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第9話 帰り道 (ちょっと疲れた。)

「そろそろ良い時刻の様ですね。今日のお茶はここまでにしましょうか。」

 すっと立ち上がった少し背の高いシスターがそう言うと、みんなでお茶会の片付けが始まった。私は戸惑いつつも自分が使ったマグとお皿を隣室の台所に運んだりしていると、奈緒が声をかけてくれた。

 「私が食器を洗うから、由香里はそれをゆすいで。」

 台所のシンクはなぜか2つに分かれていた。その1つで奈緒が食器を洗剤を付けたスポンジで洗い、私はその隣のシンクで奈緒から渡されたマグをゆすいだ。「で、これはどうすれば、、、?」と思っていると、隣の小柄なシスターが私に手を差し伸べた。ゆすいだマグを渡すと、そのシスターはそれを布巾で素早く拭き、それをさらに隣のシスターに渡した。マグを受け取ったシスターはそれを戸棚に収めた。とっさに「ベルトコンベアー」という言葉が思い浮かんだが、まさにそんな感じで、沢山あった食器はあっという間に綺麗に戸棚に収まった。

 学校の鞄を取りに戻り、ふわふわした気持ちの中、忘れ物が無いか確かめつつ奈緒と玄関にゆき、来た時と逆の手順で靴に履き替えていると、前田シスターがクッキングペーパーで包んだお土産をくれた。香ばしい匂いから、さっきのクッキーとわかった。

「今日はとても楽しかったです。またいらっしゃってください。」

 シスターの優しい笑顔でのあいさつに、「ああ、本当なら私の方からごあいさつしなきゃいけないのに。今日はダメダメだ。」と思いつつ、とにかくお礼とお辞儀を一生懸命しつつ、私は奈緒と修道院の玄関を後にした。

 踏み石を辿って門柱を超えたところで、私は振り返ってみた。ついさっきまで警戒していたはずのその建物は、既に私の中で「また訪れてみたい場所」になっていた。

 空を見上げると既に一番星が輝いていた。少し疲れたけど、充実した時間を過ごした気がした。そりゃそうだ。こちとらまさか修道院に連れて来られるなんて思っていなかったのだから。そう思いながら奈緒の方を見た。そうか、奈緒はこれを私に見せたかったのか。

 私は奈緒に感謝した。悪い経験ではなかったし、何より楽しかった気がする。

「今日はありがとう。とても楽しかった。」

「そりゃよかった。」

 私の反応に満足したのか、奈緒はからからと笑った。

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