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閑話 ローザ、絶体絶命!?

 王城の宰相室に、怒声が響き渡った。


「な、なぜだ……! なぜローザ様がいないのだァァァ!!!」


 宰相イグナスは机を叩き、脂汗を流しながら絶叫した。

 机の上には乱雑に広げられた報告書が散乱し、その中には「ローザ姫失踪」と書かれた緊急報告も含まれている。


 王女ローザが、侍女のカーラと共に姿を消した。

 そしてゲオルグはローザの部屋で気を失っている…… 


「一体どういうことだ……!? 城内の警備を突破して脱出するなど……いや、まさか……!」


 イグナスの脳裏に、ある男の顔が浮かぶ。

 元近衛騎士、シュベルト……


「ま、まさかあのガキ……!?」


 あいつがまだ王都に潜んでいたのか? それとも、ローザと何か示し合わせていたのか?

 ありえない……だが、可能性はゼロではない。


「くそっ、すぐに捜索隊を出せ! 王都の周辺を徹底的に探し出せ!」

「しかしっ、もう動かせる部隊など……」


「いいかっ! ローザが居なくなったら、この国は崩壊するのだぞっ!」


 ――この国をこんな惨状にしたのは、紛れもなくイグナスである……

 だが、そんなことは気にかけてもいなかった。


 「くそっ、ローザさえいれば、王位継承権を利用して……ッ!!」


 ――ドンッッ!!

 

 イグナスは歯ぎしりしながら、執務机に拳を叩きつけた。

 それを見た兵士はついに意を決したように顔を上げた。


「当然だ、イグナス。お前がしでかしたことだ……! ローザ様じゃない。お前が責任を取れ!」

「なっ……! 宰相である私にそのような口を利いて良いのかッッ!!」

「もうお前に味方などいない。じゃあな、俺はここを出ていく!」

「……」


 イグナスは静かな部屋でひとり崩れ落ちた。

 (静かになってようやく気付いた…… あれは、民の怒りの声……)


 

「私は、終わったのか…… いや、まだ…… 死にたくないっっ!」

 

 ――ワァァァッ、ッ……!

 民衆の怒号が、もうすぐそこまで迫っている。

 逃げ道など、どこにもない。


 ~~


 

「もう時間の問題でしょうね」

「当然だ。王宮の兵士は嬢様に忠誠を誓っていたのだから」


 私たちはフードを被り、姿を隠しています。

 王宮から出ていくと兵士さんに正直に伝えたら、通してくれました。

 

「革命だ!」

「「うおぉぉぉぉぉっ!!」」


「……早めに脱出したいな。嬢様まで何されるか分からん」

「そうですね。早く冒険者ギルドへと向かいましょう」


 そうして、しばらく人の目を避けながら歩いて行くと、冒険者ギルドの看板が見えた。

 喧騒が絶えないが、ここら辺は大丈夫なようだ。


「これって開いてますか?」

「まあ、取りあえず入ってみよう」

「ごめんくださーい…… ってあれ? 誰も居ない?」


 冒険者ギルドはもぬけの殻だった。冒険者はおろか、受付嬢までいない。

 おかしいですね。さっきまで人が居たような痕跡があったのですが……


「そりゃあ、全員騒ぎを収めにいったからなぁ」

「きゃあっ! 誰!?」 

 

 急に後ろから知らない人が!?

 ――バゴォォォォンッッ!!


「ごふぇっ!?」

「だ、大丈夫ですか!?」

「グフッ…… クリティカルヒットだ……」


 だれですか!? このおじさんは!?

 そんなことより、思わず蹴っちゃいました……! どうしましょう!?


「ゲルツ、因果応報だ」

「そうだな……」

「え? カーラ、この人を知っているんですか?」

「ああ、こいつがシュベルトの旧友だよ」


 カーラはゲルツの方を指さした。

 ローザの視線は慌ただしくカーラとゲルツの間を行き来する。


「え、えぇ!? ご、ごめんなさい!」

「……今のは俺が悪かった。で、カーラ。何をしに来たんだ?」

 

「ああ、シュベルトが行った先を知りたくてな」

「うん、どういうことだ?」


 ゲルツは腹に手を当てながら、ゆっくりと立ち上がった。

 この人が、シュベルトの知人…… 性格が合わなそうな気が……


「ん? お前今失礼なこと考えてないか?」

「え? い、いやそんなことはないですよ?」

「このお方はローザ様だ。この国の王女の」

「……あぁ。今ので全て理解した。シュベルトはレサリアの方へ行ったぞ」


 レサリア? 故郷の方へは帰らなかったのですか?

 迫害を恐れて? 何のために……


「それは本当か?」

「幼なじみの女と共に北の街道へ行ったからな。まさかリウへは行っていないだろう」

「!? 幼なじみ? 女……?」


 ………え? まさか、二人旅っっ!??

 このままだと、シュベルトが他の女性と……! 止めないと!


「カーラ、時間は一刻を争っています! 早く私たちもレサリアに向かいましょう!」

「ほう? そうなのか?」

「さあ、早く!」


 そうして、カーラの腕を掴んで引っ張っていく。


「ふふふ、頑張りたまえ。じゃ、俺はこれで…… あ?」


 ふと、ゲルツの腕が引っ張られる。


「何を言っているんだ? お前も付いてくるんだ」

「……えぇ?」

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