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北の森の魔女 "The Baba Yaga of the Northern Forest" 第3シーズン  作者: 鉄猫


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銅と鉛

我がここに封印されて、いくつの朝と夜が過ぎたというのだろうか。

 この世を手中に収める、その寸でのところで、我は敗け、封印された。

 この祠も忘れられ、我の事を知る者はもうすでにいないだろう。我に敗北を印した者もだ。

 確かにあの時の我は驕り高ぶっていた。我の前に立ちふさがる敵などは存在しなかった。

 幾多の村や町を焼き、我らの軍隊は進んだ。国を喰い、滅ぼした。

 人々の怨嗟の声が、我らの軍歌だった。人々の苦痛に歪む声が、我らの宴の歌だった。

 我らは進んだ。山を越え、谷をまたぎ、川を埋めた。その軍勢は地平線の向こうにまで達したのだ。

 しかし、ある男が現れた。

 そいつは剣を取り、我の前に立ちふさがった。

 仲間を募り、人々を叱咤し、軍勢を作り上げた。

 我の軍勢と奴の軍勢は幾たびも干戈を交えた。丘で、里で、海辺で。多くの者が死んだ。

 だが、奴は退かなかった。我も退かなかった。

 どれだけの刻が経ったろうか。奴は我の目の前に立った。

 我の軍勢は敗れ、ついには我が敗れる時が来たのだ。

 だが、我は自らに呪いをかけた。

 鋼ではなく、銅と鉛でしか我を殺すことはできないと。

 そのような武器は無い。我は倒れたが、死することはなかった。

 奴は我をここに封印した。誰も訪れる事の無い、谷の奥にある小さな祠だ。

 奴は人々にこの地の事を忘れるように言った。我に力を与えないためだ。

 しかし、我は力を溜めた。地の熱を取り込み、祠に近寄る鳥や獣の血をすすった。

 我の身体も元通りとなった。力が漲る。魔の力も充分だ。

 ここに我は復活し、地上の地に再び、人々の怨嗟の声を響かせようではないか!

 今、岩の蓋が開く! 世界を再びこの手に収めるのだ!


「邪魔だぁ! 退け!」

 ボルトは突然飛び出してきた巨体に銃撃をくわえた。

「な、何?」

 レンチが反射的に機関銃弾の連射を叩きこむ。

「知らん。なんか出てきたんだ。トロールか何かだろう」

「援護するわ」

 ボルトが先に進む。レンチはすれ違いざまに巨体に銃弾を撃ち込んでいく。

 巨体はよろよろと立ち上がろうとする。

「出てくるなぁ! 邪魔!」

 ラチェットは動甲冑で巨体を蹴り飛ばした。祠の岩蓋に叩きつけられた巨体がうめく。

 それを不思議そうに首をかしげて、リベットが抜けていく。

 巨体が力を振り絞って立ち上がろうとした。その横を魔女が通りかかる。

 魔女は巨体の顔を見た。紫煙が流れる。

 巨体が何かを口にしようとした瞬間、魔女はM14の単射を、巨体の頭に撃ち込んだ。弾頭が頭を貫き、後頭部から血が噴き出る。

「うわぁあ」

 血を流して倒れる巨体を見ながら、シュウジが恐る恐る脇を抜ける。

「こいつ、何か言おうとしてたけど」

「ああ。知らんね」

 魔女はシュウジに声をかけて、先を進んだ。最後にナットがグレネードランチャーを手に、背後を護りながら進む。

 あとは風だけが残った。


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