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もう1人の自分が女だったらどうしますか?  作者: 功刀


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美味しいケーキ

「ケーキ貰うね……」

「あ、うん。はいこれ」

「お皿に載せて持っていくから……はるくんは部屋に行ってて……」

「わ、分かった……」


 美雪にケーキの箱を手渡し、俺は美雪の部屋へと向かっていった。

 そして部屋の前に到着し、中に入ると……


「おお……」


 本当に久しぶりに入ったな。この部屋にくるのは何年ぶりだろうか。

 以前と部屋の様子はあまり変わった様子が無い。女の子らしい可愛い部屋だ。

 そして中は美雪の言った通り暖かかった。


 暖房が付いているし、床にはホットカーペットが敷かれていた。

 なるほど。これは暖かいわけだ。


 しばらく座って待っていると、ドアの向こうから美雪の声が聞こえてきた。


「はるくん……ごめん。開けてくれない? 手が塞がってて開けられないの……」

「あーごめん。今開けるよ」


 すぐにドアを開けると、両手でトレーを持った美雪が入ってきた。

 そしてテーブルの上にケーキの乗せた皿とコップを置いてきた。


「寒かったでしょ……? だから温かいお茶入れてきたよ」

「サンキューな。ありがたく頂くよ」

「じゃあ……食べよっか」

「おう」


 並べられたケーキの前に座り、フォークを手に取る。


「んじゃ頂きまーす」

「頂きます」


 ケーキを切り取って口に入れる。


 ………………


 …………うめぇ!


「おお……マジで美味いなこれ」

「~~~! おいひぃ~!」


 甘過ぎず、程よい甘さで食べやすい。口に入れた途端に甘さが広がって口の中で溶けていく……

 本当に美味しいケーキだ。これは行列ができるのも納得するわ。


 そしてお茶を飲む。お茶の程よい苦味が広がって口の中がリセットされる。

 やべぇなこれ。無限に食えそうだ。


「こんなに美味いならまた買ってこようかな。並んででも欲しくなってきた」

「!! ほ、本当!? また買ってくれるの!?」

「えっ……そんなに欲しいの?」

「……あっ」


 美雪の顔が赤くなっていく。

 なんか珍しい光景を見た気がする。


「その……今のは……ち、違うの! まだ食べたりないとかじゃなくて……美味しかったから何時かまた食べたいってだけで……別にはるくんに買ってきて欲しいとかじゃなくて……」

「そうかそうか。そんなに美味しかったか。こんな上等なケーキは腹いっぱい食いたいもんな~。うんうん、その気持よく分かるぞ」

「あぅぅぅ…………」


 面白いなぁ。こんなにも恥ずかしがる美雪は滅多に見られないし。

 本当にケーキ買ってきてよかった。


「も、もう……はるくんのいじわる……」

「ごめんごめん。だって美雪がそんなに欲しがろうとするなんて珍しかったからさ」

「だってぇ……本当に美味しかったんだもん……」

「確かに美味かったよな。また今度も買いに行ってやるよ」

「本当に……? いいの……?」

「ああ。俺だって食いたいわけだしな。美雪の分も買ってくるよ」

「! あ、ありがとう……!」


 こんなにも嬉しそうな表情をするのならいくらでも買ってくるさ。

 美雪のためならこれくらいお安い御用だ。


「じゃあ……お礼にまたおかず作ってきてあげるね……!」

「えっ。いやいや。元はと言えば日頃のお礼のつもりで買ってきたんだけど。気にしなくてもいいって」

「いいの。本当に嬉しかったし、はるくんにも感謝してるんだよ?」

「いやだから。感謝してるのは俺のほうだよ。美雪も弁当とか作ってくれてるし。だからそこまでしなくても大丈夫だよ」

「私がやりたいから……やるだけだもん。だから、はるくんこそ気にしなくていいよ?」

「う、う~ん……」


 美雪はいつも真面目というか、世話好きといった感じなんだよな。そんな性格だからこそ惚れたわけで。

 つーかこのままだと話が平行線だな。日頃のお礼をしたつもりなのにまた恩が返ってきそうだ。


「じゃ、じゃあまたお願いしてもいいか?」

「うん。任せて……! はるちゃんの分も用意していくから、伝えといてね」

「お、おう。晴子も喜ぶと思うぜ」


 晴子も何だかんだで美雪の作る料理が楽しみなはずだ。晴子の作るのも美味しいんだけど、美雪のは違った意味で美味しい。どっちも甲乙付けがたいぐらい上手だ。

 また楽しみが増えた気がして得した感じがする。


「んじゃもう帰るよ。ごっそさん。今日はありがとな」

「私こそありがとね。こんなに美味しいケーキご馳走してくれて……嬉しかった」

「そっか。喜んでくれたのならなによりだ」


 その場で立ち上がろうとした時だった。


「あっ……」

「……?」


 美雪がこっちに手を伸ばしてきたのだ。

 しかし途中で伸ばすのをやめて止まってしまった。


「…………? どうかしたのか?」

「………………ううん。何でも……無いの……」

「そ、そうか……」


 今のは何だったんだろう。少し寂しそうな表情をしてた気がする。

 まるで……そう、まだ言いたいことがあるかのようだ。


「もう帰るけど何も無いよな? 他に用は無いよね?」

「う、うん……」


 美雪の様子がおかしい。急に元気が無くなった気がする。

 俺が帰ろうとすると寂しそうにするなんてまるで……俺にまだ居て欲しいと思っているんだろうか。

 いやいや。それはさすがに思い上がりだろう。俺がまだここに居て欲しいなんて思う訳が……


 ……いや。そうでもないか。

 そういや美雪の両親は共働きだったっけ。だからいつも家には一人で居ることが多い。料理や家事が上手いのもそのせいだろう。


 俺が帰ってしまうと美雪は親が帰ってくるまで一人ぼっちになるわけか。だから俺にまだ居て欲しいと思ったんだろうか。

 美雪の寂しそうな表情から、そんな雰囲気が伝わってきたような気がした。


「…………あー、そうだな。今日は寒いしもうちょっと温まろうかな」

「……!」

「ずっとケーキ屋で並んでたから寒かったんだよな。手足もまだ冷たいし、もうちょっとここに居ていいか?」

「うん……うん! ならお茶入れなおしてくるね! 待ってて!」

「おう。サンキューな」


 途端に嬉しそうになったな。さっきの考えは当たっていたようだ。

 ならもうしばらくここに居ることにしよう。

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