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第九十三話 しっかりと
『………こんな姿の私でもあなたを守れると本気で思っているのか?』
口にしたくてしているのではない。
その顔が強く訴えて来る。
悔しさと怒りと悲しみで歪む顔。
目に見えない、手に触れられない何かを搔きむしるような。
嫌いだ。
強く訴える。
この姿がとてつもなく。
守れる。
土羽梨は即座に弾き出した返事を、けれど、冴野に伝えようとはしなかった。
思い留まった理由は、わからなかった。
この言葉ではないと、直感したのかもしれない。
言いたかったのは。
伝えたかったのは。
「守ってください」
土羽梨はしっかりと冴野を見つめて、言った。
(2023.9.18)




