24 板挟み
異世界ですが魔法はなく、何となくイギリスのヴィクトリア時代後期の世界観で書いています。
恋愛&ちょこっとミステリーな話になればいいなと思います。
お付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ルーベルト・カッシーナ公爵令息は、困惑しながら親友のエドワード・ミンツ子爵令息と婚約者のシャルロッテ・ヒューバート伯爵令嬢の言い合いを見ていた。
とうとうエドワードが客間を飛び出して行き、ルーベルトはシャルロッテに話しかけた。
「シャルロッテ……、何をそんなに怒っているんだ。
エドは本気でリアを思っていたし、リアだって……」
「ルーベルト、リアだって辛いのです。
でも、立ち止まることはできないとリアは言いました。
先にエドワードの方からあきらめたと知れば、リアの気持ちも落ち着くかもしれません」
「エドはそんな男じゃないよ」
「そうでしょうか……。
本当にリアを探し出す気があるなら……、やりようはいくらでもあるのに!!
いくら何でも、メイドをひとり、この世から完全に隠し通すことなど不可能なのですから……」
「……わかった。探し出す」
ルーベルトはシャルロッテをじっと見つめて言った。
「大丈夫、エドは絶対に見つけ出すよ」
シャルロッテの瞳から涙が零れ落ちる。
そして、ルーベルトを見つめると頷いた。
ルーベルトがエドワードを探すと、庭に出てぼーっとしている。
「リアを探そう。
シャルロッテはああ言っているが、本心ではエドに見つけてもらいたいと思っている。
リアとの約束なんだろう。
行先を言わない、内緒にするというのが……。
気持ちが板挟みになって、シャルロッテも苦しんでる。
探すのは邪魔しないはずだ。
まず、シャルロッテのここ最近の動向を調べよう」
ヒューバート伯爵家の執事も、リアーナの行方は知らないがシャルロッテの最近の動きについてはと協力的に教えてくれた。
あのお茶会の後、商会絡みでいくつかの貴族の屋敷を訪ねているという。
「次の日にメリメ伯爵家、その次にメリメ伯爵様からの紹介でアルトール辺境伯爵家にいらしています。
リアーナは付き添いで行きましたが、帰りにはもういませんでした。
私どもはメリメ伯爵家に呼ばれたのかと思っていたのですが……。
次の日にファーマソン子爵家……、これはリアーナの父の実家ですね。
旦那様と行かれています。
それから、2日ほどしてメリメ伯爵家、またファーマソン子爵家……。
その次の日にはワイズ男爵家に行かれています。」
執事は覚え書きを見ながら4つの家を挙げてくれた。
「メリメ伯爵家が協力しているのか?
ここならエドワード、理由をつけて訪問できるな?」
「ああ」
エドワードが小さく呟くと髪を右手でかき回す。
「ああ、何かしてないと気が狂いそうだ……」
「では良かったな、することができて」
「ああ、ルーベルト、ありがとう」
☆ ☆ ☆
「突然ですが、お聞きしたいことがあります。
ヒューバート伯爵家のメイドのリアーナのことですが、どちらに行かれているか心当たりはありませんか?」
メリメ伯爵とその夫人に、エドワードは単刀直入に訊ねた。
ふたりは困った表情をする。
「……すまない、約束しているんだ。
誰にも教えないと……」
メリメ伯爵が申し訳なさそうに答えた。
夫人も頷く。
「では、アルトール辺境伯爵家に私達も話を伺いたいので紹介して頂けないでしょうか?」
ルーベルトがお願いする。
せっかくの手がかりをここで切らさないようにと必死なのだろう。
「……アルトール辺境伯爵家は困っていて、それでヒューバート商会をお薦めしたんです」
夫人が話し出す。
「とてもいい紹介をしてもらったと喜んでいましたわ。
エドワード様、……ジョンとお話していきませんか?
ジョンもリアが大好きですからね。
今でも……」
「おい!」
メリメ伯爵が夫人の言葉を遮る。
夫人はエドワードに何か伝えたいようで目をじっと見て頷いた。
「ぜひ、ジョンと話をしてやって」
エドワードも頷き立ち上がった。
「時間を取って頂き、ありがとうございます。
ジョンは部屋ですか?」
「ええ、自分の部屋にいるわ」
エドワードとルーベルトはジョンの部屋に向かう。
「メリメ伯爵と夫人は何か知っているな」
ルーベルトの言葉にエドワードは頷いた。
「ああ、さらに夫人は何か伝えようとしてくれていた」
「あのふたりも約束させられていて、自分の口では言えないんだろうな……」
ルーベルトの言葉にエドワードははっとする。
「……そうか、だから、ジョンなのか!
ジョンなら、口止めをされていないかも!」
部屋を訪ねるとジョンは大喜びでエドワードに抱きついてきた。
「今日はリアは? 一緒じゃないの?」
ジョンの言葉にエドワードは微笑んで言った。
「ああ、リアはまだ戻って来てなくて。
ジョンはリアがいる所を知っているかい?」
「んー、お出かけしてるんだっけ?
叔父さんの所は遠いからね。いつ戻ってくるの?」
「迎えに行きたいんだ。
その叔父さんのいる場所、どこだか知っている?」
「うーん、なんとか……ルだっけかな?
僕と同じくらいの子がいるって!」
「地名かな?
どこかの屋敷?」
「えーとねぇ……」
「そのジョンと同じくらいの子がいるところって誰から聞いたの?」
「えっと……、読んでもらったの!」
「読む? 何を?」
「リアからの手紙だよ!」
ジョンはぴょんと椅子から跳ねるように走り出し、自分の机の引き出しから封筒を持ってくる。
「リアからのお手紙!
全部はまだ読めなくて、おばさまが読んでくれた!」
「見てもいいかい?!」
エドワードの声が震えた。
「うん、どうぞ!」
手紙を受け取ったエドワードは封筒の表書きをさっと見ると、封筒をルーベルトに預ける。
ルーベルトが封筒に書かれた住所を確認した。
エドワードが取り出した手紙をざっと読んで、安堵のため息を漏らす。
「ね、僕と同じくらいの女の子と、僕より小さい男の子がいるお屋敷でお仕事してるって書いてあるでしょ!」
「……うん、そう書いてある。
ありがとう、大切な手紙を読ませてくれて」
「うん、今度はリアも一緒に遊びに来てね!」
ジョンがお礼を言われてうれしそうに返事をしてくれる。
「うん、そうするよ。絶対、そうする。
楽しみに待っていてくれ」
読んで下さりありがとうございます。
朝7時頃投稿すると決めたけど、章立てするのが大変かと思い、今第5章の最初の話を投稿しちゃいます。
これからもどうぞよろしくお願いします。




