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palette  作者: 棠 智果
HEART
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13/22

#05

*just begun


どうにでもしてほしい

今まさに降りた場所から

まだ降りなければならない


そんな ひとつのゆがみ


どうってことないと言えるのは

いつまでだろう



*paint


指先から手のひらへ

まとわりつくような彩りと

鈍い痛み


汚したい

見えるのに そこにない

そのすがたを

すぐにでも めちゃくちゃに

絡み合う色の線と

石油のように滞り流れる極彩の泥で


その色が融けるほど

嬲るように彩りたい



*コンクリート


冷たい曇りの匂い

コンクリートの壁に 雨が染み出す


都会の足音は 何も知らない

隙間の草は 見ている

せまる夕立に 空を仰ぐ


灰色のコンテナのように

横たわる街

むせ返るような曇に

コンクリートは 目を覚ます


上り詰めて

息を吐くように

雨が 音もなく

それは とても遠くから

そして 途方もなく深くから


息をする石が

都会に雨を吐き出す



*怪獣


霧の夜 工場の明かりに

ゆっくりと脚を浸して

両手で 電線を絡め取って

指の間から 零して遊ぶ

鉄塔も 変電所も

コンクリートから丁寧に引き抜いて

すこし お行儀が悪いけど

上を向いて 口の中に放り込む


前歯で 軽い音を立てて折れる鋼鉄

唇を 快く滑る絶縁体

指の間に香る煤煙

廃液も重油も舐め取って


それから 夢の中に還る



*la la la


耳の中に張り付いて 溶けていかない音がある

どうしても分からなくて

渇いた肌に爪を立てたりした


あなたが逃げ出さない理由が

まだ思い浮かばなくて

わたしは悪者になれない

雨の音が傘に煩く

それどころじゃない


あなたの声が溶けない

はやくほかの誰かで

洗い流してしまいたいのに

それがひとりでに

わたしの唄を歌うようになるまえに



*アイスプラント


柔らかな多肉の葉を

きみの白い歯が千切る

分厚く瑞々しい茎を

きみは舌で転がす


銀の雫が光る

アイスプラントの葉

いたいけな水の粒を

粘膜に感じながら飲み込む


緑の株から

壊さないように そっと摘み取る

きみは また

こともなげに口に運ぶ


「どこかの星の いきものみたい」と

奇怪な葉を見つめるきみを

ぼくは見つめるだけ



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