↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者祭5 魔の国編  作者: 牧野三河
第一章 港町ジョアル
134/164

第134話


 無事に出航準備を終えて、朝一番。

 もうすぐ港を出るが、マサヒデはすぐ部屋に引きこもり、魔王様に送る手紙を書き始めた。


 知り合った武術家や如何に。

 オリネオに行ってから、順番に思い出していこう。



----------



 まず、アブソルート流のコヒョウエ=シュウサン。カゲミツの師匠。

 同じくアブソルート流、ジロウ=シュウサン。コヒョウエの息子。


 武神精錬館合気柔術、ユウゾウ=クロカワ・・・

 クロカワは、マサヒデが小さい頃から、ちょくちょくトミヤス道場に来てくれた。では、こっちが先か。

 マサヒデやアルマダの無手術は、クロカワ仕込みが大くを占める。


 本業は剣ではなく研師だが、ナリカツ=イマイ。すごい居合と抜刀の腕前。


 次は・・・



----------



「ふーう!」

「たまらーん!」

「嗚呼・・・」


 カオルの部屋には、クレール、シズク、ラディが集まって、寝転がってタマコの尾を顔に擦り付けている。


 カオルは黙って壁を向いたまま、脈を感じろ! と集中している。


「ふわふわですうー」

「滑るー」

「気持ちいいです・・・」


 とんとん。

 ぴく、とカオルが動き、ゆっくり振り向いた。


「はい」


「失礼致します」


 給仕の姿をしているが、忍か。

 何かあったのか・・・


「そろそろ休憩のお時間です」


「あ。もうですか。ふう! 時間を忘れてしまいます」


 給仕が差し出したグラスを取り、水を一口。

 首を回しながら囁く。


(何かございましたか)


(いえ。タマコの尾ですが)


(尾?)


(何かあった際、ホルニコヴァ殿の治癒魔術で治せますか)


 す、とタマコの方を見ると、シズクが顔にタマコの尾を擦り付けている。

 もし、ぐっと押し付けたりされたら、簡単にぺらぺらの紙のように・・・


(生身であればともかく、式神の身に、治癒魔術は通るのでしょうか)


(む)


 こん、とワゴンにグラスを置き、カオルが歩いて行く。


「皆様」


「はあー・・・」

「気持ちー・・・」

「はい・・・」


 完全にとろけた顔。


「皆様っ!」


「はあっ!?」

「うおっ!?」

「はいっ!?」


 ぎく! と3人がカオルを見上げる。


「すみませんが、タマコに尋ねたい事があるので、手を離して下さい。タマコ。ついて来なさい」


 するっと3人の手から尾が抜けて、カオルと一緒にドアの外。


「早くして下さーい!」

「おおーい! 急ぎなのかよー!」

「むむ・・・」


 むっすりした3人。

 カオルはすぐに戻ってきて、皆の前にタマコを座らせた。


「クレール様」


「はーい?」


 すりすり・・・


「もしタマコに何かございましたら、札に戻し、もう一度呼び出して下さい」


「はあー? はあ・・・」


 全然聞いてない。

 ふうっ、と息をついて、給仕の姿の忍の所へ。


(自分の治癒魔術は良いが、他の者の治癒は効かぬと)


(ふむ)


(身体に欠損が出た場合、札に戻し、再度呼び出す事で、封印された際の姿に)


(なるほど。死んだ場合は)


(消えるそうです。危ない時はすぐ札に戻せば良しと)


(式神といえど、命もございますか)


(命・・・とは違いましょうが、そのような感じでしょうか)


(不思議なものですね)


(はい)



----------



 こちら、トモヤの部屋―――


「ローン! チートイドラ2! 裏は・・・あーねえかー」


「あっ! ちきしょう!」

「単騎かよ! 読めねえはずだあ!」

「トんだぜ!」


 酒の香むんむんの部屋で、卓を囲む騎士4人。

 そして、難しい顔で駒を動かし、ユカリ王妃との対局の感想を何度も行うトモヤ。


「トモヤ殿ー」


 じゃらじゃらじゃら・・・


「・・・」


 ぱちり。

 じゃらじゃらじゃら・・・


「一局どうでございますー?」


 じゃらじゃらじゃら・・・


「ええい! うるさいのう!」


 がたーん! と椅子を倒し、トモヤがふんぬと立ち上がる。

 のしのしと歩き、空いた席に乱暴に座り、


「東風のみじゃぞ! ワシは感想で忙しいのじゃ!」


 むっとした顔で牌を集めて並べていくトモヤを見て、騎士3人が笑う。

 トモヤの後ろに、トビの騎士が立つ。


「ええい! 後ろに立ちまするな!」


「トモヤ殿、通しなどしませぬ」


「どうだかのう!」


 げらげらと騎士が笑う。


「ははは! 別に何も賭けておるわけでもなし!」

「そうでございますぞ!」

「むう、我らを信用出来ませぬかな? ははは!」



----------



 そして四半刻後―――


 すふー・・・


 トモヤの対面の騎士、ジョナスがじりじりしながら、酒臭い息を吐く。


 来た。

 五萬を切って一・四萬待ち!

 一萬が出れば! 發チャンタ三色ドラ1で跳ね! 最下位からトップ!


「・・・」


 じりじりじり・・・


(問題は対面の立直)


 五萬を切りたいのは山々だが、かなり危険。

 ここは現物の二萬を・・・すっ。


「死中に活と申す」


「う」


 ぽつっと呟いたトモヤの声に、びたりと止まるジョナスの手。

 トモヤの目が、冷たく光っている。


「今・・・気配が死んでおりもうしたがの・・・」


「・・・」


「既に死んでおるのか・・・活を求めに・・・死にに来た、か・・・」


 ごくり。死線を越えてきた騎士達が、喉を鳴らす。

 トモヤの目が、すうー・・・と細まる。


「ジョナス殿・・・その手は・・・勝ちに来ておらぬ・・・助かろうとしておる手じゃ・・・くくくっ・・・ワシにはそう見える・・・見えておる・・・」


「・・・」


「どうなされた。その牌で・・・ワシに勝てるかの・・・ククク・・・」


 にじり、にじり、と、ジョナスの親指が二萬を擦る。

 良いのか。本当に・・・これで・・・これは博打ではないのか・・・っ!


「う、う」


 が。ジョナスには橋を渡れなかった。

 とん・・・


「ロっ・・・ロン・・・」


 ぱたん。

 下家の牌が倒された。

 三暗刻。白・二萬待ち。


「う、う・・・ううっ!」


 くくく、とトモヤが喉で笑う。


「トビでござるか・・・ここまでにござるが・・・麻雀は久し振りでござるし・・・」


 ぱたん、とトモヤが手牌を倒した。

 リーのみ。五萬単騎待ち。

 こっちに振り込んでいれば、生きていた・・・


 静かな部屋。波の揺れは微かにしか感じない。

 きしぃ・・・きしぃ・・・と、小さく船が音を立てる。


「もう一局、参りましょうぞ。どうも、今日は牌が泣いておる気がしますでのう」


 すうー、と、倒した手配の上を、トモヤの太い指が走る。


「どうものう・・・皆様の牌は、煤けて見えるでのう・・・東のみではのう・・・」


「・・・」「・・・」「・・・」


「ふっ。次は、半荘で参りましょうかの。東風だけでは煤が取れそうにもないでのう。次は・・・賭けますかの・・・」


 じゃらり。

 トモヤが牌を押し付けるように出して、洗牌を始める。

 遅れて、騎士達も牌を押し出し、じゃらじゃらを混ぜる。


「金貨1枚」


「えっ」


「最下位は・・・金貨1枚じゃ。皆々様、やるかの。ワシも、これまでの旅で、稼いでおりまするでの・・・」


 不気味。

 静かな声。

 洗牌の音で消えそうな声。


「・・・」


 たん、たん、たん・・・トモヤが静かに牌を並べていく。

 ぐ、とサクマが拳を握る。

 このような若造に舐められたまま終われるか!


 ちらり、ちらり、左右に目を配ると、む、と騎士2人も頷く。

 トモヤが後ろの騎士をちらりと見て、


「ジョナス殿はトビじゃったでの。交代じゃ」


「・・・」「・・・」


 無言で2人が席を替わる。


「今度は賭けておるでの。後ろには立たんで下されや。ワシの後ろでなければ、構わぬが・・・そうじゃの。卓からは2歩くらい離れての」


 凄い将棋打ちだとは分かっていたが、この若造、慣れている。

 きちんと警戒出来ている。

 真剣師・・・勝負師の、天性の才!


「はい」


 ジョナスが離れて、ソファーに座る。

 からん、とサイコロが振られた。

 親番、いきなりトモヤ。


 ぴり、と皆に警戒が走った。

 たん、たん、たん、と皆が理牌していく。


「ん?」


 トモヤが手を止め、首を傾げる。


「どうかなされましたか」


 多牌か少牌でもしたのか?


「あいや・・・うむ? はあてなあ」


 ぱたん。

 トモヤの手牌が倒れる。


「う!?」「何っ!」「そんな!」


「上がっておるわ」


 ずぎゃーん! 天和!


「ばっ・・・馬鹿な・・・っ! あるわけながない・・・っ! そんな馬鹿げた事・・・っ! イカサマっ! イカサマっ!」


「いや、一緒に混ぜておったではござらぬか」


「イカサマっ! イカサマだっ!」


 ふん! とトモヤが鼻で笑う。


「証はござるのか? して? ワシはどんなサマをしたのじゃ?」


「うっ・・・ぐっ・・・」


「ふん! サマをしておったと分かっておるなら、先に止めておりましょうが! 仮にしておったとして、見抜けぬ者が悪い! それが真剣勝負じゃ! 違いまするかの!」


 言い返す言葉もない。

 ぶるぶる拳を震わせ、騎士が黙り込む。


「全く! これが命のやり取りをしておった騎士様か? 見苦しいのう」


「・・・」「・・・」「・・・」


「死んでからあやつはズルいと言うても、誰の耳にも聞こえませぬぞ・・・あいや、クレール殿なら聞こえるやもしれぬが・・・」


 じゃらじゃらじゃら・・・


「あ、もう酒が少ないの」


「む・・・もうないですな」

「ああ。私も頼みます」

「私も」


 トモヤが離れたジョナスに首を伸ばし、


「ジョナス殿や! 申し訳ござらぬが、酒の追加注文を頼みまする!」


「はい」


 ジョナスが立ち上がり、かちゃかちゃと皆が理牌していく。


「おんやあ?」


 ぎくっ! と皆の手が止まった。

 ぱたん・・・

 トモヤの手牌が倒れる。


「くくく・・・今日はついておるのう。また上がっておるわ。わーはははは!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。