#05
*just begun
どうにでもしてほしい
今まさに降りた場所から
まだ降りなければならない
そんな ひとつのゆがみ
どうってことないと言えるのは
いつまでだろう
*paint
指先から手のひらへ
まとわりつくような彩りと
鈍い痛み
汚したい
見えるのに そこにない
そのすがたを
すぐにでも めちゃくちゃに
絡み合う色の線と
石油のように滞り流れる極彩の泥で
その色が融けるほど
嬲るように彩りたい
*コンクリート
冷たい曇りの匂い
コンクリートの壁に 雨が染み出す
都会の足音は 何も知らない
隙間の草は 見ている
せまる夕立に 空を仰ぐ
灰色のコンテナのように
横たわる街
むせ返るような曇に
コンクリートは 目を覚ます
上り詰めて
息を吐くように
雨が 音もなく
それは とても遠くから
そして 途方もなく深くから
息をする石が
都会に雨を吐き出す
*怪獣
霧の夜 工場の明かりに
ゆっくりと脚を浸して
両手で 電線を絡め取って
指の間から 零して遊ぶ
鉄塔も 変電所も
コンクリートから丁寧に引き抜いて
すこし お行儀が悪いけど
上を向いて 口の中に放り込む
前歯で 軽い音を立てて折れる鋼鉄
唇を 快く滑る絶縁体
指の間に香る煤煙
廃液も重油も舐め取って
それから 夢の中に還る
*la la la
耳の中に張り付いて 溶けていかない音がある
どうしても分からなくて
渇いた肌に爪を立てたりした
あなたが逃げ出さない理由が
まだ思い浮かばなくて
わたしは悪者になれない
雨の音が傘に煩く
それどころじゃない
あなたの声が溶けない
はやくほかの誰かで
洗い流してしまいたいのに
それがひとりでに
わたしの唄を歌うようになるまえに
*アイスプラント
柔らかな多肉の葉を
きみの白い歯が千切る
分厚く瑞々しい茎を
きみは舌で転がす
銀の雫が光る
アイスプラントの葉
いたいけな水の粒を
粘膜に感じながら飲み込む
緑の株から
壊さないように そっと摘み取る
きみは また
こともなげに口に運ぶ
「どこかの星の いきものみたい」と
奇怪な葉を見つめるきみを
ぼくは見つめるだけ




