36/92
第四十一話 もぎたて
「土羽梨。疲れているみたいなんだ」
「あらら。もぎたてが美味しいのに」
土羽梨はハシビに身体を預けて静かに眠っていた。
そりゃあそうだ一週間かそこらで起きられるはずがない。
思いながら、男性は片腕で抱えた籠から一個の赤トマトを取り出すと、半分齧った。
「うん。美味い。あなたも食べるか?」
「うん。土羽梨が起きたら一緒に食べる」
「本当にこの人が気に入ったんだな」
「うん!あなたもそうでしょう?」
「さあ、どうかな?この人に対して強い感情を抱いている事だけは確かだが」
男性は土羽梨の傍らに座り、先程半分齧った赤トマトを食べ終えると、籠の中の様々な実をひょいひょいと口の中に入れては食べ続け、あっという間に全部食べてしまった。
「起きたらまた取って来る。もぎたての美味しさを味わわせたいからな」
「うん!」
「私も少し、眠る。身体を預けるぞ」
ひゅっ。
ほわわわわ~ん。
ハシビは息を飲んで、次には、全身から歓喜の呼吸を淡くくゆらせてのち、目を爛々と輝かせて、うんと言った。
思わず飛び跳ねそうになったのは、内緒だ。
(2023.8.31)




