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虹と戯れる砂の底魚  作者: 藤泉都理
第二章
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第六十五話 叫び+第六十六話 挑発的








 今からでも『緑の国』へ帰すか。

 マントの裏側のポケットの上を彷徨っていた冴野の手が、そこに収められている土羽梨に渡した物とは別の銀色の扇子を掴もうとした時だった。


 あの声が強く頭の中で響いたかと思えば、意識が瞬く間に遠ざかり、完全に遮断されるか否かの段階で、冴野は叫んだような気がした。が。実際に叫んだかどうかは、わからなかった。











(2023.9.10)






「やっぱり」


 冴野の悲鳴が全身をひりつかせた。


「調子が悪いんじゃない」


 土羽梨は手を掴む力が増した瞬間、力ずくで手を引いて冴野の手から逃れると、振り返って向かい合う冴野を見て、銀色なのに真っ黒に感じる瞳を見て、笑った。

 堕とす色だ。

 底がない世界へと。

 希望をほんの一点でも生まれさせない。


「それとも」


 元々こうするつもりだった。

 問いかけの言葉は呑み込み、冴野の殴打をマント越しに片腕で受け止めては即座に流し続ける中、斧があればよかったなと、少しだけ弱音がちらついた。

 弱音の後に、心音の顔が、ちらついた。


(斧を受け取ってないし、お金も払って、ないし。ふふ。いつまでも帰って来ない、から、世を儚んで、とか、思われて、そう)


「………早く、帰らないと、ね」


 後ろに飛び跳ねて冴野の殴打から一旦逃れた土羽梨は、周囲の動植物たちの明るい色を認識しては、苦笑を零した。

 まだまだ。


「あなただけしか見えない。なんて、言わせてみてよ」


 土羽梨は挑発的に笑ってみせてのち、再び冴野の殴打を片腕でマント越しに受け止めては即座に流し続けた。











(2023.9.10)




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