第十二話 witch
自分が出来るクリスマスプレゼントどーん
私は此方に駆けつけてきたシエルに向けて、片腕を上げる。
それを見たシエルはその腕をパチンと大きな音を出しながら、勢いよく叩いた。
「ッ、ちょ」
苦痛に濁った顔を見せながら抗議しようとしたら、むくれ顔で佇むシエルが目に入り。
「ごめん」
と小さく呟いた。
しばらく見つめ合うとシエルは腰に手をあて。
「もお無茶しないでよぉ」
と口を開いた。
「………」
無茶しないで、そんな言葉を言われたのは何年前だろうか。
刺激されるのは過去の記録、家族以外に自分のことを心配する存在はなく、家族以外は邪魔者だと理不尽な扱いを受けていた。
過去と比べれば現在は幸せなのだろう。
「わかったわかったもうしない、それに痛いのも好きじゃないしね」
と言いながら両手で腹部に付けられた傷に優しく触れる。
その様子を見て怪我に気がついたか焦りながら。
「って、え、怪我が」
「大丈夫よ、応急手当出来るし」
そう言い振袖から包帯などの医療道具を取り出していると、シエルの声が響き渡たった
その声に気が付き顔を上げるとそこには、綺麗声で言葉を口ずさんでいた。
「命の波動よ、汝の傷を癒せ、ヒール」
その言葉を発すると腕が光に包まれた。
「え」
その発光した手を傷口に翳すとゆっくりと傷が塞がってきた。
その光景を見て唖然としながら修復されることに目を離せなかった。
しばらくし、傷がある程度塞がったのか手を傷口から離し、小さくため息をつき。
「取りあえずだいたい傷は塞いだよ」
その声を聴きサクヤは、ゆっくりと傷口があった場所に指でなぞるように優しく触れ確かめてみると、跡があるが出血が止まっている。
なるほどこれが………。
「これが…魔法」
「ふふん、これでも回復魔法は得意なんだ。けどもし辛かったら病院に行ったほうがいいよ」
魔法があることは知っている。実際シエルが風魔法を使用しテロリストを倒していた。
しかし回復魔法がここまで効果あるものだと思っていなかった。
「いえ、大丈夫よありがとう」
そう言いながら立ち上がる。
ズキズキとした痛みはなく動いても問題なさそうだろう。
すると、パチパチと音が聞こえて来た。
その方向に目を向けると黒いローブを被る人物がいた。
「いやいやお見事、彼女を殺ろすならともかく戦闘不能させるとは」
「で、あんた達の目的は何なの」
「おやおや、人の話を聞かないことで」
「あんたの長い話に価値がないからよ」
今欲しいのは情報だ。情報があるのとないのでは決定的な戦力差になる。
こいつらの目的しだいでは今後めんどくさい戦闘をしなければならないし、情報収集の手間も後手になったら不利だ。
相手も聞く気がないと理解しているのだろう、大きな素振りでため息を付き。
「その前にどうやって彼女を倒したのか聞きたいのですが」
何故それを言わなくてはならないのか、そう言うつもりだったがこれくらいならいいだろう、そう判断し。
「ワイヤーよ」
「ワイヤー、ですか」
明らかにそれでわかるはずがないと疑う目線を受けながら。
「バリアが展開されているなら、身体にピッタリ張り付くわけないでしょう」
シエルが攻撃した時30cmほど離れた場所に透明な壁に弾かれていた。
もし展開されているならワイヤーも30cm離れた場所に絡まるから。
そう説明するとなるほどと言いながら。
「では、短刀直入にいいましょうか」
口を開いた。
「私達の目的は世界平和です」
「は?世界平和ねぇ」
「えぇ、そのとうりです」
世界平和を目指す、それ自体はいいことだが。
「じゃあなんで多種族を差別するの!」
シエルの言ったとうりもし世界平和を目指すのなら逆に差別をなくそうとするはずであり、彼らはその逆をやって争いを激化させている。
まともな回答は期待していないが、聞かなければ何も変わらない。
「何故ですか、ね、解らないのですかその存在だけでこの世を破滅に導いているのを。特にあなたは危険だ」
とゆっくりと腕を上げシエルをゆびさす。
「何を言っているの」
指をさされたシエルは戸惑いながら口を動かした
「信じる信じないはあなた方の自由です。ですが」
そう言い視線をサクヤの方に向け見つめると。
「あなたに手を出すことはやめます。面白いものが見えたので」
といい何か小さな物を数個、放り投げて来た。
警戒しながら拾うと細長い筒だった。
他にも拾ったがどれも何も変哲のないものが多かった。
「武装デバイスですよ。見たところ所有していなさそうだったので、あっ罠ではありませんよ。あっ彼女も
上げますよ」
「なんのつもり」
確かに武装デバイスはありがたいが、さっきまで戦闘していた奴からいきなり渡され警戒しない方がおかしいだろうし、そもそも兎耳人を置いて行かれても扱いが困るのだが………。
「ただのお節介ですよ」
と言った直後下に魔法陣が展開された。
鋭く光るような光量に目を細めながら。
「なにこれ」
「ッまさか」
「やはりと言うかそちらの和服さんは気ずきましたか」
足が動かせない。いや正確には四方を囲まれている。この魔法いやこの魔術は。
そんな事を考えながら知らずのうちに叫んでいた。
「浴衣さんじゃないわ、咲夜よ」
「へぇサクヤか覚えておこう。あっそうそう」
歩んだ歩を止め振り返りサクヤに視線を合わせながら、柔らかい少女の小さな声でこう言った。
「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだから」
「………忠告、感謝するわ」
その言葉を聞き届いたのか柔らかく笑ったのか、フードの下に見える素顔が緩み、彼女は窓から飛び降りていった。
それを見送りながら、またまた面倒ごとに首突っ込んじゃたなと、小さくため息を付いた。
◇
「なんだったんだろう」
静かになったショッピングモールに、シエルの小さな声が響きわたる。
その声に振り替えりながら。
「わからないけれど、まぁ面倒くさい事に首突っ込んだのは確かね」
動けるようになってから直ぐ辺りを見渡したが、彼女を発見することは出来なかった。
けれど分かることはあった。
彼女の警告の言葉の意味は多分そのまんまであろうが、幸いシエルは彼女の声が聞こえていなかったようだ。
それに安堵しながら刀を納める。
何故なら、遠くから独特のサイレン音が聞こえてきたからだ。
「………ハァ、来て早々警察の厄介になるのね」
肩を落としながら入り口に足を進めた。
「シエル?」
のだが、シエルが彼女が下りていった窓を見つめ佇んでいた。
そして自分を呼ぶ声が聞こえたのかこちらに振り向き、今行くと言い駆けていった。
歩きながらサクヤも思考に耽る。
彼女、アパーソンの言ったことは正しいのか、それとも嘘なのかそんなことを考える。
けれど彼女に言われた言葉はサクヤの心に重くのしかかっていた。
そして認めたくないが………。
彼女が言っていることが本当だと解っている自分がいた。
◇
ここは薄暗く錆びれ人の手入れがされていないだろう一目散にわかる建物だ。
しかしその薄気味悪さと両立し神聖な雰囲気を醸し出している。
ここは教会。
けれども誰の記憶にも忘れられた、哀れな建物。
しかしそんな建物の扉を開け放つ者がいた。
その者は臆する事なく進みしばらくし立ち止まる。
顔を上げれば割れたガラスから延び刺すような光が舞い降りる。
そして静かにたたずみ虚空に向け口を開いた。
「お呼びですか、我が主」
そうすると何処からともかくもう一人の女性いや少女の声が聞こえて来た。
「どうですか外界は。面白い物がありましたか?」
と楽しそうにまるで小さな子供が好奇心で問いただすのように。
その様子を見て嬉しそうにこう言った。
「面白そうな化物を見つけましたよ」
「主はあれを知っているのでしょう」
それが聞こえた時まるで悪戯がばれたような顔をしてこう言った。
「彼女はあなたと同じ―‐」
外では穏やかじゃない風が吹いていた。




