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表裏の歴史書  作者: qp46


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3/11

パーティ結成

「恩に着る、勇者よ」


カール王の言葉と共に広間の空気が少しだけ和らいだが、話はまだ終わっておらず、むしろここからが本題なのだろう。


「では説明しよう」


カール王は俺達を見据えた。


「現在、人類圏では魔物による被害が増加している」


広間は静まり返り、兵士も貴族も誰一人として口を挟まない。


「街道の寸断。交易路の封鎖。村への襲撃。被害は我が国だけではない」


その声は重く、ただ脅そうとしているのではなく事実を語っているように聞こえた。


「そして、その中心にいると考えられているのが魔王ヴァルグレイだ」


魔王と勇者。改めて聞くと本当にそういう世界らしい。健は黙って話を聞いており、多分何か考えているのだろう。俺も色々考えたいところだったが、正直まだ情報が足りなかった。


「もちろん全てをお二人へ任せるつもりはない」


カール王は続ける。


「王国としても最大限の支援を行う」


それは少し安心できる話だった。勇者だから何とかしてくれと言われるよりはずっといい。


「そして――」


カール王が一度言葉を切る。


「我が娘サリーにも同行してもらいたい」


広間が少しざわついた。王女がいるのは当然だが、同行させるというのは予想していなかった。


その時、勢いよく扉が開き、広間にいた全員の視線が一斉にそちらへ向く。


「話は聞きました!」


元気な声が響き、金髪の少女がずかずかと広間へ入ってきた。年齢は俺達より少し上だろうか。服装はどう見ても高そうなのに、本人はそんなことを全く気にしていないように見える。


「あなた達が勇者ね!」


少女は真っ直ぐこちらへ歩いてくる。


そして。


「サリーです!」


にこっと笑った。


「これからよろしくね!」


俺は思わず瞬きをする。王女。今のが王女。


「サリー」


カール王が額へ手を当てた。


「盗み聞きしていたな」


「盗み聞きじゃありません!」


サリーは即答した。


「たまたま聞こえただけです!」


広間が静まり返る。誰も信じていないし、俺でも分かる。


「扉の向こうで待機していたと報告を受けている」


カール王の言葉にサリーが目を逸らした。分かりやすい。本当に王女なのだろうか。


「気になるじゃないですか」


サリーは開き直った。


「勇者ですよ? 天使様ですよ? 魔王ですよ?」


それはまあ、気になる気持ちは分かる。


「はぁ……」


ため息が聞こえた。


今度はカール王ではない。広間の一角から一人の男が前へ出る。三十代ほどだろうか。騎士だと思わせる雰囲気があった。


「サリー殿下」


男は落ち着いた声で言う。


「またですか」


「またとは失礼ね」


「失礼なのは殿下です」


即答だった。どうやら慣れているらしい。


「キール」


サリーが笑う。


「細かいこと気にしてたら禿げるわよ?」


「お気遣いありがとうございます」


全く感謝していない声だった。


「ですが結構です」


「ほら」


「何がでしょうか」


「まだ禿げてない」


「そうですね」


真顔だった。サリーは楽しそうなのに、キールは全く表情を変えない。それなのに妙に息が合っている。


「紹介しよう」


カール王が口を開く。


「キール・レイン。王国騎士団副団長だ」


副団長。なるほど、言われてみれば納得だった。立っているだけで強そうだし、何より周囲の空気が違う。


「そして」


キールが一歩前へ出る。その視線が俺と健へ向いた。敵意はないが歓迎もしておらず、どちらかと言えば観察に近かった。


「サリー殿下が同行されるのであれば私も同行いたします」


広間の誰も驚かなかった。当然なのだろう。


「よいのか?」


カール王が聞く。


「問題ありません」


即答だった。王女を守るためでもあるだろうが、それだけではない気がした。彼は天使が現れた時からずっと俺達を見ている。多分、この人はまだ俺達を完全には信用していない。それも当然だと思う。俺達自身、自分達が何者なのかよく分かっていないのだから。


「よろしくね!」


サリーが笑う。


「よろしくお願いします」


反射的にそう返したが、正直なところ王女という感じはあまりしなかった。むしろ。サリーが現れてから妙に空気が変わった気がする。

さっきまで重かった謁見の間が少しだけ明るくなっている。兵士も。貴族も。カール王ですら少しだけ肩の力が抜けて見えた。本人は騒がしいだけなのかもしれない。でも、こういう人がいると場の空気は変わるんだなと何となくそう思う。そしてもう一つ。


(王女ってもっと近寄りがたい人だと思ってたんだけどな……)


俺はサリーを見る。楽しそうに笑っている。


(この国、思ったより堅苦しくないのかもしれない)


そう思ったところで、サリーがこちらへ手を振ってきた。俺もとりあえず振り返しておく。


……やっぱり軽いな、この王女。

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