11 誰の許しが
なんとか短編3話分を連載に直せました。
順次投稿していきます。
異世界ですが、時代背景や文化的な感じはイギリスのヴィクトリア時代(ホームズとポアロの間な感じ)をイメージして書いています。
どうぞよろしくお願いします。
「リア!!」
ジョンが走ってくるとリアーナに抱きついた。
そんな微笑ましい姿を、周囲に気を配りながらも、緩む顔で見ているのはエドワードだ。
ここはメリメ伯爵家の庭だ。
治安警備局の隊員もそばにいいる。
あの池の事件の次の日から、リアーナとエドワードはメリメ伯爵家でジョンを守るため、泊まり込みで護衛とお付きの仕事をしている。
3日後、逃げていたカールは捕まった。
やはりシャルロッテが予想したように本名はカルロで、バスク王国の軍関係者だった。
バスク王国は3年前に軍によるクーデターが起こり、王族は捕えられ、軍が政権を握った。
その時の王の名はホアン。
王妃は我が国から嫁いだマイアという辺境伯爵令嬢だった。
まだ若い国王と王妃だったが、3歳になるホアン・Jr.という王と同名の王子がいた。
しかし、クーデターのどさくさで行方不明になっている。
クーデターを察知した我が国の大使と祖父になる辺境伯爵の手により我が国に連れ出されたという噂があるが、国としては正式に声明は出されていない。
バスク王国で国王夫妻は軟禁状態に置かれ、お飾りの王として生かされている状態だ。
ここのところ軍事政権に対して周辺国の厳しい対応、軍部による国民への厳しい統制により、バスク王国民の不平不満が高まっていて、軍事政権内でも分裂が起き、この国と繋がりを持つ穏健派が力を盛り返している。
政権トップに君臨する将軍が率いる軍派は、穏健派が頼ろうとするこの国とのつながりの象徴であるホアン・Jr.王子を探し出し、害そうと画策していたようである。
どこかの貴族の屋敷で養育されていると予想はできても、辺境伯爵家とその縁者の屋敷には6歳男児の姿はなく、焦った軍派はホアンのこの国の呼び名であるジョンという名の6歳の貴族階級の少年を襲い始めたという訳だ。
もちろん、本物ではないとわかっているので命までは取らない。
それが2件起きたところで、仕掛けられた網に慌てて飛び込んでしまったのがメリメ伯爵家ということだ。
カルロはじっくり狙いを定め、信用を得たところで逃げやすい屋外で凶行に及ぼうとして、リアーナとエドワードに邪魔されたということだったのだ。
ルーベルトとマイヤー副局長がメリメ伯爵家を訪れた。
エドワードに状況を説明してくれる。
「来週にはバスク王国の軍部が折れて我が国とバイエルン王国を交えて国際会議が開かれることになった。
たぶん、軍政から民主的な議会制にという話が進むと思う。
王政に戻すのは軍が反対するだろうからな」
副局長の言葉にルーベルトが補足する。
「後2週間もすればお役御免だな」
エドワードは少し複雑そうな表情をした。
「どうした?
うれしくないのか?」
エドワードの表情にルーベルトが不思議そうな顔をする。
マイヤー副局長が笑った。
「ルーベルトにはわからんだろうが……。
エドワードの方はどうなんだ?」
エドワードが困ったように微笑んだ。
「まあ、少しは親しく話せるようになったかなというぐらいで……」
「何の話だ?」
ルーベルトが戸惑ったように言った。
「まあ、今の話をリアーナ嬢に伝えてやってくれ、頼んだぞ」
副局長は立ち上がりながらエドワードの肩を軽く叩くと、まだ不思議そうな顔をしているルーベルトを連れて帰って行った。
「あれ、もう帰っちゃったんですか?!」
リアーナがエドワードの所に来るとふたりが去って行った方を見た。
「伝言は後で伝えるよ」
「わかりました。では後で」
リアーナは軽やかにジョンの方へ戻っていく。
その姿を眩しそうに見つめてからエドワードはため息をついた。
その日の夜、エドワードはメリメ伯爵に頼んで客間を使わせてもらい、リアーナと話をすることにした。
「ジョンは寝た?」
エドワードは客間に入ってきたリアーナを労わるように話しかけた。
「はい、今日はたくさん庭で遊びましたから、もうぐっすりでした!」
「リアも疲れたんじゃない?」
「そうですね。
お嬢様のお相手よりは体力を使いますけど、小さなお子さんのお世話は初めてなので楽しいです。
メイドとしてよりいい体験ができてるというか、いい勉強というか。
そういえば、ルーベルト様とマイヤー様の伝言は?」
「ああ、来週にはバスク王国の軍部が折れて、我が国とバイエルン王国と合同で国際会議が開かれることになったそうだ。
シャルロッテが言っていた通りだな。
たぶん、王政に戻すのは軍が反対するだろうから、軍政から民主的な議会制にという話が進むだろうということだ。
会議が平和的に終われば、その後1週間様子を見て、メリメ伯爵家から引き上げていいと言われた」
「………後2週間というところですね。
会議の結果によっては、ジョン様の御両親もこの国に亡命できるかもしれませんね!
そうしたら、親子で一緒に暮らすことができる……。
そうなるといいですね」
リアーナの言葉を受けてエドワードは頷いた。
「リアはまだ、俺のことをエドとは呼んでくれない?」
「えっ?
エドワード様としか呼べないですけど……」
「シャルロッテがルーベルトのことをルーって呼んだら考えてくれるって言ったよね。
なら、エドワードって呼ぶのはもうOKじゃない?」
リアーナが困った表情をした。
「……この前、そう呼んじゃったこと根に持ってます?
あれはすみませんでした。
一緒にジョン様を助けてくれて、その、私も命を助けてもらったようなものだし……。
なんか、友達や仲間のような気持になってしまって、申し訳なかったです!」
そう言って頭を下げるリアーナ。
エドワードが何も言わないので、恐る恐る頭を上げたリアーナはエドワードが困ったような表情をしているのを見て首を傾げる。
「あれ、なんか、違いました?」
「ああ、俺は本当にエドワードって呼んでもらいたいんだけど」
「ええと、それなら、ふたりの時はエドワードと……、呼んでもいいですか?
それぐらいなら、許されるかと」
「許すも許さないも……、それは誰が許すということ?」
「……、そうですね。
誰だろ?」
リアーナが小さな声で言って、笑った。
シャルロッテとルーベルト、リアーナとエドワード。
この4人、けっこう性格が違うので、急に思いがけないことを言ったりして面白いです。
今まで一人称で書くことが多かったので、三人称で見たまんまを書くということ(見てるのでそれぞれの心の動きまでは本当はわからない)が難しく、修行中です。
一人称の時はマンガのコマやページをイメージして書いていることが多かったのですが、今回は実写ぽい感じで動いてるのをイメージしてることに気がつきました。
これからもどうぞよろしくお願いします。




