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ギルティなギルロッテ様  作者: 月迎 百
王国の王子
12/34

12 お見通し

悪役令嬢や聖女、異世界の話が大好きです。

前作『転生ガチャでヒロイン枠を引き当てたら女神様に強奪されました! ~それでも転生させられるんですね~』で魔法の対戦を考えるのが大変だったので、その反動か今回は魔法が全くない異世界の話をのんびり書いています。

どうぞよろしくお願いします。

「おかえりなさい! リア! ご苦労様でした」


 ヒューバート伯爵家に戻ったリアは微笑むシャルロッテに迎えられた。

 ルーベルトとエドワードが送って来てくれたので……、もちろんシャルロッテはブラックドレス姿だ。


「まだ、ルーベルト様に……。

 いえ、長い間不在にして申し訳ありませんでした」

「私が頼んだことですもの。

 それでメリメ家の仕事はどうだった?」

「仕事というか、まあ命の恩人として大切にしてもらいましたし、ジョン様はかわいいし、それに……」

 そこでリアーナは少し赤くなった。


「それに?」

 シャルロッテが次の言葉を促す。


「いえ、楽しかったです!」


「そう……。

 部屋に荷物を置いてきたら?」

「はい、そうさせていただきます!」


 リアーナが元気よく客間を出て行くとシャルロッテがエドワードをじっと見た。


 しばらく目を逸らして気がつかない振りをしていたエドワードが、居心地が悪そうに言った。

「何?」


「私がいないところで、リアに何かしたんじゃないでしょうね?」

「……何もしてないよ。

 その……、エドワードと呼んで欲しいと、お願いしたくらいで……」


「まあ、なんて図々しいお願いを!」

「図々しいか?

 好きな子と名前を呼び合いたいと思うのはそんなに悪いことだろうか……」

「エド?!」 

 ルーベルトが驚愕してシャルロッテと一緒に座っていたソファから思わずといった感じで立ち上がる。


「ああ、俺はリアを気に入ってる。

 もっと仲良くなりたいし、リアにも俺を好きになってもらいたい」


「もう言ってしまわれたの?」

 シャルロッテが咎めるように言う。


「……まだだ、とりあえず、名前を呼び合いたいとしか伝えていない……」


 シャルロッテがほっとした表情を浮かべた。


「性急に事を進めないで下さいね。

 ……リアを傷つけたら許しませんから」


「傷つけるつもりはない!」

「エドワード様がそのつもりはなくても………、周りがどう思い動くかということもありますので。

 知らないではすまされないこともあります」

「……確かに、そうだな。

 それは、考えなくてはならないことだな……」


 ルーベルトが驚いた表情でシャルロッテとエドワードを交互に見ている。


 そこへリアーナがヒューバート伯爵家のメイド服に着替えて戻ってきた。

「お待たせしました!

 ん? 

 何かありました?」


 首を傾げながら、立っているルーベルトを見て不思議そうに言った。


「あ……、その……」

 口ごもるルーベルトのそばにシャルロッテは立ち上がり「天気も良いので庭を散策しましょうと話していたのです」と言った。


「いいですね!

 ではお庭でお茶を楽しめるようにテーブルを御用意します!」

 リアーナは張り切って、客間から出て行く。


「いいですか、ルーベルト。

 今の話はリアにはまだ内緒ですよ!」


 ルーベルトに口止めしようとするシャルロッテだが、ルーベルトはまだよく理解できていない様子。


「えっ? 何が?

 えっと、リアには内緒って?」


 エドワードが笑った。

「すまないね。

 我が友人はそういうことにはとても疎くてね」


「……そうでしょうね。

 でも、そういうところが私は好ましく思いましてよ。

 エドワード様もそうじゃなくて?」


「そうだな。

 俺達はけっこう似た者同士かもしれませんね」

 エドワードがにっこりシャルロッテに微笑みかけた。


「ルーベルト、先に庭にいらしていて下さらない?

 私、庭に出る前に少し仕度がありまして。

 後から追いかけますわ」


「わかった。とりあえずエドワードがリアを好きと言うのが内緒なんだな。

 先に庭に出て、リアを手伝ってくる。

 仕度ができたらゆっくり出てきてくれ!」

 ルーベルトが少し慌てたように客間を出て行く。


「で、エドワード様。

 そちらの問題はいつ、なんとかできそうですか?」

「えっ、問題……とは?」

 戸惑うエドワードにシャルロッテはため息をついた。


「私にまで黙っているおつもりですか?

 ルーベルト様もエドワード様もマイヤー様も私が知らないと思っているようですが……。

 知ってますよ。

 この国の名前がロンディノス王国であることが明確なように、あなたのもうひとつの名がエドワード・ロンディノスであること。

 本当に、リアを泣かせたり悲しませたりしたら、私のすべての、すべての力を使って復讐しますからね」


 エドワードは驚いてシャルロッテを見た。

「それを、なんで?!

 もしかしてルーが?!」

「ルーベルトは私に何も言っていません。

 私がそうではないかと、思っていただけです……。

 本当にそうなのですね……」


 少し目を伏せて考えてからシャルロッテはエドワードに言った。

「反対はしませんが……。

 これからは何かあるごとに相談して下さい。

 お嫌かもしれませんが、そうすればお力になれることもありますので……」


 エドワードは頷いてから客間を出て行った。


 シャルロッテはため息をついて、自分のブラックドレスのスカートを手でつまむとくるっとその場で優雅に回った。

 ドレスの裾が綺麗に広がって、落ち着いた。


「さて、この先、私もリアもどのようにするべきか……。

 でも、周囲も自分も……、少しずつ変わっていくのは、楽しいことでもあるわね……。

 さあ、リアとルーベルトが待っているから、行かなくちゃ!

 ……エドワード様は私を怖がっているかもしれないわね……」


 楽しいいたずらを考える子どものように微笑んでから、シャルロッテは客間を出て行った。

 日差しいっぱいの明るい庭へと。

読んで下さりありがとうございます。

次は3話目に突入です。

今回は話ごとに章のタイトル付けたり整理しつつ書いているので、話は追いやすいかと思うのですが、どうでしょうか?

これからもどうぞよろしくお願いします。

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