人気のケーキ
「ようやく買えた……」
俺の手にはさっき手に入れたケーキが入っている箱を握っている。これは駅前にある人気のケーキ屋から購入したものだ。
学校の帰りに急いで立ち寄ったものの、そこには長蛇の列があった。すぐに並んだものの1時間近く待つ羽目になった。
この寒い冬の中、外で待つのはかなりきつかったが、でもこれも美雪のためだと思って我慢した。
ようやくレジまで辿り着いた時にはケーキが残り僅かだった。あと10分……いや、5分遅かったら買えなかったかもしれない。
そういった意味ではラッキーだった。
しかし今日は2個しか買えなかった。できれば晴子の分も用意したかったが、人気商品なためか購入制限があったんだよな。だから今は2人分しか用意できていない。
まぁ2個とも美雪にプレゼントしよう。俺は食えなくてもいいや。
そしてやってきたのは美雪の家の前。
このケーキのことは誰にも言っていない。サプライズプレゼントってやつだ。
きっと美雪も喜んでくれるはずだ。
インターホンを鳴らすと、数秒で美雪の可愛らしい声が聞こえてきた。
『はい……どちら様ですか……?』
「俺だよ」
『!? はるくん……!? どうしたの……?』
「良いもの買ってきたから持ってきたんだ。美雪にあげるよ」
『わ、私のために……? いいの……?』
「つーか寒いから早く開けてくれないか。さっさと帰って温まりたいんだ」
『あ、う、うん……すぐ開けるね……』
すぐに玄関ドアが開かれ、美雪が顔を覗かせてきた。
「はるくん……来るなら連絡してくれたらよかったのに……」
「ちょっと驚かせたくてな。はいこれ」
「……? これは……?」
「駅前のケーキだよ。美雪も知ってるだろ? あの人気店のやつ」
「……!!」
おお。ビックリしてやがる。
「これ……はるくんが買ってきたの……?」
「まぁな。すげー並んでたよ。本当に人気なんだな」
「知ってる……私も並ぼうとしたけど……人が多くて諦めてたの……」
「だろうなぁ」
並んでも必ず買えるとは限らないしな。俺だってギリギリだったんだし。
本当に運が良かった。
「だから俺が買ってきたんだよ。全部美雪にやるよ」
「い、いいの……? 大変だったんでしょ……?」
「美雪も食べたかったんだろ? そのために買ってきたんだから受け取ってくれよ。日頃のお礼みたいなもんだ」
「はるくん……!」
すごく嬉しそうな表情だ。寒いのを我慢して並んだ甲斐があったな。
「でも……私だけ食べるのも悪いし……そうだ! はるくんも一緒に食べない?」
「え? 俺も? 別にいいよ。美雪が全部食べろって。いつも世話になってるんだしさ」
「だって……寒いのに並んでくれたんでしょ……? 私だけ食べるのは悪いよぅ……」
「でもなぁ……」
美雪は優しいな。俺のことを気遣ってくれるなんて。
だからこそ惚れたんだけどな。
「それに、今も寒いんでしょ……? 私の部屋なら暖かいよ……?」
「えっ……それってつまり……」
美雪の部屋に入れるってことか……?
これは予想外の展開だ。久々に美雪がいつもいる部屋にいけるなら……行きたい。
「そ、それじゃあせっかくだからお邪魔しようかな……」
「! うん! 入って!」
「お、おう」
そのまま先導されて中へと入った。
美雪の家に入るのは久々だなぁ……




