるぞ。残して来た生産職と王女が危ない」
「モンスターの弱点は唐辛子だよ」
和銅さんが『知識の冠』を慌てて被りアドバイスをくれた。
魔法使いがウォーターランスに唐辛子を混ぜて撃つ。
モンスターが避ける事に集中しているため中々当たらない。
俺は樽一つの唐辛子の粉をアイテム鞄から出し御花畑に声を掛ける。
いつカタログスペックの材料が必要になるか分からないから用意しておいたが役に立つもんだ。
「やっちゃって」
「はいよ。トルネード」
3メートルぐらいの竜巻が唐辛子の粉を巻き上げ辺りに撒き散らす。
狼のモンスターの鼻面に粉がかかり、モンスターの苦鳴が聞こえた。
狼のモンスターは鼻面を盛んに擦っている。
クラスメイトの攻撃がモンスターに当たり始めた。
程なくして狼のモンスターは退治された。
奥さんと子供に扮していたモンスターはいつの間にか居なくなっている。
俺は『アミオンの目』で残されたクラスメイトと王女を確認した。
よかった無事みたいだ。
だが、王女の御付の侍女の様子がおかしい。
馬車の中を覗いたが王女の姿は無い。
護衛の騎士も居なかった。
嫌な予感がする。
急いで戻ろう。
「モンスターが来てさ。モンスターよけの柵が役に立たなかったよ。頑張って作ったのに不甲斐なくてごめん」
生産職達と合流すると日野さんが言った。
「みんなに怪我がないようで良かった。強そうなモンスターだったか」
「魔王みたいな奴だった。王女の護衛の騎士が奮戦したのだけど王女がさらわれちまって」
「そうみたいだな」
俺は侍女に声を掛ける。
「王女を探す手掛かりはないか」
「モンスターが手紙を残していきました」
手紙をみると『勇者よ。王女を返してほしくば魔王城まで来い』とある。
丁寧に魔王城までの地図もあるが。
あれ、前に『アミオンの目』で見た場所と違う。
第二魔王城なのかな。
『アミオンの目』でそこを見るとどうやら廃城を改造したらしい。
最上階の王座の間には魔王に似たモンスターが座っていた。
その脇には檻があり王女が閉じ込められていた。
良かった無事だ。
「早く王女を助け出しに行きましょう」
桜沢さんが急かした。
「そうだな。でもこれは勘だが、危害は加えられていない。閉じ込められているだけだ」
「やけに具体的ね」
「とにかくそういう感じがする」
「分かったわ。スキルを使って占いをしたのね」
「その通りだ」
アミオンの目がばれなくて良かった。
だんだんと苦しくなってきている感じだが、緊急の場合は仕方ないだろう。
使わないという選択肢はない。
「今回は完全に油断だな。食事中で和銅さんが『知識の冠』を外していたのも痛かった。村人の正体を早々に見抜けていればな。今度から戦闘には全員連れていくようにしないか」
「ええ、そうね」
改善点は常にある。
段々と進歩していかないとな。
とにかく異世界は油断が出来ない。




