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第13話 市場追跡作戦!

 ――リウ東部の市場にて……


「色んな物があるわね!」

「うん、リウはたくさんの種族が集まるから、普段見られない物がいっぱいあるよ!」

 メルサとレアは楽しそうに隣り合って歩いている。

 よし、ようやく追いつけたぞ。


 道に沿ってずらりと並んでいる露店には、様々なものが陳列している。

 吟遊詩人が歌っていたり、街頭芸人が小さなショーをしていたりと、とても賑やかだ。


 あ、メルサが振り向いて……やべっ!

 危なかった…… 俺はとっさに近くの露店の中に隠れた。


「ちょっ…… 何の用だよ兄ちゃん!」

「すまない、すぐに出る」


 この人混みの中といえ、金髪の人間というのは少々目立つな…… これじゃばれてしまう。

 ここでは金髪は少数派だ。何か手を打たないと。


 ――魔法陣展開 付与 偽装

 ――キィィィィン……!


 俺の下から魔法陣が現れ、俺の体を青白く照らす。

 髪の色がじわじわと黒く変わり、服の質感や色合いも次第に変わっていく……!

 

「え? に、兄ちゃん……? 髪の色が、いや服まで……」

「すまなかったな」

「おい! 何も買わねえのかよ!」


 俺は露店から出た。今の俺は黒い髪、服装もリウっぽい感じに変えた。

 これで見つかることは無いだろう。あ、そうだ。念の為……


 ――魔法陣展開 付与 強化聴覚


「で、次はどこに行く?」

「うーん、お菓子がいい!」

「よし! 行くわよ」


 2人の会話が聞こえるように、これで遠くの音も聞こえるようになった。これで危機をすぐに察知できるぞ。

 メルサを狙う奴は全力で排除しなければ!


 こそこそこそ……


「ここがリウで一番人気な、お菓子を売っている店だよ!」

「はい、いらっしゃい!」


 メルサたちが立ち止まったのは、獣人のおばさんがやっている露店だ。

 ニコニコしていて、一見無害そうに見えるが…… これは調べないと腹の虫が収まらない。


 ――魔法陣展開 解析


 俺の目に魔法陣を浮かびあがらせ、そして例のおばちゃんの方を見る。

 何も怪しいところは見られないが……


「……」

「レア? どうかしたの?」

「今、魔力反応を感じます。 ここには私以外の魔術師なんて……」


 げ、まずい。さすがに感づかれたか……

 俺はとっさに解析魔法を止めた。


「? 無くなった……」

「たぶん気のせいでしょ」

「嬢ちゃんたち、何も買わないのかい?」


 レアはしばらく辺りを見回していたが、やがて元に戻った。

 ふぅ、意外とレアの感覚は鋭いんだな。


「うーん、どれも初めて見るお菓子ばっかりね」

「そりゃぁ、色んな種族が集まる街さ。常に目新しいものばっかりだよ」


「なるほど……」

「メルサ、私がおすすめするものは…… この蜂蜜団子に、ソフル・クッキー。いや、このナッツケーキも捨てがたい……うむむむ」


 レアは自分の世界に入ってしまい、メルサは完全に置いてけぼりだ。ちょっと苦笑いしている。

 今のレアの目はまるで、獲物を選定している猛獣に変わりない。


 ……って俺も菓子に目をつられているじゃないか! 周りを見ないと、周りを。


「じゃあ、そのソフル・クッキーについて教えてくれる?」

「うん! これはね、ソキ茶にすごく合うんだ。フルーツクッキーだけど、少ししょっぱいんだよね」

「へえ……」


「これは人間とエルフの菓子が混ざったもので……」


 生き生きしているレアとは裏腹に、メルサにしては反応が少し薄いな……

 なぜだろう、菓子があんまり好きじゃないんだろうか。


「で、どれがいい?」

「じゃあ…… ソフル・クッキーにするわ」

「はいよ! 毎度あり!」


「私は、あれとこれとそれを全部ひとつずつ!」

 結果的にレアは袋いっぱいのお菓子を買ったようだ。頬を緩め、幸せそうな表情で袋の中をのぞいていた。


「最近は品薄だからね、あるうちに買っておくべきだよ」

「やっぱり、街道が消えてしまったからかしら?」

「うん、幸いここの街には農業地区があるから、飢えはしないけど」


 そうして2人はまた歩き始めた。よし、俺も追うぞ。

 俺は人混みを押し分け、メルサから目を離さないようにする。


「で、次はどこに行く?」

「そうね、特産品があるところに行ってみたいわ。価値があるかもしれないし」

「それなら、こっちの道の方が良いよ!」


 メルサたちは右に曲がって、別の道へと進んでしまった。

 あ、見えなくなってしまった。急がないと、俺は小走りでメルサたちが通った道をたどっていく。

 

「痛っ、何すんだよ!」

「すまない、急いでるんだ」

 

 どこだ? どこに居る? あ、あそこだ……

 メルサたちは広間らしき開けた空間に居たので、すぐに見つけることができた。

 すぐ近くには大道芸人がパフォーマンスをしている。


「まだまだ行くよ~!!」

 

 ゲッ、本気かよ……

 ピエロ姿をしたその芸人は、ナイフ、トンカチ、サーベルといった危険なものでジャグリングを始めた。


 近くを通っているメルサたちは、菓子に夢中なのか気付いている様子が無い。


「そんな物騒なものでやるなよ……」

 何か嫌な予感がする……!


「ほーれ、こっからもっと増やしていくよ~!」

 ナイフを追加で宙に上げたその時だった、辺り一帯に強風が吹き荒れる!


「う!? あ、あわわわっ!!」

 ピエロは体勢を崩してしまい、凶器の一部が地面に突き刺さった!


「どわっ、あがぁっ!」

「おい、危ないぞっ!!」

「……え!? キャッ!」


 クソッ! ナイフがメルサの方に……!


 ――魔法陣展開…… 

 メルサは目を瞑り、後ろに避けようとする。だが、間に合わない。もっと早く魔法を……!


 発動……

 メルサの頭のすぐ前には、ナイフが姿を見せている! 

 辺りが凄くゆっくりに見える。あと少しだ、間に合えっ!

 

 魔法障壁!

 俺はナイフの進路を遮るように障壁を創り出した!

 

 ――キィンッ!

 ナイフは鋭い音を立てて、そのまま地面に落下する。


「え…… 止まった……」

「「おおっ!!」」


 力が抜け、倒れこんでいたピエロは何が起こっているかさっぱり理解できていない様子だ。

 周りからは歓声も上がり、どうやらあのピエロが守ったと思われているらしい。

 安心しろ、ちゃんと後でお前を絞めに行く。


 ふぅ、こういう時に無詠唱ってのは便利だな。


「大丈夫? ケガは無い?」

「う、うん…… 大丈夫だわ。ナイフがひとりでに落ちていったから……」

「まったく…… 防御が間に合ってなかったらどうするつもりだったの!」

「ひぃ…… すみません!!」


 いいぞレア! もっと言ってやれ!


「もう行こう、メルサ」

「分かったわ……」

 メルサの顔には困惑と、そして何か腑に落ちない顔をしていた。

 

(この魔法、ひょっとして…… シュベルト? だけど近くには……)


 よし、順調だな。このままばれないようにするぞ。

 俺はピエロを睨みつけると、そのまま後を追っていくのだった。


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